生活指導 2000年10月号
学級崩壊後の子どもたち・いま同僚と何を語る

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生活指導 2000年10月号学級崩壊後の子どもたち・いま同僚と何を語る

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2000年9月
対象:
小・中
仕様:
A5判 132頁
状態:
絶版
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目次

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特集 学級崩壊後の子どもたち
学級崩壊後の子どもたち―その人格への影響と教育指導の課題―
楠 凡之
実践記録
「学級崩壊」からの出発―一番苦しんでいたのは子どもたちだった
佐藤 建男
何でここまですさむのか
西田 隆至
【コメント】失われた空白の時間を取り戻そうと目覚めた時に
佐藤、西田氏の実践を読んで
北嶋 節子
空中分解寸前感覚の学級だったが
川辺 一弘
春を待っていたA組
佐藤 くみ子
【コメント】子どもたちの「不信」をどう受けとめ、変えていくか
川辺、佐藤氏の実践を読んで
加納 昌美
コメントを受けて
彼らのその後
佐藤 建男
「義理と人情」の世界が通じない子どもたち
西田 隆至
なぜ子どもたちと心が離れていったか
川辺 一弘
現代の中学生を自立させるには
佐藤 くみ子
「自己」と「他者・社会」の境界が崩壊する
一〇代の事件を読む
折出 健二
第2特集 いま同僚と何を語る
いっしょに泥をかぶり、いっしょに悩むこと
中西 裕一
関わりを求めて
村木 恵美子
少しの変化を大切にすることからはじめよう
中川 晋輔
いま同僚と何を語るか―三氏の実践記録を読む―
大和久 勝
今月のメッセージ
人事考課制度を打破するしたたかさと私たちの教育実践への確信を持とう
岩瀬 暉一
書評
『教育を変える』
城丸 章夫
読書案内
総合学習のテーマの決め方・広げ方
子安 潤
子ども・若者文化考
愛ワールドへの入口
桜木 真一郎
小さな物語
ある母親からの手紙
田中 秀樹
ため息と怒りからの出発
「こんな子ども、はじめてだわ」
水木 涼
沖縄サミットの現場から
沖縄サミットと子どもたち
喜屋武 幸
読者の声
8月号を読んで
案内板 集会・学習会のお知らせ
すれちがいから出会いの場へ―現代学校の探求 (第18回)
民主的学校づくりの展望
松井 信夫
【コメント】教職員の合意づくりを基礎に学校をつくる
大和久 勝
同時代を生きる教師たち (第1回)
年代を越えて子育てを考えよう
内田 万千子
ほっとたいむ サークルからの発信
明日の元気を充電させてくれる宇城生研
小松 由見子
全生研の窓
編集後記
荒井 伸夫

今月のメッセージ:

人事考課制度を打破するしたたかさと私たちの教育実践への確信を持とう

常任委員 岩 瀬 暉 一


 この四月より東京都では、全国にさきがけて一般教員にも人事考課制度が導入され、自主申告制度が実施された。新勤評としての人事考課制度の内容やそのねらいが、都教委の進める一連の管理統制策と一体をなすものであることについては、すでに『生活指導』二〇〇〇年二月号の「教育改革の現場から」で平井威氏が述べている。

 人事考課制度の導入とその強行に対しては全都的な怒りを呼び起こし、ほとんどの職場が圧倒的な多数で反対の職場決議を行ない、抗議の声が都教委に集中した。かなりの数の管理職からも導入反対の意見が寄せられ、かつてない教育の危機として教育現場でうけとめられた。もちろん積極的に支持する管理職も少なくないし、内心は反対や疑問を抱いていても、勇気をふるって自分の意思表示ができない管理職もいる。一般教員の中にも少数ではあるが、積極的に支持する意見があることも確かである。しかし、賃金差別を持ち込むことで教育現場を分断し、教育を破壊する企てに圧倒的な反対の声があがったのも当然である。このまま進行すれば、定期昇給もままならぬ教員が生まれ、異動における差別的扱いや、指定研修が強制され、研修の自由も奪われることになる。そして都教委の意に従わない教員を現場から排除し、やがてはリストラすることが目論まれている。

 四月からの自由申告をめぐる状況は、職場の状況や管理職の姿勢によっても違いがあり、都教委が期限をきって自己申告書の提出を求めても、管理職の報告どおりには必ずしも進行していない。分会態勢の弱い職場では、人事考課制度や自由申告制度の具体的な内容を四月になってから配られた都教委のパンフレットではじめて知ったという職場もあり、お上に忠実な管理職の説明に疑問を感じながらも、言われたとおりに自由申告書を全員が提出した職場もある。自由申告をするにあたって、まず校長の学校経営方針が示され、それにもとづいて各分掌からの方針が出され、それにもとづいて各自の教科・学活・道徳・特活・分掌等の具体的な指導方針と活動計画等を自主申告することになるが、職場によっては期限が近づいてもいっこうに埒があかず、「ともかく自主申告書を出してくれればよい」と、逆立ちしたことも起こっている。教師の中には申告書の提出を先き延ばしにして拒んでいる者もいる。都教委は未提出者への差別的待遇をちらつかせて恫喝している。ある職場では、学年や分掌ごとに集まって申告書の書き方を話し合い、管理職に「みなさん同じようですが……」と言われて、「大事なことなのでみんなでじっくり検討した結果、同じような内容になりました」とすましている職場もある。どのように申告するか話し合ったり、どのような申告をしたか公開したり公表したりできるかどうかは大きなカギをにぎっている。

 人事考課制度はすでに事務職員や栄養職員には一〇数年前から、管理職に対しても数年前から導入されている。不当解雇とたたかっている私学における人事考課と差別のひどさはものすごいが、そこにも民主的教育を守るために勇敢にたたかう教職員がいる。管理職との面接も、教育に関わる共同者として学校づくりや教育実践をめぐって正々堂々と自信をもって自己主張するよい機会ととらえることもできる。なによりも私たち教師は校長の意のままに動く卑屈な手下ではないからである。

 人事考課制度を導入した欧米諸国でもその失敗は明らかとなり、見直しが行なわれている。それを承知で同じ轍を踏む政策をとるのは確信犯的な意図があると言えるが、日本国憲法の精神など意に解せず、かつて「スパルタ教育論」を主張し、いま「三国人」発言や日の丸・君が代の強制と「道徳」教育を推進する石原都政下の教育行政は楽観視できないが、親・国民の信託に応えて民主的・平和的国家・社会の主体的な形成者=主権者を育てる教育実践に確信を持ち、人事考課制度を打破するしたたかさを持ちたいものである。


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