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子どもが伸びる! 授業ですぐに使える魔法のオノマトペ
オノマトペ研究家藤野良孝
2017/12/15 掲載

1 魔法の言葉オノマトペ

 みなさんは「オノマトペ」をご存じですか? オノマトペは、ものが発する音や声を表した「擬音語」と状態や心情を表した「擬態語」をまとめた言葉です。
 例えば、犬がわんわん吠える。外がひやっとしている。心臓がドキドキする。星がきらきら光る。嬉しくてにっこりしている…など、多種多様なオノマトペがあります。
 実は、表現や情報伝達で使用されるオノマトペの他、特定の運動を円滑にしたり、大きな力を発揮しやすくさせるなど身体に作用するオノマトペ(スポーツオノマトペ)もあります。
 こうしたオノマトペの研究を進めていく中で、オノマトペには、私たちが想像する以上に、心や身体、さらには脳にプラスの影響を与えていることが分かってきました。そのような背景から、私は今では「魔法の言葉」と呼ぶようになったのです。
 レスリングの吉田沙保里選手、お笑いタレント・映画監督の北野武氏、アップル社元CEOの故・スティーブジョブズ氏など、トップアスリートや監督、エグゼクティブなど、各界の一流もオノマトペを意識的・無意識的に使って、パフォーマンスを上げています。

 オノマトペは、一流に限定された魔法ではなく、だれにでも効果が期待できると思います。
例えば、

・「ニャーッ」といって前屈を行うと、身体が柔らかくなること。
・「モグモグ」と心で唱えながら食べると、食べる時間が長くなること。
・「サーッ・タン・パッ・トン」といって跳び箱を跳ぶと、上手に跳べるようになること。

(以上の効果は、実験結果から示唆されています。)
 私は、この「魔法の言葉」と呼ぶべきオノマトペを、学校教育の現場でも有効活用して頂きたいと考えています。

2 授業ですぐに使える魔法の言葉オノマトペ

 オノマトペの魔法は、授業の中でもいろいろと活用することができると思います。
 例えば、私は大学の授業で、学生に対して何度も発するオノマトペをもっています。
 下記に、授業の開始〜終了までに使用するオノマトペをいくつか紹介します。

■勉強するための姿勢を作る魔法:すすっ・ぺたっ・ぴーん

 まず、チャイムの音が鳴って子どもが全員着席したら、「すすっ、ぺたっ、ぴーん」。
 これは、勉強を始めるときの姿勢づくりに使います。「すすっ」は、お尻を椅子の後ろにスライドさせ、深く座らせるイメージ。「ぺたっ」は、床に両足をくっつけるイメージ。「ぴーん」は、天井から頭がひっぱられるようなイメージ。3音のイメージが、体にダイレクトに働きかけ、正しい姿勢が自然に作れます。
 はじめのうちは、「すすっとお尻を後ろに引いて」「ぺたっと両足を床にくっつけて」「ぴーんと背筋を真っすぐにして」とオノマトペの後に、行動してほしいことを補足するとよいと思います。毎回、オノマトペを言って、正しく座る姿勢を習慣化すれば、授業の集中力や記憶力にもプラスの影響を与えることが期待できます。

■先生に注目させる魔法:ぴっ!

 授業を進めていく中で、子どもが教員の話に注目していないときがあります。そんなときは「はい、ぴっ!」と語気を強めて声を出しましょう。「ぴっ!」は、何かを知らせるアラーム(ぴぴぴっ)やリマインダーとしての意味付けがあるので、子どもたちは音を聞いた瞬間、「おっ!」と感じて、顔をしっかりと教員側に向けるようになります。

■重要なポイントを逃させない魔法:ばーん!、じゃーん!

 そして、必ず覚えて欲しいこと、新しい内容に変わる前には、「ばーん!」「じゃーん!」と濁音が伴った力強いオノマトペを使って、声をだすと効果的です。
 特に、オノマトペに合わせて体の動きをプラスすれば、期待感や臨場感がわき、話の内容にぐーっと引きつけられます。子どもたちは、「大事なことを言うぞ」「次にどんなことを話すのだろう」と聞く意識や好奇心がくすぐられるでしょう。

■子どもを褒める、共感する魔法:わーっ↑、ほーっ↑、へーっ↑等(感動詞も含む)

 次に、子どもたちに質問を投げかけて、答えてくれた場合は、「わーっ↑(+やったね)」「ほーっ↑(+すごい視点だね)」「へーっ↑(+よくとけたね)」と高い声で、相槌を打ちながら返すとよいでしょう。「わーっ↑、ほーっ↑、へーっ↑」の明るい声にのって、授業全体の雰囲気もパーッと明るくなります。子どもは、「先生が私の答えに興味を示している」「認めてくれている」と感じ、信頼関係もアップします。そうこうしているうちに、授業が活気に満ちて、楽しい時間に変わると思いますよ。

図

■騒がしい状況を静かにさせる魔法:しーん
 授業が活気づくと、ざわざわ騒がしくなることもありますが、その時は人差し指を唇のそばにゆっくりくっつけながら、小声で「しーん」といいましょう。音の静寂なイメージを動きのサインと声に乗せて伝えるのです。静かになるまで、指は唇につけたままにしておいて下さい。しばらくすると、静かになります。
 「静かにしなさい」、「だまりなさい」だと威圧感、強制力を与え、子どもを傷つけてしまうことがありますが、このやり方なら100%大丈夫!

■身体をリフレッシュさせる魔法:ぎゅーっ・ぱっ。すーっ・はーーっ。

 授業時間が半分あたりを過ぎると、居眠りする子どもやぼーっとする子どもが出てくるので、身体をリフレッシュする時間を導入すると良いですね。
 リフレッシュのやり方は、「ぎゅーっ」と5〜10秒かけて声を出しながら、7、8割程度の力で肩に力を入れて筋肉を緊張させます。次に「ぱっ」といって脱力するだけ。これを何回か行うと、体がスッキリ、ラクになり眠気やぼーっとした感じがとれますよ。
 その後、「すーっ・はーーっ」と、1(吸う):2(吐く)の割合で、呼吸を7〜8回行い、脳に新鮮な酸素を届けましょう。副交感神経が優位になりリラックス効果が高められ、再び教員の話に集中できるようになると思います。

■気持ちを前向きにする魔法:にーっ

 授業のまとめとしてリアクションペーパーを課す際は、「にーっといってから(心の中でも可)」行うようにすすめます。それは、にーっによって、「いやだ〜」「やりたくない」というネガティブな気持ちが軽減されるからです。にーっの音を出す口の形は、口角が自然にあがり笑顔が作れ、脳にプラスの作用を与えて感情状態が肯定的になります。脳は、作り笑いであっても、プラスのことが起きているとだまされてくれるのです。感情状態が肯定的になれば、苦手なことも一気に進められるようになると思います。

 以上のようにオノマトペは、子どもの気持ちに入り込んだ共感を可能にし、子どもの心を動かす大きな力をもっていると思います。ぜひ、「魔法の言葉」オノマトペを、授業などで有効活用して頂けたら幸いです。

藤野良孝ふじの よしたか

オノマトペ研究家。コメンテーター。朝日大学保健医療学部健康スポーツ科学科准教授。早稲田大学国際情報通信研究センター招聘研究員、早稲田大学ことばの科学研究所研究員。
1977年東京都生まれ。博士(学術)。国立大学法人総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了後、文部科学省所管独立行政法人メディア教育開発センター研究開発部助教、東京田中短期大学こども学科非常勤講師、朝日大学経営学部ビジネス企画学科准教授、スポーツ言語学会理事などを経て現職。
主な著書に『「逆上がり」だってできる!魔法のことばオノマトペ』(青春出版社)、『マイナスな心の片づけかた』(自由国民社)、『毎日の生活が楽しくなる「声の魔法」』1巻〜3巻(くもん出版)、『運動能力がアップする「声の魔法」』1巻〜3巻(くもん出版)など多数。

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