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中学英語の授業は英語で―現状と課題
教育zine編集部中川
2013/12/31 掲載

 今月13日、文部科学省は「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を発表し、「中学の授業は原則英語で行うこと」、「小学校英語の開始時期を3学年からに前倒し、5・6学年では正式な教科にすること」を盛り込みました。これらは基本的にH32年度から、3・4学年での小学校英語開始のみ前倒してH30年度より実施される予定です。ここでは特に前者の中学授業について詳しく見ていくとともに、中学英語の現状を探っていきます。
 

中学英語授業の実態

 今回の計画では、今年度実施された高校に続き、中学英語も授業は原則英語で行われることが明言されました。高校指導要領解説では、英語で授業を行うねらいを、

教師が授業を英語で行うとともに、生徒も授業の中でできるだけ多く英語を使用することにより、英語による言語活動を行うことを授業の中心とすること

としており、中学でも同様になると推測されます。ともすると「英語で授業」というキャッチーな面ばかり強調されがちですが、もちろん生徒が理解できるよう配慮が必要であり、このねらいが達成されるならば、

必要に応じて、日本語を交えて授業を行うことも考えられる

ということに注意しなければなりません。
 では、現在の中学校での英語の授業はどのように行われ、その中で英語はどれほど使われているのでしょうか。
ベネッセ教育総合研究所の「第1回 中学校英語に関する基本調査」(2008年)によると、中学での英語の授業において、教員が英語を使用する割合は以下のようになっています。

・ほとんど英語で授業している…1.4%
・70%くらい…12.3%
・50%くらい…39.4%
・30%くらい…43.3%
・ほとんど使っていない…2.7%

これはあくまで教員の英語を使用する割合で、生徒がどれほど英語を使っているかは分かりませんが、8割超の教員が、半数からそれ以下程度しか授業で英語を使用していないというのが現状です。
 また同調査では、授業における教員の指導と生徒の活動の時間の割合についても調査しており、結果、

・指導>活動…51.8%
・指導=活動…21.0%
・指導<活動…26.5%

と、活動よりも指導に時間が割かれている現状が浮かびます。授業での英語使用量を増やすことに加え、今の指導中心の授業から、活動中心の授業へと移行していくことが課題と言えます。すでに実施している高校での英語授業の検証を進め、これからいかに中学英語に反映させられるかが鍵となりそうです。

生徒の英語力と教員の英語力

 上述の計画では、こうした方針の転換に加え、最終的な生徒の到達目標について、現在は中学卒業時で英検3級程度としているところを、3級〜準2級程度にするとも述べています。しかし、文部科学省の「『国際共通語としての英語力向上のための5つの提言と具体的施策』に係る状況調査」(平成24年度)によると、中学3年の生徒のうち英検3級以上を取得している生徒は16.2%、取得はしていないが英検3級以上相当の英語力を有すると思われる生徒は15.0%、合計31.2%という結果でした。現在の目標の3級ですら、生徒の3人に1人しか達成していないという状況にもかかわらず、これを準2級に引き上げることは、果たして現実的と言えるのでしょうか。
 また教員の英語力向上も急務としており、計画中では必要な英語力として「英検準1級、TOEFL iBT 80点程度等以上」という基準を挙げています。上記調査では同様に教員の英語力についても調査しており、英検準1級以上又はTOEFL のPBT 550 点以上、CBT 213 点以上、iBT 80 点以上又はTOEIC 730 点以上を取得しているのは全体の27.7%(当該試験の受験経験があるのは全体の75.4%)という結果となっています。これも達成するまでの道のりは長いと言えそうです。また単純にこれらの基準を超えればよいというものではなく、教員自身の使える英語力を引き上げることも必要です。都内公立中学・高校の3年目の全教員に3か月間の留学を課すことを決めた東京都教育委員会の例などは、注目すべき新たな取り組みと言えます。

 様々に課題を抱えている中学英語。大きな改革に向けて、今後どのように具体策が出されていくのか、注視していきたいと思います。

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