きょういくじん会議
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今、「方言教育」が熱い!? 言葉の矯正から共生へ
kyoikujin
2010/5/12 掲載
都道府県別 全国方言辞典

 近年、教育界で「方言教育」を見直す動きが盛んだといいます。以前のきょういくじん会議でも触れていますが、方言地図や方言かるたなどを授業や学校生活に取り入れている学校も多く、1日の毎日新聞の記事によると、なんと憲法前文を各地の方言に訳す取り組みも広がりをみせているようです。

 方言は、いうまでもなく地域に根ざした独自の言葉。このような取り組みは、方言を学ぶことによって郷土の文化や風習に触れてほしい、という思いから学校が主体となって行っている場合が多いようです。

教育における「方言」

 もともと標準語は、明治維新の際に日本が近代国家の仲間入りを果たすために方言を制限し、統一的な言葉でコミュニケーションがとれるようにつくられました。
 「標準語」という言葉が初めて公文書に登場したのは1902年(明治35年)。当時の文部省の委員会が標準語の選定を掲げ、翌年の小学校国定教科書制度の公布によって、用語の整理と統一が進められていったようです。
 戦後の1947年には「方言やなまり、舌のもつれをなおして標準語に近づける」という考え方が示され、さらに1958年の学習指導要領では「なまりのない正しい発音で話すこと」が求められるようになりました。これは98年の指導要領改訂まで続いたということで、まさに「方言矯正の歴史」といえそうです。

これからの方言と標準語の教育

 一転して、来年2011年度から実施される小学校の新指導要領では、方言は初めて国語科の身につけるべき能力「話すこと・聞くこと」の1つとされ、解説には、方言と共通語について「それぞれの特質とよさを知り、共通語を用いることが必要な場合を判断しながら話すことができるように指導することが大切である」と記述されています。「方言の矯正」から「方言と標準語の共生」へ、教育方針がシフトしてきたようです。

 こうして書いてみると突然の指導転換にも思えますが、標準語をベースにしながらも、これまでの「標準語は全国で使える言葉、方言は地方でしか使えない言葉」という「違い」を学ぶだけではなく、方言から地域の伝統や文化、言葉の多様性を学び取ってほしい、ということのようです。
 標準語が正式な言葉、などと一義的に思い込むことなく、言葉の多様性を学ぶことは、他の存在を認めて受け入れる多文化共生を学ぶことの第一歩なのかもしれませんね。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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