GIGAスクール構想で変える!1人1台端末の授業づくり
1人1台端末導入で、授業が確実に変わります。そして、仕事術も確実に変わります。具体的な実践のヒント・授業のノウハウを伝授!
1人1台端末の授業づくり(18)
タブレット端末時代の課題づくりD
香里ヌヴェール学院小学校樋口 万太郎
2022/11/10 掲載
  • 1人1台端末の授業づくり
  • 授業全般

 前回の記事では、昨年度よく参観した、2年生「三角形と四角形」についてまとめました。
 今回の記事では、私が実践をした、2年生「三角形と四角形」について紹介をします。この授業はある小学校に飛び込み授業をしたときの様子です。

1 課題提示

 最初に、

□角形に直線を1本ひいて、2つの形にわけよう

という課題を提示しました。すると、

  • □の中には、三角形、四角形が入るのかな
  • どんな形ができそうかな
  • 三角形や四角形ができそうじゃない?

といったつぶやきが聞こえてきました。
 みなさんは、子どもたちのつぶやきを授業で大切にしていますか?
 子どものつぶやきを不規則発言と捉え、つぶやきを言わさないようにするといった授業もあるようです。
 また、つぶやきを拾い、授業に活かしていくことは大切だとは思いながらも、
どのようにそのつぶやきを扱っていいのか
という悩みもよく聞きます。
 授業とは本当に関係ないつぶやきや他の子どもたちの学びの妨げになるようなつぶやきに対しては、指導をしましょう。私は、

そのつぶやきは周りの子の学びが深まるつぶやき?

と問いかけるようにしています。
 しかし、それ以外は基本的には扱っていきたいものです。
 このとき、

そのつぶやきによって、周りの子がどのような見方・考え方を働かせることになるのか

ということを授業者として、意識するようにしています。
 これは、つぶやきに限らず、子どもたちの誤答などに対してもです。
 実際の授業では、子どもたちのつぶやきをもとに話をしながら、現段階でみんながどのような考えをしているのかを聞くことにしました。

2 カード提出

画像1

 自分が思っている考えのカードを提出します。三角形だとしたらグリーンのカードを提出します。

画像2

 提出箱をみると、このようになっていました。これは子どもたちもみることができるようにしました。そうすることで、誰がどんな考えなのか先生も子どももわかるようになります。すると、
先生が指示をしなくても勝手に対話が起こる
という現象が起こります。しかし、こういった勝手な対話をつぶやき同様に不規則発言、学習規律が乱れていると感じてしまう人はこういった対話を認めないことでしょう。
 余談ですが、今から数年前、樋口学級の授業を参観にこられた方に、授業後に、
「先生の学級、崩壊していませんか?大丈夫ですか?」
と言われたことがあります。どのような授業かは忘れたのですが、子どもたちは立ち歩いて自分の考えを交流したり、教師の指示がなくてもタブレット端末を使ったりしていました。
 きっと子どもたちが立ち歩いている様子、教師の指示が使っていない様子をみて、このように思われたのかもしれません。
 確かに、立ち歩いて好き勝手なことをしているとか、タブレット端末で授業とは関係のないことをしていたら、問題です。
 でも、この子たちは、そうではありませんでした。しっかりとサポートをしたり、自分の考えを交流したり、タブレット端末を使って説明をしたりしていたのです。どれも学びを深めていこうとしている姿です。とても立派な姿といえます。
 そのため、「先生の学級、崩壊していませんか?大丈夫ですか?」と言われたことに対して、「全く心配していません。あの学びを深めていこうとしている姿、すばらしいと思いませんか」と言った記憶があります。
実践に戻ります。
 このときの授業も、提出された考えを見て、

  • 四角形だけの子も多いんだ
  • やっぱりどちらも多いよね

といった声が聞こえてきました。そういった声のなかで、
「◯◯さん、どうしてできないの?」
と言い、わからないというカードを出した子に寄り添い、悩みを解決しようとしている姿がありました。寄り添った子は、その子から遠く離れた子でした。
 この子の悩みを全体で共有することにしました。
 この悩んでいる子は、「こっちで使うとこっちで使えないよ!」と言っているのです。そこで、もう少し聞いてみると、「左の三角形で3本の辺を使うと、右の方で2本しかない」と下の図を書きながら、話をしてくれました。

画像3

 この子は真ん中に直線を引くと、2つの辺が生まれるということがわからなかったのです。周りの子たちもたくさん説明をしてくれました。でも、なかなか納得はしてくれませんでした。そこで、紙で用意していた三角形に直線を引き、実際にハサミで切って、2つの辺が生まれるということを全体でみせて、確認をしました。すると、すぐに「あ〜なるほど。そういうことか」とその子は納得をしました。
デジタルではなくアナログを使うことで納得するということもあるということです。
 その後、「三角形でどのような形が作られるのか、調べてごらん」と言い、それぞれが考える時間を設けるようにしました。

3 ここ最近気になっていること

 私はここ最近、子どもたちに「考えてみよう」と言わずに、

  • 試してごらん
  • 調べてごらん
  • チャレンジしてごらん
  • 答えまで辿り着かなくても大丈夫
  • どうしてそうなるんだろうね
  • おもしろそうだね〜

などの言葉かけをすることが増えました。
 また、この授業で子どもたちに伝えたのは、

  1. 一人で取り組んでも良いし、グループで取り組んでも良い
  2. タブレット端末上ではなく紙で取り組んでもよい
  3. 提出箱の作成

というようにしました。
 @は言葉通りに、一人で取り組んでも良いし、グループで取り組んでも良いということにしました。子どもたちは席や椅子を動かしながら、声を掛け合い、グループで取り組んだりしていきます。一人でじっくり考える子もいれば、複数人で悩む子がいたり、多様な考えを出そうとしたりしている姿が見られました。
 Aは自分が考えやすいのがタブレット端末であればタブレット端末で、紙が良い子は紙で取り組むといったように、三角形の描かれた紙を用意しておき、自分で学び方を選択できるようにしました。子どもの中には紙で行ったものを写真に撮っている子もいました。
 Bは途中段階でもいいので、自分の考えを出してもらうようにしました。そうすることで、途中段階でもどの子がどのような考えをしているのかを把握することができるからです。
 最近に気になっていることがあります。それは、
子どもたちが活動しているときは、先生が前で座っている様子を多く見るようになった
ということです。子どもたちが活動しているときに、先生は前で座っておくのではありません。もし座っている場合は、前から子どもたちの様子をじっくりみておいたり、質問などは子どもたちがすぐに来れたりするようにしておきます。
 基本的にはぐるぐる動き回り、子どもたちに話をしていきます。ぐるぐる動き回るのは、「誰を指名しようか」「歩いているだけ」ということが目的ではありません。

一人ひとりに応じた声かけ、子どもへのフィードバックをすることが目的

です。
「それ、いいね!」
「そんな考えもあるんだ〜」
「どこで困っているの?」
「まだまだいけるんじゃないの?」
「その調子!」
などどんどん子どもたちに声かけをしたり、いいねポーズをしたりしていきます。
 タブレット端末が入ってきて、一人ひとりに応じた声かけやフィードバックの量が増えました。提出箱を作っておくことで誰かと話をしながら、タブレット端末上で他の子どもたちの様子を把握することができます。
 ただ、これまで以上に子どもたちの考えを把握することができるため、
「先生が前にずっと座ってサボっている」
ということができたり、「教師の都合で子どもを指名をしていくための材料集め」のためにタブレット端末を使用したりされることはマイナスです。これでは、どんなにすばらしい課題であったとしても機能しません。

話が変わりますが…
 この実践の続きは、少し長くなりそうなので、次回に続きを書きます。
 この原稿を書いている日、3年生の子どもたちに初めてCanvaやKahoot!の使い方について教えました。Canvaのほうは少し難しそうにしていたので、あまり興味を持たないかな…と思っていたのですが、休み時間に数人の子どもたちが実際に操作をしたり、使い方の質問にきたりしました。
 その様子を見て、私も一安心をして、この原稿を書いているところです。子どもたちがどのような使い方をしているのか、またこの連載で紹介していきたいと思います。

樋口 万太郎ひぐち まんたろう

1983年大阪府生まれ。大阪府公立小学校、大阪教育大学附属池田小学校を経て、2016年より京都教育大学附属桃山小学校教諭。「子どもが楽しむ・教師も楽しむ」「子どもに力がつくならなんでもいい!」をモットーに日々の算数授業を行っている。著書に、『子どもたちの学びが深まるシン課題づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の算数授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり2』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 物語文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 説明文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の学級づくり』(明治図書出版)などがある。

(構成:及川)

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