- スーパー養護教諭の仕事術
- その他教育
今月の相談
小学校6年生のみきこさんは、教室に行きたくないと言って保健室に登校し1週間経ちました。保健室では本を読んだり、担任からの課題を自習したりしています。担任が時々保健室に様子を見にきますが、そのとき、ちょうど来室した他の子どもと声を立て笑っていました。担任は、「笑って過ごせるなら教室に来なさい」とみきこさんに注意しました。そして、「保健室で甘やかすから、教室に来なくなる」と私は怒られてしまいました。私はどのように対応すればよいでしょうか。
スーパー養護教諭のアドバイス
1子どもファーストを貫こう
「保健室で甘やかすから、教室へ行けなくなる」という言葉、保健室あるあるですね。「つまり、教室に行けないのは保健室のせい!」ですね。「保健室よりも教室の方が楽しければ行くんじゃないですかねえ」と愚痴をいう相手もいない一人職が恨めしくなる瞬間です。
『みきこさんが、保健室で楽しく過ごしている。それを許容している養護教諭は、甘えを助長して、教室へ行かすことをしない悪いやつ』…でも、みきこさんにとっては、あなたこそが頼りの綱です。担任が怒るからという理由で担任の気持ちを忖度し、みきこさんへの態度を変えるべきではありません。
2甘えを理解しよう、そして担任と話し合おう
みきこさんが教室に行かない、という状況を次の2つの例文で捉えてみましょう。
例1)みきこさんは、教室に行かない。みんなが教室で勉強しているのに行かない。
これは、甘えているのでは、と考えるでしょう。
では、こちらはどうでしょう?
例2)みきこさんは、教室に行かない。みきこさんは、いじめにあっていた。
これは、甘えとは言いにくいでしょう。
同じ「教室に行かない」という行動が、どうして甘えになったり、甘えにならなくなったりするのでしょうか。それは、甘えは、人によって判断が異なるからです。ですから、私は、教室に行かないという行動が、甘えか、甘えでないか、判断の根拠を話し合うべきだと思います。「甘やかさないでほしい」と担任に言われたら、「先生は、なぜ甘えと考えるのですか」「私は、甘えとは思っていません。なぜなら○○だからです」と根拠をもって話し合うことが大切です。しかし、若手のあなたには根拠がわからないかもしれません。それでも何か違和感がある。そう自覚しているあなたは素晴らしいのです。若いとき、私もわかりませんでした。近くにいるカウンセラー、学年主任、ベテランの先生、近隣のベテラン養護教諭に相談しましょう。
3みんなで適切に甘えさせよう
甘えをただ受け入れるだけが教育的な配慮ではありません。突き放せばいいというものでもありません。前述の例1のように特別な理由もなく、「教室に行きたくない」というのであれば、「朝、起きているだけでも偉いね」と今のみきこさんを受け止めつつ、そして「教室に行こうよ」とみきこさんの発達段階に即した行動を促しましょう。そして、みきこさんに必要な支援を関係者全員と共通理解し、計画を立て、みんなで「甘え」を支援の方策としてやりましょう。それがみきこさんの教室復帰への近道です。
今月のまとめ
甘えかどうかは、その人の捉え方で変わります。つまり、人によって物差しが違うのです。「甘え」=悪いことというイメージに引きずられずに、つまり感情論ではなく、根拠で話しましょう。保健室にいた方が良い根拠を示す。例えば、夜眠れていない。食欲もない。いじめられている。心の中が幼い子供だったら…。それだったら、甘えと言って怒る方が間違ってる! あなたの行動が、根拠あるものならばあなたが正しい! そして、子どもは救われる!