- チームリーダーの仕事術
- 学校経営
1 あの失敗から成功が生まれた
「失敗は成功のもと」と言うが、失敗を生かすというのはなかなかできないものである。しかし、以前、まさに「失敗こそ成功への礎」「あの失敗から成功が生まれた」と感じ入った出来事がある。
私の勤務校が文部科学省研究指定校となり、「学校支援ボランティアとともに創る教育」を始めたときのことだ。外部(地域)から人を招いて教師とともに授業を行ってもらうという試みで、学校と地域の連携の一例として実践を重ねることが研究の目的だ。
はじめは、だれを招いてよいのかわからず、途方に暮れた。外部と連携をして授業をつくり出すという発想を、もともともっている教師はなかなかいないからだ。困っているところへ公設水族館から学芸員を派遣するという案内文書が届いた。
後日、理科の授業に学芸員の方を招き、生徒の疑問に答えてもらうということになった。生徒に水族館から魚のプロが来ることを知らせ、聞いてみたいことを書かせて、事前に学芸員の方に送付しておいた。
迎えた当日。授業はとんでもない50分間となった。学芸員の方が、生徒の疑問を読み上げて解説するという形式で、生徒には理解できない専門用語も織り交ぜられた説明が、延々と続いたのだ。学芸員の方は、生徒がどれほどの基礎知識をもっているのかを知らない。その中で、プロとして、事前に送られてきた疑問に真摯に答えようと詳細に調べられての来校であった。多くの疑問を送ってしまったこともあって、学芸員の方はすべて答えようと必死に説明してくださったのである。
しかし、生徒たちも聞いているふりをするのに必死だったのではないだろうか。参観していた私たち教師でさえ、ついていくのが大変だったのだから。
終了後に、授業を主催した理科の教員に、「なぜ授業が失敗したのかをレポートにまとめてほしい」と依頼した。このような失敗は二度としてはいけないという痛感とともに、研究期間中、このような授業が続いたら、学校は荒れるという危惧を抱いたからだ。
翌日、理科の教員が提出してくれたレポートは、失敗した原因がしっかり書かれている正直な内容であった。それをもとに全体会を開き、失敗を共有し合った。このレポートで一気に研究が進んだ。なぜなら、そのレポートに書かれたことをしなければ失敗をしないという確信がもてる内容だったからだ。
2年後の研究発表会の要項には、研究の出発点となったこのときの失敗を最初に書くことになった。研究主任は「失敗してくれてありがとうと言いたいです」とまで言い切った。失敗が真に生きた出来事である。
2 「失敗こそ共有しよう」運動
国語授業名人の野口芳宏先生は「経験は意図的に積んで整理しなければならない」と言っておられる。これは、経験さえ積めば、だれでも力がつくということではない、経験をどう次に生かすかが重要だ、ということだ。
そのためにもまず、「失敗こそ共有しよう」運動を広げたい。リーダーが自分の失敗談を語るのはどうだろうか。「失敗は成功の母」ともいう。同様な格言がいくつもあるのは、人というのは、なかなか失敗を生かせないものだということの裏返しだ。だからこそ、リーダーが率先して失敗をあきらかにして、それを生かす場面を見せたいものだ。
今回のPoint!
失敗から成功を導くには、失敗の原因追究と、その共有が大切である。