- きょういくじん会議
![在日外国人の教育保障―愛知のブラジル人を中心に](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/P/4887304706.01.MZZZZZZZ.jpg)
12月22日の東京新聞によると、日系ブラジル人を中心とした外国人労働組合が同月21日、静岡県浜松市の繁華街で、国や企業に外国人労働者の雇用を守るよう求めるデモ行進を行ったとのこと。
浜松市はブラジル人の数が日本一の都市とされ、その多くが自動車製造業の系列工場に仕事を持っているという。不況で仕事が無くなって困っているのは日本人だけではない。日本に住む外国人も大きな影響を受けている。それは家族全員を巻き込む。多くの外国人の子どもが今、学校に通えずに泣いている。
連日、自動車工業はじめ製造業などの企業で「有期雇用者○○人削減」との報道が続く。ニュースのインタビューには、職を失った若者や再就職先を見つけられない50代の方の嘆きを聞く。
そのような中、先述の浜松市のブラジル人のデモをきっかけに、報道の影に二つの視点が隠されてはいないかと考えるようになった。一つは「外国人の視点」、もう一つは「子どもの視点」である。とりわけ子どもについての報道は少なく、メディアのほとんどを身寄りのない日本人男性が占める。
本来、国内で働く有期雇用者には、外国人も多く含まれるはずである。この点を土台から外してはならない。浜松市をめぐる別のニュースでは、職を失ったブラジル人の子どもが、学校に通えなくなるケースが多発していると言う。
そもそも、日本人の雇用問題を巡って、子どもの就学がそこまで採り上げられない背景には義務教育が保障されていることがある。外国人の子どもに就学義務は課せられていないが、同様の支援を受けることが可能だと、以下の通り確かに文部科学省は述べている。
外国人の子弟には就学義務が課せられていないが、我が国の公立小学校・中学校への就学を希望する場合には、これらの者を受け入れることとしており、受け入れた後の取扱いについては、授業料不徴収、教科書の無償給与など、日本人児童生徒と同様に取り扱うことになっている。このような外国人児童生徒の我が国の学校への受入れに当たっては、日本語指導や生活面・学習面での指導について特段の配慮が必要である。
しかしながら、支援が保障がされている公立学校よりも、授業料が必要な外国人学校に通う子どもが多いそうだ。その為、親の失職が子どもの通学停止に直結する。公立学校ではなくブラジル人学校に通う背後には、言葉の壁の前に学校に馴染めない状況があると言う。外国人の子どもに対しては「特段の配慮が必要」だと、前述の通り定められているにもかかわらずである。さらには、授業料が集められずにブラジル人学校が廃校に追い込まれるケースも少なくないとのことで、まさに八方塞がりである。
学校に通えなくなったブラジル人の子どもたちは「学校に行きたかった」と口を揃えていた。つまりは、今回の不況を巡る問題において、最も被害を受けている一角が外国人の子どもであることと共に、根本的にその就学に対する配慮と支援が不十分ではないかということである。加えて、このようなケースが報道される機会が少ない点に疑問を感じざるを得ない。
12月23日付けの東京新聞では新たに、職を失った栃木県のブラジル人姉妹が帰国費用捻出の為に強盗を試みたという事件が報道された。日本国籍の有無に言及することは避けるが、少なくとも日本に住む限りは、最低限の支援の必要性を考えさせられる。外国人居住者が年々増加する現代、決して見落とすことのできない視点である。外国人観光客の誘致なども確かに重要な政策だろうが、「暮らしやすい」という視点も外から見た日本の魅力になるのではないだろうか。
「学校に行きたいのに行けない」このような子どもの思いに、国境はないのだと、今回の不況を通して改めて感じさせられた次第である。
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