- はじめに
- 第1章 初任者を「安心して担任を任せられる教師」に育てるために
- 1 これまでの初任者指導では学校は「崩壊」する
- (1) 1/3若手時代の到来
- (2) いま,若手育成を始めることが必要
- 2 初任者研修の問題点と改善策
- (1) 初任者研修システムの改善に向けて
- (2) 研修の内容・順序・配列にある問題
- (3) 実効性のある初任者研修プログラムと指導の担い手
- 3 教師の成長モデルのイメージ
- 4 初任者研修プログラムの実際
- 5 若手教師の育成に必要な「内省支援」@論理作文
- (1) 「内省支援」の必要性
- (2) 「内省支援」としての論理作文
- 6 若手教師の育成に必要な「内省支援」Aメンターチーム
- 《初任者から見た初任者研修》
- @ 授業に関する指導 指導教員の視点はどこに?
- A 行動は言葉をこえ,子どもの心に響く力である
- 第2章 初任者への指導を成功させる10の鉄則
- 1 初期指導を手厚くしよう
- 2 実践を省察する癖をつけさせよう
- 3 子どもとの関係を保つポイントを指導しよう
- 4 授業力向上のため学習規律を徹底させよう
- 5 日常授業の力こそを向上させよう
- 6 行事指導を成功体験にしよう
- 7 見通しを持って指導できるようにしよう
- 8 知識と実践をつなげる指導をしよう
- 9 タイプを見極めて手助けしよう
- 10 効率性を高める仕事術はどんどん指導しよう
- 《初任者から見た初任者研修》
- B 子どもの様子について語り合うこと
- C 初任者の視野を広げ,道筋を示す指導
- 第3章 初任者と指導教員のための教師力トレーニング講座30&完全解説
- 《第3章の使い方》
- 意識と実務について
- 1.教師として生きるということ
- 2.社会人としての行動と身だしなみ
- 3.仕事術
- 4.記録術
- 5.自己研鑚@(日常的省察)
- 6.自己研鑚A(研修会参加)
- 7.自己研鑚B(教育書を読む)
- 授業について
- 8.学習指導・学習規律の意義と指導の在り方
- 9.子どもを伸ばす授業づくり
- 10.発問づくりのポイント
- 11.国語授業のつくり方とポイント
- 12.算数授業のつくり方とポイント
- 13.社会・理科授業のつくり方とポイント
- 14.音楽・図工授業のつくり方とポイント
- 15.体育授業のつくり方とポイント
- 16.生活・総合的学習の授業のつくり方とポイント
- 17.道徳授業のつくり方とポイント
- 18.教材教具の制作と指導計画の改善
- 19.指導と評価について
- <付録>授業参観・振り返りチェックシート
- 学級経営について
- 20.学級の役割と織物モデル
- 21.教室環境
- 22.縦糸を通すということ
- 23.横糸を通すということ
- 24.子どものトラブル対応
- 25.気になる子の指導について
- 保護者と地域への対応について
- 26.保護者・地域対応のポイント
- 27.学級通信のネタと工夫
- 28.連絡帳・電話での対応
- 29.家庭訪問・授業参観・学級懇談会の運営
- 30.通知表と所見の書き方のポイント
- <付録>年度初め準備チェックシート
- おわりに
はじめに
学校では現在,初任者のうち96%が学級担任を持ちます(文科省平成23年調査)。つまり,入職,即プレイヤーというわけです。大学を卒業した段階で,すでに実践力を身につけているという前提での人事と言ってもよいでしょう。
もちろん,実際にはそんなことはありません。スキルも知識も十分でない若い教師が,いきなり現場で先輩たちと同等の成果をのぞまれる。これが,学校現場の現実です。新採用教師たちが大量に離職するということが以前から問題になっていますが,背景にはこうした実情があります。
どんな企業であっても,「見習い期間」「研修期間」がある一定程度保障されています。その上で部署がきまり,企業活動の一線へと送り込まれていきます。
ところが,学校現場ではそれが保障されていません。この新人研修期間だけ見れば,学校現場は完全に「ブラック」と言えます。
一方で,初任者には年間300時間程度の校内研修が行われることになっています。そのうち,1/3は自分の教室で授業をしているところを見てもらったり,あるいは自分の教室で,指導者の授業を見せてもらったりという実践的な研修ですが,のこり2/3は自分の教室を離れて,校内の別室で管理職やミドルリーダーから講義を受けるという建前になっています。そのほかに校外研修もあります。
実際にこうした研修を額面通りに行っている学校がどれほどあるかは分かりませんが,教室を離れてする研修が,初任者の学級経営を圧迫しているという指摘は以前からあります。
そうすると,以前から初任者研修には問題があったのに,その問題がいま,まさに問題として顕在化してきたのはなぜかという,疑問が湧いてきます。
多くの初任者は,現在の初任者と同様,以前も非力でした。いくつかの学級が,いまでいえば崩壊か,崩壊に近い状態でした。しかし,その非力さを「初任者ゆえ」と許されていたのです。周囲の教師も,保護者も,教師としての評価を一時保留していたのです。つまり,「しょうがない,若いんだから」と思っていたのです。
その一方で,同じ学年の教師たちや,ときには保護者までもが,初任者の相談役になっていました。放課後,教育談義に花を咲かせたり,ときには飲みながら話をして,若い教師を育てていきました。徒弟制がまだ学校に残っていた時代です。しかし現在,それは難しい状況です。
端的に言うと,先輩が職場で若手を育てられなくなってきたのです。
以前,教師は職人でした。経験によって積み重ねられた経験と勘によって,子どもを育て,学級をマネジメントしていったのです。ところが現在は,そうではありません。
新しいタイプの子どもたちの出現。そして新しいタイプの保護者の出現,新しい教育の思潮,ICTの導入……。先輩教師たちも,研修をしなければ,どんどん後れをとっていくのです。先輩が若手にICTについて尋ねているというのが学校の日常になっています。先輩が,経験が長いというだけで発揮できる優位性は,以前ほど高くありません。
以前より,高度で専門性の高い知識と技能が,若い教師に求められています。それもかなり切迫した状況です。
しかし,若い教師を育てることのできる状況が,いまの学校現場にはありません。それも,構造的にそれができない状況になっています。
では,どうすればよいのでしょうか。
簡単に言えば,それでもなお,現場で若手を育てるしかないのだと私は考えています。それには,優位性を持ったものが,そうでないものに一方的に指導し,知識を注入し,スキルアップのトレーニングをするという方法ではない方法が必要だと,私は考えています。
本書で,その新しい方法を提案し,初任者研修を通して,すべての校内研修を構造から変革しようというのが,私の願いです。
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- 明治図書
- 初任者だけでなく、ベテランにも役に立つ。2023/6/840代・小学校教員
- 山田先生の独自の教師教育レシピが「なぜ、それが必要なのか」という根本的なところから書かれているので、読み応えがありました。2019/3/1450代・主幹教諭
- 大量採用時代ということで,初任者の指導の一助になるかと思い購入しました。具体的で分かりやすい内容でした。2016/6/2440代・小学校管理職