ほめ言葉で子ども&クラスが成長する!菊池道場の価値語録
子どもの笑顔がみるみるあふれる! プラスに考える学級づくりの羅針盤
ほめ言葉で子ども&クラスが成長する!菊池道場の価値語録(23)
自分の力で道を開く、自己実現した瞬間を切り取る価値語録
菊池道場広島支部堀井 麻美
2018/4/10 掲載

 周りがどんなに応援やサポートをしても、目の前の課題を乗り越えることができるかどうかは、やはり本人の気持ちが大切ですよね。自分の力で課題と向き合った瞬間、乗り越えることができた瞬間を、しっかり大人が見取って、その価値の大きさを伝えていきましょう。

はじめの一歩

 誰だって、初めてのことや苦手なことをしようとするときはなかなか勇気がいるものです。しかし、その一歩を踏み出すことができれば、必ず、ステージアップへとつながります。

 合奏の練習をしていたときのことです。緊張してしまう、リズムがとりにくいなどの理由で、音楽が苦手な子どもがいました。音楽の授業でも、個別練習でも、全体練習でもなかなか音を出すことができていなかったのですが、ある日、よく見れば指を動かしている姿がありました。
 彼女にとっては、その動作だけでもとても勇気がいることだったと思います。しかし、動かしてみたことで、表情も少し和らいだように見え、その後も少しずつですが、指を動かすようになっていました。やってみれば案外うまくいったり、気持ちがふっと楽になったりすることが多いものです。ほんの小さな仕草でも見逃さず、はじめの一歩を踏み出せた人には、大きな拍手を送りましょう。

流されない

 自分がしたいことと、自分がしなければならないことは違うことがあります。そこで、周りの誘惑に流されず、責任をもって自分のやるべきことができる力を伸ばしましょう。

 授業終わりに、「○○して遊ぼうや」という話で盛り上がっている仲良しグループがありました。そのときに、それまで楽しそうに一緒に話をしていた一人が、「俺は、漢字ドリルが残っているから」と、スッと自分の席に座ったのです。いつもなら、一緒に遊びに出ていたのですが、やり残していた課題に意識が向き、実行に移していたその姿は、とても大きな成長でした。
 「課題が残っているけど、休憩時間だから遊びたい」、「授業中だけど、楽しそうなお喋りに加わりたい」など、生活の中で、気持ちが揺れ動く場面は多くあります。そのときに、自分のやりたいことと、やらなければならないことを区別、選択して、行動することができるブレない心の強さを伸ばしたいですね。

イラスト

思いたったらやってみよう

 子どもたちの行動や計画に大人はつい口をはさんでしまいがちですが、任せてみることで、これまでの学習や経験を生かして工夫し、驚くほどの結果を生み出すことができるのです。

 年度末に、子どもたちが「先生を送る会」を企画・運営しました。自分たちでできるならと、特に指導することもなく当日を迎えると、司会者がいて、プログラム表や初めの言葉や終わりの言葉があり、1つずつのゲームはタイマーで時間が区切られていて…と、子どもたちの力だけで、1つの立派な会を開くことができていました。
 これまでの生活科で、幼稚園交流会や1年生の学校案内など、担任と一緒に自分たちが中心となって会を準備・運営してきた経験を積み重ねてきているからこそ、創りあげることができた会だなと感じました。会を開催しようという発想力や、現実的な企画力、進行できる技術、周りを巻き込む力に、子どもたちの無限の可能性を改めて感じました。やりたいことを自分で見つけて、どんどんやってみることこそ、生きる力と言えますよね。

菊池 省三きくち しょうぞう

愛媛県出身。山口大学教育学部卒業。 小学校教師として「ほめ言葉のシャワー」など現代の学校現場に即した独自の実践によりコミュニケーション力あふれる教育をめざしてきた。 教員同士の学びの場「菊池道場」を主宰し、その支部は全国40ヵ所に広がっている。「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取り上げられたことをきっかけに全国へ講演。 「世界一受けたい授業」では、学級崩壊立て直し人として紹介される。2015年3月に小学校教師を退職。自身の教育実践をより広く伝えるため、執筆・講演を行っている。『ほめ言葉手帳』には価値語録とともに、子どもをほめる手立てが満載!

菊池道場広島支部きくちどうじょうひろしましぶ

平成26年8月発足。本部は広島市にある。在籍数21名。月に1〜2回、広島県内一円から教員や精神対話士などが集まり学習会を開いている。月刊誌『授業力&学級経営力』(明治図書)、『白熱する教室 創刊号』『価値語100ハンドブック』『1年間を見通した白熱する教室のつくり方』(以上、中村堂)などに執筆協力多数。

(構成:茅野)
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