GIGAスクール構想で変える!1人1台端末の授業づくり
1人1台端末導入で、授業が確実に変わります。そして、仕事術も確実に変わります。具体的な実践のヒント・授業のノウハウを伝授!
1人1台端末の授業づくり(19)
不易と流行という言葉を間違って使っていませんか?
香里ヌヴェール学院小学校樋口 万太郎
2022/12/10 掲載
  • 1人1台端末の授業づくり
  • 授業全般

 タブレット端末が教室にやってきて以来、「不易と流行」という言葉をよく聞くようになりました。でも、「不易と流行」という言葉を正しく使用することができていますか。私は使い方を間違えていました…。

1 不易と流行を言い訳に

 読者のみなさんも、「不易と流行」という言葉を聞くだけでなく、ご自身で使用していることもあるのではないでしょうか。
 この「不易と流行」という言葉、とても便利な言葉です。便利な言葉である一方で、「不易と流行」という言葉が先生方の思考を邪魔していることがあるように感じます。この言葉を使えば、みんな何も言えなくなる水戸黄門の印籠(例えが古い…)のようになっているケースもあります。
 改めて、不易と流行という意味を確認しておきます。

 いつまでも変わらないものの中に新しい変化を取り入れることを指す言葉です。また、新しさを求めて変化をすること自体が、世の常であるということも指します。

 どうでしょうか。みなさんは正しくこの言葉を使えているでしょうか。
 研究授業の協議会でこの言葉を使用されるとき、

不易…本質的なこと
流行…その時代によって流行していること。いつかは廃れること

というように使われることを感じます。しかし、この意味では前述の意味とは微妙に違うことに気がつくでしょうか。上記の意味では、「新しい変化を取り入れる」ということがこの意味では含まれていないのです。私も以前はこのような意味で使用していました。
 このような意味で使われているため、
「授業のことは不易、本質的なこと。タブレット端末は手法であり、流行である。だから、タブレット端末を使用しなくても良い」
という残念な多くの主張を聞くことがあります。また、この主張を使い、「不易を大切にし、授業を変えなくても良い」と言われる方にも出会ったことがあります。この2つは、私からしたら、変化したくないという言い訳にしか聞こえません。
 たしかに、タブレット端末を使う実践を考えるときに、
最初に、タブレット端末をどう使用しようかなとは考えません。
最初に考えることは授業のこと

です。授業について考えていくなかで、自然とこの場面でタブレット端末を使おうかな…と思いついていきます。きっと先にタブレット端末をどう使用しようか考えた実践は内容がとても薄いことでしょう…。
 そもそも、タブレット端末を取り入れられた授業はこれまでほとんどありませんでした。いままさに、タブレット端末を取り入れられた授業についてみんなで創造している段階です。そして、

教科の学びも不易、タブレット端末を使用していく授業も不易

なのです。このように意識を変えることが我々には求められています。
 GIGAスクール構想以前のようなタブレット端末がない授業などはもう存在しないのですから。

2 指導言にも新しい変化

 このように考えると、この連載で書いてきたように「課題」に新しい変化を取り入れる必要があるということになります。これこそが課題2.0であり、シン課題です。
 例えば、指導言においても新しい変化を取り入れる必要があるということになります。
 大西忠治氏は、発問、説明、指示に指導言を分類しましたが、新しい変化を取り入れるということです。(大西忠治.『発問上達法−授業つくり上達法PART2』民衆社 (1988))
 前回、私が紹介した最近使用することが増えた言葉かけ

  • 試してごらん
  • 調べてごらん
  • チャレンジしてごらん
  • 答えまで辿り着かなくても大丈夫
  • どうしてそうなるんだろうね
  • おもしろそうだね〜

も指示のようにみえて、従来の指示には入れづらい指導言なのです。
 また、

  • とりあえずやってごらんよ
  • 自分たちでなんとかしてごらんよ

といった曖昧な指導言をすることも自分の中では増えてきました。これは、決して適当に言っているわけでなく、しっかり授業を考えたうえでの指導言です。

3 板書にも新しい変化

 原稿を書いているとき、私は15年ぶりに国語の研究授業を行いました。そのときの板書が以下になります。

画像1

 もちろんこの授業でタブレット端末を使用している子もいます。
 タブレット端末が入ってきて、板書をしなくなったという話を聞くことがあります。
 たしかに、学習内容によっては板書をする量が減ることもあります。でも、毎時間板書をする量が減ったりすることはありません。むしろ、これまで以上に板書量が増えるということもあります。
 だから、タブレット端末が導入されたことで、
 板書が必要ない、板書を全く書かない
とは思いません。板書に新しい変化があった結果が、板書が必要ない、全く書かないということではないということです。
 では、板書に新しい変化があるとしたら、

 板書=子どものノートではなく
 板書=子どもの思考を促すツール

が加わることだと考えています。上記の板書を見てみると、表の中に書き込んだり、線で結んだり、ファシグラのような板書になっています。もちろんタブレット端末導入前から、このような思考を促すツールとして使用されていた先生はいることでしょう。これからの板書は、より思考を促すというツールの役割が大きくなるということです。だから私は、板書をしなくなるということは、思考を促すチャンスを逃してしまうのでは?と思ってしまうのです。

4 目指すべきところは

 話を戻します。先生方の中には、新たに「課題」に新しい変化を取り入れる必要がない方もいます。元々、取り組まれていた「課題」が、子どもがアクティブになる課題であればそのままで良いのです。といったように、新しい変化を取り入れなくても良い方がいる…と書きたいところですが、課題では新しい変化を取り入れなくても、違うところでは新しい変化を取り入れ、調整する必要はあります。
 つまり、GIGAスクール構想で、私も含め全員が新しい変化を取り入れる必要がある
ということです。そもそも、思い出してみてください。今回の学習指導要領では、主体的・対話的で深い学びという視点で授業を改善することをねらいとしているのですから。授業を改善していきましょうよということです。この主体的・対話的で深い学びという視点がGIGAスクール構想によってなにか忘れられているような気がします。

個別最適な学び
協働的な学び
タブレット端末実践
探究
PBL

 現在、様々なキーワードがあがっていますが、これらのキーワードは、主体的・対話的で深い学びを目指そうとしたとき、どれも達成しているのではないかとも考えています。

樋口 万太郎ひぐち まんたろう

1983年大阪府生まれ。大阪府公立小学校、大阪教育大学附属池田小学校を経て、2016年より京都教育大学附属桃山小学校教諭。「子どもが楽しむ・教師も楽しむ」「子どもに力がつくならなんでもいい!」をモットーに日々の算数授業を行っている。著書に、『子どもたちの学びが深まるシン課題づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の算数授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり2』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 物語文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 説明文編』『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の学級づくり』(明治図書出版)などがある。

(構成:及川)

コメントの受付は終了しました。