きょういくじん会議
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教員の長い勤務時間、「過労」にご用心
kyoikujin
2009/9/24 掲載
過労死サバイバル―仕事ストレスが心身を蝕む前に (シリーズCura)

 9日のきょういくじん会議でもお伝えしたように、OECDの調査により日本の授業時間は各国に比べ短いものの、教員の法定勤務時間は平均をおおきく上回り1年で200〜300時間も多いことが明らかにされました。

 10日の時事通信社の記事では、広島県の中学校教員がくも膜下出血で死亡したのは過労死による公務災害であったかどうかが争点となった訴訟が報じられています。そこで、教員を始め現代人を取り巻く過労死について調べてみました。

 過労死とは、特に過重な業務に就労したことによる過重負荷を受けたことによって発症した、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞などの脳血管疾患や、心筋梗塞、心不全などの虚血性心疾患、さらに過労から生ずる喘息発作や過労自殺なども含まれます。死亡の原因が、厚生労働省の労災認定基準を満たすような、業務による明らかな過重負荷であれば労務災害と認められます。また公務員の場合は、労災制度ではなく公務員災害補償制度が適用されます。しかし、長時間労働の全てが業務上の負荷とみなされるわけではなく、逆に夜勤などでは時間外労働が短くても労災が認められたケースもあります。過労死や労災補償に関する相談については、過労死弁護団全国連絡会議が運営している「過労死110番」電話相談全国ネットを利用することができます。

 できることなら未然に防ぎたい過労死ですが、個人で出来る最も効果的な予防策は「健康的な生活をする」に尽きるようです。タバコやお酒を控え、睡眠や食生活に気をつける。節度ある生活は健康の基本ですが、そうは言ってもなかなか難しいものではないでしょうか。過労死の不安が胸をよぎった方は、過労死・自死相談センターのホームページに「過労死予防チェック」がありますので自己診断してみてください。

 個人の努力も大切ですが、過労死の一番の予防策は労働環境の改善です。日本の職場環境は、アメリカのように職務が細分化されてそれぞれの責任が明確にされた職場とは違い、集団内の相互協力のもと、個人の職務範囲は組織内の状況に応じて弾力的に変化する柔軟な職場構造をしているといいます。教員には特にこれが言えるのではないでしょうか。授業や学校外の業務を抱えながら、部活や委員会や学校行事の校務など、時期や個人の就労年により職務の範囲は柔軟に変化します。

 このような職務のありようは、負担の大きい人とそうでない人の格差を作る場合があります。この時、責任感の強い人、周りに気を配れる人、断れない人、几帳面な人、熱心な人など、日本人によく見られるような性格の人々が、割りふられた仕事の周辺の職務まで抱え込んでしまう傾向にあるようです。これを改善するには、まずは人手不足の緩和です。これにより、仕事の細分化が可能になり、周辺業務の必要性が少なくなるからです。しかし、これもすぐに実現するには難しいかもしれません。

 このように、過労死の問題は経済上の問題や日本人特有のパーソナリティーと相まって、すぐに解決するのが難しい現代病理の1つとしてあり続けています。海外でも「Karoushi」として認知されるようになった日本の過労死。職場でもその危険性が一層認知されることを望むばかりです。前出のOECDの調査で周辺業務の多さが浮き彫りになった教員の方々は、特に意識的な改善が必要かもしれません。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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