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環境教育が果たす役割が高まっています
2020年10月に発せられた「2050年カーボンニュートラル宣言」を契機に、政府や企業、地域、NPOや生活者に至るまで、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが加速しています。その中で、教育現場も大きな役割を担っています。
環境省が2021年5月に公表した「2020年度環境教育等促進法基本方針の実施状況調査の結果」では、調査対象である生活者の6割弱が環境や社会に関することを学んだ場として「学校の授業」を挙げるとともに、6割強が学びによって意識や行動に変化があったと回答したことが示されました。この調査結果は、脱炭素化に向けたアクションを起こすために環境教育が重要であることを再認識させてくれます。
その一方、同調査結果では、環境教育を進める上での先生方の課題として、「授業時間の確保が難しい」点や「適切な教材やプログラム等の準備ができない」ことが浮き彫りとなりました。先生方をはじめとする教育関係者の皆様は、限られた授業時間や適切な教材不足といった課題を抱えながらも、ゴミの分別やリサイクル、リユース、海洋廃棄物、フードロスなど、身近で可視化しやすいテーマを中心に環境教育を実践し、成果を上げてくださっています。
脱炭素化社会に近づくための次の一手
世界中で気候変動の影響による猛暑や干ばつ、洪水などが起きています。日本においても、列島全体を襲った大寒波により、2023年は初月からいきなり国民全体が気候変動の影響を目の当たりにしました。地球全体に迫る温暖化の危機は依然として世界的な課題となっており、脱炭素化に向けたさらなる取り組みが日本社会全体にも求められていると言えます。脱炭素・循環型社会に貢献し、身近な行動であるリサイクルやリユースといった製品消費以降の段階における環境負荷低減への関心が世間一般に高まる中、生活者のより一層の意識向上に向けた取り組みの余地はどこにあるのでしょうか?
これからは、製品消費以降だけではなく、原材料の調達から、製造、輸送、使用、そしてリサイクルに至るまで、消費前の段階を含めた製品のライフサイクル全体を通じた脱炭素化への取り組みにも注目するべきです。こういった取り組みは生活者の間ではまだあまり知られてはいませんが、すでに様々な企業が提供する製品やサービスのLCA(ライフサイクルアセスメント:ある製品・サービスのライフサイクル全体またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法)を公表するなど、製品供給側では広がり始めています。
給食の牛乳から学ぶ新たな視点
教育現場でも、ライフサイクル全体を通じた脱炭素化への取り組みに寄与することができます。そのひとつが、学校でも馴染みの深い給食用牛乳パックです。世界中で食品と飲料向け紙容器を開発・製造する日本テトラパック株式会社(以後、テトラパック)は、学校給食用の牛乳紙容器の大手供給元でもあります。テトラパックにおいて、持続可能性は創業以来、事業の中核です。気候変動問題に取り組むにあたり、消費後の段階である廃棄物の対応だけを切り取って考えるのではなく、原材料とサプライチェーン全体の気候変動への影響も考慮した脱炭素・循環型経済の実現に貢献することを目指しています。
これは、食品パッケージの製造・供給が気候変動に与える影響のうち、実に99%以上が製品が店頭に並ぶ前に発生していることが独自の調査により分かったことが背景の一つにあります(図1)。テトラパックでは、実際に紙容器を製造する際には、適切に管理された森林から原材料を調達し、使用する原材料を削減して効率を高めるとともに、再生可能な植物由来の原材料を使用し、二酸化炭素排出量を極力抑え、環境への影響を少しでも低くする最大限の努力をしています。
※図1
さらにテトラパックでは、紙容器の製造・供給過程以外でも、原料調達に深くかかわる森林の再生にも世界的に取り組んでいます。森林再生を通して、生態系保存や雇用創出といった環境問題以外のSDGs目標にも貢献するもので、環境問題を考えることでその他の社会課題についても考える機会となり、持続可能な社会の実現に向けてより大きな視点で見るきっかけにつながります。
このように、製品やサービスの消費後だけではなく、ライフサイクル全体を通じた脱炭素化への取り組み(※図2)にも目を向けることは、環境教育をより深化させ、脱炭素化への意識をさらに向上させるためにも、今後必要な視点となるのではないでしょうか。また、物事をより大きな視野や色々な角度から観ることの大切さを子供たちに教えることができるという意味でも、教育現場にとって意味のある試みとなることが期待されます。
※図2