子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ
学校生活でも授業でも、教師と「話すこと」は切っても切れない関係。話術、言葉の選び方、コミュニケーション力、コーチング等、教師に必要な言葉のワザを伝授します。
子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ(9)
つまらない質問のワンパターンを脱する「オープンクエスチョン」
パラグアイ ニホンガッコウ大学学長補佐西野 宏明
2020/2/10 掲載

事例盛り上がらない質問タイムと盛り上がる質問タイム―何が違う?

■その1 夏休みの絵日記発表会の質問タイムで

 初任者のころ、夏休みの絵日記の文章を子どもたちにスピーチさせる、発表会をしました。せっかくなので、発表後に質問タイムをもうけ、聞いている子どもたちに質問をさせました。

質問する子「キャンプで作ったカレーはおいしかったですか?」
発表した子「はい、おいしかったです」

ち〜ん。

挿絵

 「おいしかったから絵日記に書いたに決まってるじゃん! なんて当たり前の質問をするの! まぁ小学生だから仕方がないか」
 このときは自分の指導力不足だとは気づきませんでした。

■その2 がんばったことスピーチの質問タイムで

 今度は、今学期にがんばったことを発表する会での場面です。ここでも、終わってから質問タイムを取りました。

質問する子「運動会は楽しかったですか?」
発表した子「楽しかったです」

しーん。

 「どうして、この質問タイムっていつも退屈でつまらないんだろう。なんか、教室の空気がどよ〜んとするんだよな」
 いい加減、自分の質問の仕方の指導のまずさに気づくべきでしたね。

■その3 2泊3日の校外宿泊学習のグループ発表会の質疑応答で

 最後にご紹介するのは、校外宿泊学習のグループ発表会の後にもうけた質疑応答の場面です。

質問する子「班行動の際に行った場所の中で最も印象に残っているのはどこですか? 1人ずつお願いします」
発表した子「和紙工房です」「牧場です」「ハイキングです」「牧場です」
質問する子「たとえば牧場では何をしましたか?」
発表した子「わさびソフトクリームを食べました」
質問する子「他にどんなメニューがありましたか?」
発表した子「ふつうのソフトクリームとチョコ味。あとヨーグルト、飲むヨーグルトがありました」
質問する子「いいなぁ。いいなぁ。行きたかったなぁ、うちの班も」
発表した子「あと僕たちは食べなかったんですけど、5班の〇〇さんは…」

制限時間まで充実した質疑応答が続きます。

 「いいねぇ。楽しそうにたずねたり、答えたりしてる。子ども同士でどんどん話を掘り下げたり、話題を広げたりできているなぁ。やっぱりオープンクエスチョンを教えておいてよかったな」

解説

 この3つの事例、なぜ最初の2つの事例は質問タイムが盛り上がらず、最後の1つの事例では盛り上がったのでしょうか。その違いは、質問の仕方にあります。
 それでは、2つの質問パターンを具体的にご紹介しましょう。

クローズドクエスチョン

 オープンクエスチョンの解説をする前に、その対比としてクローズドクエスチョンについて説明します。
 クローズドクエスチョンとは、簡単に言うと「はい」か「いいえ」で答えられる問いのことです。

「あなたはパラグアイ人ですか? それとも日本人ですか?」

 というように二者択一の問いもそうです。
 事実を確認したり、何かを明確化したりする場合には便利です。しかし、話を広げたり、深めたりするには適していません。

オープンクエスチョン

 そこでオープンクエスチョンです。
 オープンクエスチョンは思考が必要になり、多様な答えが出る問いのことです。
 5W1Hがその代表的な例です

When
Where
Who
What
Why
How

 これらについて聞けば、話が広ったり深まったりしていきます。
 さらに以下の質問もおすすめです。

・1番を聞くシリーズ
何が一番おいしかったのですか?」
何が最も楽しかったのですか?」

・掘り下げるシリーズ
特に心に残っているのはどこですか?」
特に努力したり工夫したりしたところは?」

・話を広げるシリーズ
他にはどんな〜?」
たとえば〜?」

・数字を聞くシリーズ
どのくらい〜?」

 これらの質問シリーズを教室に掲示しておくと、いつでも使えて便利です。

ここがポイント!

  • 学期当初にオープンクエスチョンを指導して定着させる!今月の「言葉のワザ」
  • 掲示物にするといつでも確認できて便利!
  • 問い方によりコミュニケーションが全く違うものになることを子どもに考えさせる!

西野 宏明にしの ひろあき

東京都の公立小学校を10年間勤めたのち、4月よりパラグアイの私立ニホンガッコウで学長補佐と教育コンサルタントを兼任中。
初任時代の初めての授業で挫折し、教師修行を始める(教育新聞電信版で連載。初回の記事はこちら)。
日本各地の教育イベント、セミナー、サークルに参加。自分自身でも若手教師向けのサークルやセミナーを主宰した。毎月5万円以上は読書やセミナー参加費に費やし、自己研鑽に励んだ。その集大成として2冊の単著『子どもがパッと集中する授業のワザ74』『子どもがサッと動く統率のワザ68』を上梓。
2017年よりJICA青年海外協力隊員としてパラグアイへ派遣され、2年間、現地の教育力向上に努める。2019年3月に公立小学校を退職し、現職。

(構成:木村)
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