生活指導 2000年8月号
学びと教えの最前線

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生活指導 2000年8月号学びと教えの最前線

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2000年7月
対象:
小・中
仕様:
A5判 132頁
状態:
絶版
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目次

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特集 学びと教えの最前線
生活現実から出発し,「もう一つの世界」を共に探る学び―坂田和子実践を読み解く―
船越 勝
〜生活現実から出発し,「もう一つの世界」を共に探る学び―坂田和子実践を読み解く―〜
【コメント】「わくわく」を楽しみながら
坂田 和子
学びが自治を拓くとき―中野譲実践を読み解く―
照本 祥敬
〜学びが自治を拓くとき―中野譲実践を読み解く―〜
【コメント】これからのこと
中野 譲
「総合学習」に対して柏木さんが実践的に発言していること―柏木修実践を読み解く―
高橋 廉
〜「総合学習」に対して柏木さんが実践的に発言していること―柏木修実践を読み解く―〜
【コメント】登校するのがつらかった学校だから
柏木 修
教科外活動と「総合学習」―角岡正卿実践を読み解く―
子安 潤
〜教科外活動と「総合学習」―角岡正卿実践を読み解く―〜
【コメント】思いついたことができた三年間
角岡 正卿
「総合的な学習の時間」はどう編成されているか
竹内 常一
第2特集 学級づくりで何を話題化するか
子どもたちと語り合う今と現実
佐伯 隆
開幕ベルは華やかに
田北 昌司
学級の仲間の姿を話題に
山口 智史
集団や社会・世界を切り開く教師の「対話」を大切に
宮本 誠貴
今月のメッセージ
未来教育をベースにして参加型創造型学びへ
浅野 誠
全生研第42回全国大会基調提案
平和的な生き方にひらかれた自治と学びを創りだそう
基調提案委員会
書評
新自由主義の不平等主義に対抗する
山本 敏郎
読書案内
暴力支配の極北としてのアウシュヴィッツ
竹内 常一
子ども・若者文化考
夏の「ひまわり学校」
及川 宣史
小さな物語
「桜」が咲きはじめるとき
前田 直子
ため息と怒りからの出発
「ジコチュウ」の音楽専科とのたたかい
薬師丸 宏
事件の現場から
「少年恐喝事件」の構図
折出 健二
読者の声
6月号を読んで
案内板 集会・学習会のお知らせ
すれちがいから出会いの場へ―現代学校の探求 (第16回)
今、なぜに「ひろしま」なのか
須佐 一
【コメント】憲法・教育基本法の原点に立ち、教育の原点を見据えた実践を
大和久 勝
同時代を生きる教師たち (第2回)
ロマンの残映(2)
鈴木 昭一
〜授業の中での出会い〜
ほっとたいむ サークルからの発信
おじさんサークルでも頑張っています
細江 剛
全生研第42回全国大会参加要項
編集後記
荒井 伸夫

今月のメッセージ

未来教育をベースにして参加型創造型学びへ

常任委員 浅野 誠


 私は、今、大学一年生対象の「基礎ゼミ」で、「地球と私の未来、人生と職業」というテーマを三〇名の学生たちと追求しています。この科目は、大学生が、大学の授業に対応する力・意欲が弱いことをなんとかしようというカリキュラム改革のなかで、数年前から設置された科目です。しかし、学生たちが、これまでの学びの「訓練の成果」で、与えられたものを暗記することばかりうまくなり、主体的にテーマを設定して調査研究し発表討論するといったことでは、なかなかうまくいかず、数十名の担当教員のほとんどが難渋しています。私もかなり試行錯誤的にやっていますが、今年は、先のテーマで、各時間に「地球と社会の未来で起こりそうなこと」「25年後の人生」「〇〇さんの人生計画」「人生・職業キーワードマップづくり」などといった二〜三のアクティヴィティを用意し、それをもとに活動・討論することからはじめています。そして、かれらがもっとも苦手とする討論を意欲的な展開にするために、雪玉討論、列討論、トランプ式討論、椅子代表式討論、壁面短冊張り出し式討論、マップ作成式討論などと多彩な方法をくりだしています。それらは人間関係を量質ともに豊かにつくり出すことと並行し、共同の学びを成立させようとするからでもあります。そうしたことをもとに、学生自身が、授業の企画の立案決定に参加し、学習を自治的に運営していく方向へと進むわけです。

 トコロテンコース的に一八年余りの人生を過ごして大学に入り、「私の未来」について考えてきたことの少ないかれらにとって、地球・社会・人生・職業などの未来について、共同作業をし、討論することはきわめて新鮮なことのようです。そこで、人生や社会のありようについての固定観念を、いろいろなケースを考えることをとおして、ひっくりかえしながら、問題関心、課題意識を成立発展させ、自分なりの未来像をつくることを追求しているのです。そしてそのことから、学習意欲を成立発展させようとしているのです。

 この私の実践は、未来教育の分野が、これまでの教育のなかで欠落してきたことに異議申し立てをするものです。教育が未来にかかわる営みでありながら、未来について教え、学ぶことは例外的でした。確定的な知識を伝授することが教育だというとらえかたが支配してきたこれまでの学校教育のなかでは、当然だといえば当然ですが。また、現在の日本の子ども・青年たちは、未来を考えることから、そして学習から逃げ出しているといわれています。その背景には、多くのおとなたちが、「今、頑張れば、おとなになったら報われる」という表現で、設定されたトコロテンコースをひたすら歩むことを子どもたちに求め、子どもたちは学べば学ぶほど消極的受身的になり、未来について考えることを放棄し、今を楽しめばいい、という感覚になっていることがあるのではないでしょうか。また、それは将来のために「基礎」が重要で、「基礎学力」を身につけていれば(現実には、入試科目に限定される)、あとはなんとかなる、という発想を生み出し、現実と未来に関与し、それらを創造していく参加型創造型教育が放棄されてきたのです。

 未来教育は、未来をバラ色に、あるいは悲劇的に描くものとは異なって、未来創造作業を、地球と社会と自己とを交差させてすすめるものです。したがって、それは、一つしかない正解の集積としての知識を伝達するタイプではなく、むしろ知を創造し、かつ地球・社会・自己という現実をどう切り開くかという問いをもとにして展開するものです。未来を担う子どもたちが、時代の作り手、担い手になる力量・構えをつくることは教育の基本的課題です。そして、学びは、学ぶ本人が、未来に向かって、学ぶことの意味を発見創造し、学びを計画推進していくこと、それを孤立競争関係ではなく、共同的な関係のなかで展開することのなかで、成功的に進められるものです。その意味で、未来教育をベースにした参加型創造型学びを展開することが重要であるといえましょう。

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