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実施まであと4か月!これは絶対に押さえておきたいプログラミング教育
宮城教育大学技術教育講座教授安藤 明伸
2019/11/15 掲載

どうして今、プログラミング教育か


 現代の生活や社会においてコンピュータはあらゆる場面で利用されています。そのコンピュータの優れた機能を発揮するにはプログラムが必要です。このプログラムを変えることにより、同じコンピュータであるにも関わらず様々な動作をさせることができます。「身の回りにコンピュータが溢れて…」と表現されることがありますが、それは「プログラム」が身の回りでコンピュータをきちんと動かしていることを意味します。言い換えれば、プログラムが私たちの生活に大きく浸透し、社会の構造すら変えているのです。
 コンピュータは魔法の箱ではなく、人間が何らかの意図をもって命令(プログラム)を与えて動作しています。つまり、プログラムを知り、プログラミングできることは、コンピュータのことを知ることや、コンピュータの処理を論理的に考えることにつながります。コンピュータの可能性を実感しつつも過度に信用せず、コンピュータの特長を発揮できる場面を主体的に見極め、人間が単に繰り返しているようなルーティンを代替するだけでなく、大量のデータを処理して私たちに示唆を与えたり、簡単なプログラムを作って身の回りのちょっとした不便を解消したり…こういったコンピュータの活用が「すごい」ことではなく、「自然な」こととして受け止められるようになることが求められていると言えましょう。

プログラミング教育のねらい


 プログラミング教育は、学習指導要領において「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けられた「情報活用能力」の育成や情報手段(ICT)を「適切に活用した学習活動の充実」を進める中に適切に位置付けられる必要があります(*1)。そのうえで、特に小学校におけるプログラミング教育においては、以下の3つのねらいが定められています(*2)。

(1)「プログラミング的思考」を育むこと
(2)プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることなどに気付くことができるようにするとともに、コンピュータ等を上手に活用して身近な問題を解決したり、よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むこと
(3)各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、各教科等での学びをより確実なものとすること

 ここで大切なことは、実際にコンピュータを利用してプログラミングを行うことを通して、6年間を見通してバランスよくねらいを達成することです。児童にとって、新たな自己表現で、新たな世界と出会い、プログラミングの奥の深さや面白さに触れることは、今後の学習動機や『プログラムをもっと活用したい』という意欲にもつながります。そのためにも、児童がプログラミングに取り組んだり、コンピュータを活用したりすることの楽しさや面白さ、ものごとを成し遂げたという達成感を味わうことも重要視したい点です。
 この3つのねらいは、単にプログラミングを行えば達成できるものではありません。そこには従来同様に、扱う教材に対する教材研究が必要ですし、教師からの発問・質問・問いかけ、児童たちの学習場面に応じた教師の働きかけが欠かせません。例えば、「一見難しそうに思えても、手順を分けて考えてみることが大切だね」、「この条件だったら、どのような手順の方が良いかな?」のようにプログラミング的思考を意識化させるような声掛けや、「プログラムを書き換えるだけで、コンピュータに色々なことをさせることができるね」、「コンピュータは、毎回同じことを正確に瞬時に実行するんだね」などのように、プログラムの良さや働き、コンピュータの特性について意識化させるような教師の働きかけが考えられます。

時々耳にする誤解と問題提起、提言


 確かにプログラミング教育は、児童たちをプログラマーにさせる指導を行うわけではありません。しかし、それはプログラマーにさせない教育ということではありません。キャリア教育としても、プログラムを作る仕事があることを知ることは良いことですし、興味や適性があると思われる児童には、より発展的な内容を紹介することも大切です。
 同様に、プログラミング技法を指導目標として教えるわけではありませんが、学習の基盤としての情報活用能力の範疇で、コンピュータの基本的な使い方と同じように、最低限のプログラミングの知識・技能についてはどこかで指導する必要があります。教科の時間を使ってプログラミングを行う場合には、各教科の授業に必要とされる情報活用能力(プログラミングも含む)を、どこでどのように身につけ、積み重ねていくのか、計画的な取り組みが求められます。一方、教科の時間とは別に実施することも考えられます。この場合は、児童の負担に配慮しつつ、機器操作やプログラミングそのものを教える時間に充てることも可能です。ゲーム作りなど、児童たちの創造性を発揮させる取り組みも行いやすいため、面白さや達成感を味わうことで学習動機を高めることができます。また、この方法であれば、どの段階でどこまで情報活用能力が身につくかはっきりさせやすいので、各段階を踏まえて各教科でのプログラミング教育もスムーズに実施できることが期待されます。これまで学校全体として行っていることをすぐに変えることは難しいと思いますが、既存の教育課程を見直しつつ、段階的にこうした時間の確保を行うことで、新学習指導要領に対応した新たな体制を整えていくと良いでしょう。

(*1)文部科学省:小学校プログラミング教育の手引(第二版)、p.2(2018)
(*2)文部科学省:小学校プログラミング教育の手引(第二版)、p.11(2018)

安藤 明伸あんどう あきのぶ

 平成14年まで札幌市で中学校技術科教員として勤務したのち、宮城教育大学へ。
技術教育講座にて、教育工学的な立場から情報教育、技術教育の指導、研究に従事。
スマートフォン、タブレットなどのモバイルデバイスの教育利用や、授業改善・分析手法および分析システムの開発、情報モラル、そしてプログラミング教育に関する教材や指導法について幅広く研究し、宮城県教育委員会公式認定の無料電子黒板アプリ「miyagiTouch(ミヤギタッチ)」も開発。
 文部科学省 小学校プログラミング教育や、中学校学習指導要領 技術分野のほか、
『学びとコンピュータハンドブック』、『アクティブラーニングで深める技術科教育』、『開隆堂中学校技術分野教科書』など、また最近は学習指導要領の解説に関する書籍を多数出版、執筆。

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