絶対成功の体育授業マネジメント
体育授業がうまくいけば、学級経営もうまくいく!学級力が一気に高まる体育指導スキルと授業ネタを伝授!
絶対成功の体育授業マネジメント(1)
「教師力」を磨けば「学級力」がアップする
水泳
大阪府箕面市立萱野小学校教諭垣内 幸太
2015/6/10 掲載
  • 体育授業マネジメント
  • 保健・体育

1.「学級力」って何?

 学校とは、集団の中で学びを深める場です。その一番の母体は学級です。教師は、日々子どもたちと接しながら、「よい学級」を創りあげたいと思っています。「よい学級」とはどんな学級でしょう。
 目標に向かって頑張ることができる学級。みんなが仲良しの学級。互いに助け合える学級……。その答えは、人によってそれぞれかもしれません。私は、「よい学級とは?」と聞かれたら、「学級力のある学級」と答えています。
 具体的には、

  1. すべての子どもの居場所、互いの思いを伝える雰囲気
  2. 何か事にあたるときの集団としての勢い
  3. ここちよい笑い、朗らかな笑顔

 これらを集団としてもち合わせている学級、それらを創り出そうとする力のある学級です。
 子どもたちは安心して学びに向かい、効果的に学びを得ることができます。
 もちろん、日々のすべての教育活動で育んでいくものです。しかし、小学校6年間において、国語、算数に次ぐ時間数を有し、子どもたちからも人気の高い体育授業が果たす役割は、決して小さくはありません。

2.「学級力」≒「教師力」

 学級力。一見これらは、子どもがもつ力のように感じますが、すべては教師の導きがないと成立しません。学級力を高めるとは、裏を返すと、教師力を磨き高めることとも言えるでしょう。その要素をあげると、

子どものみとり方
子どもに対する言葉かけ(指導言)
単元、授業の組み立て方
教材の想像力
知識、教養……

 枚挙に暇がありません。しかし、これらの力を地道に磨き、高めていくことが、学級力を高めていくことに直結します。広い空間でおこなわれる体育、身体技能の習得という特別な教科だからこそ、磨かれる教師力があります。
 「体育の授業をみれば、学級の様子や担任の力がよくわかる」といったようなことを聞いたことはないでしょうか。若かりし頃は、この言葉を「体育で子どもを思い通りに動かせているかどうか」というように捉えていました。しかし、そのような表面上のことのみだけではなく、すべての子どもが自らの課題をもち、仲間と共に笑顔で、主体的に学習に取り組めているかという内面を「みれば」ということまで含んでいるのだと思います。
 私たちは、ただうまく授業を流すことにとどまらず、すべての子どもが目標に向かって目を輝かせ、仲間と共に高まり合い、学び合う授業を創造していかなければなりません。毎時間そのような体育授業ができれば、おのずと学級の力はぐんと高まります。
 そして、体育科で磨いた教師力は、他の教科・領域などにすぐ転移できる力となるでしょう。(これらの教師力については、今後この連載の中で述べていきたいと思います。)

今月の授業水泳授業で「二人組」を活用しよう!

 では、今回はこれからシーズンに入る水泳の授業を元に具体的な例をあげてみましょう。水泳の授業では何を思い浮かべますか? 泳げない子どもを泳げるようにする。もちろん正解です。水泳という教材をしっかり研究して、泳げるための手順や構造を理解しておくことは、教師として当然必要です。しかし、それだけなら個別学習でもできます。スイミングスクールでもできます。学校だからこそできる学習を創造したいものです。段取りや手順ばかりに目が行きがちですが、教師力を大いに発揮して、学級力を高めていきましょう。
 いくつかの例を紹介します。

ゲーム化

 ゲーム化することで、意欲が高まります。必然的に仲間とかかわります。子どもの実態を把握して、最初は水泳の苦手な子どもでも参加しやすいゲームを準備します。
例:ビート板押し競争
 一つのビート板を挟んで、互いに押し合います。審判をつけて、動きを見合うのもいいですね。

写真1一人バタ足より燃えるね!
写真2審判をつけるともっと燃える!

シンクロ泳ぎ

 仲間と動きを合わせて泳ぐことを課題として取り入れます。合わせることで、自分の身体の動かし方を意識します。同時に、仲間の動きを意識します。教師からの言葉かけやはげましが大切です。
例:シンクロ平泳ぎ
 息継ぎのタイミングを合わせて25mを泳ぎます。「顔をあげたら、見つめ合ってニコッとするよ」などと声をかけると盛り上がります。

写真3息継ぎのたびにニコッ!

教え合い、学び合い

 教え合ったり、学び合ったりすること、体育や水泳に授業でもぜひ取り入れましょう。その際、「見合いポイント」を示すこと、アドバイスし合う時間を確保することの2つが大切です。また、教師が率先して、具体的なアドバイスをすることで、その言葉が子どもたちにも広がります。苦手な子もポイントを言うことができます。みんなでできない子をできるようにしてあげようという勢いが生まれます。関わることで笑顔があふれます。

写真4「はい、顔をつけて、力抜いて…」

 個人の技能を高めることのみに重きが置かれがちな水泳の授業でも、子ども同士のかかわりを必然的に創りだしていくことができます。逆に、水泳のような個々の力の差が大きいものほど、学級力を高めるチャンスであるととらえることができます。
 まずは、最少人数である二人組をどんどん活用してみましょう。私たちの少しの発想の違いで、学級の力を高まるチャンスとなります。
 さぁ、教師力を磨き、学級力を高めていきましょう!

絶対成功のポイント

  • 「学級力」≒「教師力」だ!
  • 学級力(雰囲気・勢い・居場所)は体育で育てる!
  • 「二人組」をフル活用してかかわりが必然になる場を設定せよ!

垣内 幸太かきうち こうた

1974年、兵庫県生まれ。大阪教育大学教育学部卒業。
2009年、関西体育授業研究会設立。
「体育科の地位向上」を合言葉に、近隣の先生方とともに発足。授業力向上を目指し、月1回程度、定例会を開催。また、毎年7月に組体操研修会、11月に研究大会を開催。

(構成:木村)

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