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今月の相談
小学校6年生のヒデアキ君は、夏休み明けから、完全に不登校になってしまいました。自閉症スペクトラムの子どもで、支援体制を整えて対応してきていました。保健室へは月1回程度クールダウンに来ていましたが欠席はありませんでした。保護者は「朝、起きない」「ゲームとYouTubeを夜中までやっている」「本人が行きたがらないから休ませる」と言っています。また、担任が家庭訪問をした際には「朝起きられない。学校で嫌なことは特にない」と言っていました。みんなが「様子を見よう」という雰囲気です。このままでは、休みが続くような気がして心配です。私は何ができるでしょうか。
スーパー養護教諭のアドバイス
1「行きたくない」のか「行けない」のか見極めよう
自閉症スペクトラムの子どもは、脳の特徴からインターネットのゲームや、動画などに没頭しやすいことが知られています。また保護者の態度も放任タイプですね。ゲームを夜中までやっていることを把握しているが、やめさせるわけでもない。本人が行きたがらないから休ませる…。きっと夏休みの間、昼も夜もゲームをやり、生活リズムが崩壊。学校で嫌なことは特にないけれど、家でゲームをやることが習慣化した。早寝・早起き・朝ごはんが、遅寝・遅起き・夜ゲームにシフトしてしまった結果ですね。これは、いじめなどが原因の「学校に行きたくない」とは異なります。学校に行きたいと思っていても、朝起きられず「行けない」状態と判断できます。
2「どうしたいの?」と本人に聞いてみよう
「ゲームをやっていたい」と言うことも想定範囲内。「先生たちは、ヒデアキ君に勉強を教えることで給料もらっているんだよ。先生たち、商売上がったりだよ〜」と、いなしましょう。そして、「今が6年生であること」「秋の修学旅行は?」など将来に話を向けてみましょう。すると「修学旅行は行きたい」と言うかもしれません。だって学校が嫌だと言っているわけではないのですから。そこで、修学旅行は、その日だけ行って楽しめる遠足とは違うこと、事前に休んでいると行く場所もわからず修学旅行がつまらなくなってしまうことなど、損得で説明した方がピンとくるはずです。さらに「修学旅行に行きたいんだね、じゃあ、何を手伝って欲しい?」と自己決定を促しつつ、ヒデアキ君が今やるべきことを一緒に考えましょう。
3生活点検でルーティンをつくってみよう
「朝は、決まった時間にまず起きて、生活を立て直すことが最優先です」と、ここは養護教諭として、譲れないオーラを出しつつ笑顔で提案しましょう。保護者と本人の納得を得ながら生活のルールとタイムスケジュールを決めます。ここでのコツは、起床時間、朝食、トイレ、登校時間、帰宅時間、おやつ、宿題、塾、夕食、TV視聴、入浴、ゲーム、就寝時刻などできるだけ細かく洗い出します。できたかできなかったかをチェックしやすくするのです。これで生活点検表が完成です。自閉症スペクトラムの子どものこだわりを逆手にとって、登校時間が守れるよう仕向けてしまうのです。ヒデアキ君が自分でチェックし、毎日担任に提出するようにします。これを担任から大いに褒めてもらうことで、良い行動は強化され、登校できるようになっていくでしょう。
今月のまとめ
『朝起きれないって家庭の問題でしょう』『本人が行きたがらない』、だから様子を見る。実際よくあります。しかし、このままでは長期化すると心配になったあなたの気づきは素晴らしい。ただの「様子を見る」は無策です。こじれの中身を見極め、支援を考え「様子を見る」ことが正しい対策でしょう。