著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
協同学習の理論はアクティブ・ラーニングの基盤である
中京大学国際教養学部教授杉江修治
2016/11/1 掲載
今回、杉江修治先生に、新刊『協同学習がつくるアクティブ・ラーニング』について伺いました。

杉江 修治すぎえ しゅうじ

中京大学国際教養学部教授
主要著書
『バズ学習の研究』風間書房(1999)
『子どもの学びを育てる少人数授業』明治図書(2003)
『大学授業を活性化する方法』玉川大学出版部(2004)
『協同学習入門』ナカニシヤ出版(2011)ほか

―本書のタイトルは、『協同学習がつくるアクティブ・ラーニング』です。まずは、協同学習とアクティブ・ラーニングの関係性について教えてください。

 アクティブ・ラーニングの学力論や授業論には新しい内容はほとんどないということに多くの方は気づいていると思います。それは、変化の大きい、グローバルな時代の中で、過去のまっとうな議論を本気で実践化しようという提案だと思います。協同学習という教育理論が追究してきた学力論とその実践の試みは教育の本質から積み重ねられてきましたから、アクティブ・ラーニングという形の提言の支えになっていたと考えられます。

―協同学習というと、グループ学習をイメージされる方も多いようですが、先生は、第2章の中で「グループ学習が協同学習ではない」と述べられています。では、協同学習とは、どのような授業のことを言うのでしょうか?

 協同学習はグループ学習という技法を指すのではなく、幅広い教育論だという理解がまず必要です。また、協同の単位はグループではありません。学級という学習集団の協同が確かな教育には必要なのです。集団の成員全員の成長を目的とするという協同の定義を踏まえた実践はすべて協同学習です。一斉形態で学級全員が協同する学びを仕組む実践者もいます。

―協同学習には、協同的な学級経営が欠かせないと感じます。子どもを高め合う集団にするためには、何が必要だとお考えですか。

 教師自身の教育観の再点検が必要です。「できた−できない」というものさし一本で子どもたちを測っていたのでは、学級に協同の精神は育ちません。個人差より、個々の子どもの努力や取り組み過程に目を向けることで、子どもたちも互いを評価する視点が広がります。認め合うこと、高め合うことの意義を一貫して伝えることが何より大事だと思います。

―本書の第5章では、ジグソー法、LTD学習法など、様々な協同学習の実践が紹介されています。いずれの実践も魅力的ですが、「これから協同学習に取り組んでみたい!」という方におススメの授業モデルを教えてください。

 技法は教材や子どもの状況に応じて選択すべきものですから、特定のモデルが常に有効とは限りません。最適の選択に近づくための試行錯誤が必要です。ただ、紹介した実践モデルはいずれもいいモデルです。ぜひ大胆な導入に挑戦すべきです。ジグソー、LTD、その他、課題設定などに成功すると、驚くほど生き生きとした子どもの学習活動に出合えます。

―最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

 協同学習は日本では1960年前後からずっと研究が続いてきた伝統ある実践理論です。そして1980年代に入るとアメリカ、ヨーロッパその他でも盛んに研究と実践がなされるようになりました。文化の皮相の違いを超えて協同の意義が認められているということはそこに教育の本質があるのだと言えるでしょう。教育の本質に立ちもどることを提案しているアクティブ・ラーニングの基盤に協同学習の理論があることは間違いありません。

(構成:茅野)
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