- きょういくじん会議
桃太郎のお供はアンパンマン!? 4月24日の産経新聞の記事によると、筑波大学大学院の徳田克己教授らのグループが、子どもと童話・昔話とのかかわりを調査したところ、こんな“珍答”が出たとのことです。アンパンマンといえば言わずと知れた子どもたちみんなが大好きな正義の味方。…ではありますが、なぜこのような解答が生まれたのでしょうか?
お腰につけたシチュー!?
記事によれば、この調査は平成2年から10年ごとに行っているそうで、今回は20年前の正答率との差が目立つ結果となっているとのことです。「桃太郎」に関する正答率をまとめると、次のとおりです。
@桃太郎が腰につけた物
2年調査時 3歳児…76% 5,6歳児…91%
今回調査 3歳児…22% 5,6歳児…51%
A桃太郎と一緒に鬼退治に行った動物
2年調査時 3歳児…49% 5,6歳児…89%
今回調査 3歳児…22% 5,6歳児…50%
正答は、@「きびだんご」、A「(犬・猿・)キジ」であることは言うまでもありませんが、子どもたちの誤答には、@パン・ケーキ・シチュー、Aおばあさん・キツツキ・アンパンマンなどがあげられたとのこと。
子どもたちは原作を知らない?
調査をした徳田教授は、このような誤答が生まれるのは、「物語をキャラクターでアレンジした人形劇のイベントや絵本の影響では」と指摘しています。「桃太郎」のお話以外にも、浦島太郎はアンパンマンの背中に乗って竜宮城へ行ったという誤答が紹介されています。
みんなが知っているであろう昔話だから少しアレンジして…子どもたちの好きなキャラクターも登場させてより興味をひくように…などと私たち大人は考えがちですが、実は、原作を知らないままアレンジバージョンのみを昔話として聞いている(見ている)子どもが、意外に多いのかもしれないということです。ただ、こんな誤答を見ると、アレンジはよくないと捉えられてしまうかもしれませんが、一概にそうも言えません。
何を原作と呼ぶのか―古典とは変わるもの
というのは、昔話というもの自体が、そもそも、変化していくものだからです。私の知っている「桃太郎」では、桃は“どんぶらこどんぶらこ”と流れ、きびだんご“一つ”を交換条件に鬼退治にお供をし、鬼が島で鬼を“こらしめる”という物語だったはずなのに…あらためて複数の絵本を読み比べると、必ずしもそうではないということにびっくり! 鬼と“話し合って”めでたしめでたし、となる結末もあるのだとか。もともと昔話とは口承で伝えられてきたもの。時代とともに変化するものであり、その亜流としてアンパンマンが登場したとしても、子どもたちが違和感をおぼえなくて当然なのかもしれないですね。
古典授業はどうつくる?
このような昔話と子どもとのかかわりの状況の中で、ついに来年度からは小学校低学年にも古典が導入されます。
鬼退治のお供も竜宮城への交通手段もアンパンマン、という認識の子どもたちと、どのように古典授業をつくっていくのか。そしてそのような子どもたちが、小学校のみならず、中・高と続く古典の授業をどのように豊かなものにしていくのか。時代に合わせて変わっていく昔話のように、柔軟な取り組みで楽しく学べる古典の授業を期待したいところです。
- 中学校教科書、漱石・鴎外が復活へ(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100512-OYT8T00726.htm - 国語は記録、報告など言語活動を充実―指導要領改訂案(2008/02/19)
http://www.meijitosho.co.jp/eduzine/news/?id=20080087 - 絵本学会HP
http://www.u-gakugei.ac.jp/~ehon/index.html