生活指導 2007年5月号
いじめ・暴力に立ち向かう―発見と解決5つの視点

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生活指導 2007年5月号いじめ・暴力に立ち向かう―発見と解決5つの視点

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2007年4月5日
対象:
小・中
仕様:
A5判 124頁
状態:
絶版
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目次

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特集 いじめ・暴力にたち向かう―発見と解決5つの視点
いじめ・暴力にたち向かう―発見と解決5つの視点
井本 傳枝
班・グループづくり
(小学校)今、話し合うちからを子どもたちに
齋藤 修
(中学校)互いに認め合うグループに
村越 規雄
リーダーづくり
(小学校)子どもとじっくり話し合う
古関 勝則
(中学校)いじめ問題をきっかけにして
小橋 健一
対話・討論・討論づくり
(小学校)「いじめ」をつらぬく新たな世界をつくる
堤 公利
(中学校)いじめ・トラブルを子どもたちとともに考えよう
村上 米子
教師集団と共に
(小学校)一緒に悩み、共に考える教職員集団に
里中 広美
(中学校)「進の場合」−教師の「同僚性」とは何か−
井原 美香子
保護者と共に
(小学校)女子のいじめにどう取り組んだか(小6)
河合 翔一
(中学校)保護者と共にいじめ・暴力に取り組む
川辺 一弘
第2特集 5月の楽しい実践・4つのアイデア
子どもがつながる学級内クラブ
(小学校)「この指とまれ」で夢と友だちと文化を
篠崎 純子
(中学校)教室をジャングルに
猪俣 修
授業づくりのアイデア
(小学校)実践構想を大きく立ち上げ、子どもたちと共に創造しよう!
植田 一夫
(中学校)五月の出会い直しを演出する
中根 富弥
これでバッチリ、楽しい遠足・修学旅行
(小学校)全員行ってきました−全校なかよし遠足
志賀 廣夫
(中学校)一年間の終わりを目指して、ワクワクの一歩を
加納 昌美
保護者とつながる・出会いなおす
(小学校)保護者とつながるために
石塚 美代子
(中学校)イベントでつながり、子育て意識の共有を
雨滝 洋介
今月のメッセージ
教育再生会議「いじめ問題への緊急提言」に異議あり
大和久 勝
私の授業づくり・道徳 (第2回)
小学校/道徳の授業は、自作の資料で
森田 周明
中学校/子どもたちがなっとくし、心にしみいる道徳
土居原 和子
実践の広場
学級のイベント
「玉合戦」を成長させて
近藤 俊克
学年・学校行事
卒業までに6つの実行委員会が活躍
岸田 久惠
学びの素材
自分を発見し、他者と出会うための自己紹介アクティヴィティ
渡辺 雅之
子どもの生活を見る
ひと時の潤いを求めて
猪股 修
部活動・クラブ活動の工夫
子ども達がつくったダンスクラブの一年間
井関 久美子
心に残る子どもとの対話
『バカにされたくない』心に寄り添う
池田 学
手をつなぐ―親と教師
「こども夜市」のとりくみ
高尾 和伸
掲示板Y・O・U
川尻 美亜久松 有香
ホッと一息・コーヒータイム
私のオフタイム
土屋 久美子
マンガ道場
新田 行雄濱武 準子
案内板 集会・学習会のお知らせ
教育情報
「浸透」の論理の問題性―ジェンダー・バックラッシュの用語法をめぐって―
秋山 麻実
風の声―この人に聞く
他者との出会いをつくる社会のアートを
中西 新太郎
読書案内
『子どもの荒れにどう向き合うか』(杉田 雄二・著)
鈴木 和夫
読者の声
3月号を読んで
シリーズ/「いじめ」問題を考える (第1回)
「被害者の気持ち優先」を第一に
柏木 修
全生研第49回全国大会案内
編集後記
井本 傳枝

今月のメッセージ

教育再生会議「いじめ問題への緊急提言」に異議あり

常任委員 大和久 勝


安倍首相の諮問機関である教育再生会議が「いじめ問題緊急提言」(06年11月29日)を発表した。「学校は、いじめは反社会的行為で絶対に許されず、見て見ぬふりをする者も加害者だと徹底指導する(提言@)」「学校は、問題を起こす子に、指導、懲戒の基準を明確にし、毅然とした対応をとる(提言A)」「教育委員会は、いじめに関わったり、放置・助長したりした教員に、懲戒処分を適用する(提言C)」など8項目の提言であるが、いじめ問題の解決のために、体罰の見直しや、いじめをする子への懲罰、いじめを解決できた教師とできない教師への賞罰をシステム化しようとして話題をふりまいている。

まず子どもへの懲罰については、根底に「いじめる子」=「わるい子」という見方がある。問題を引き起こしている当事者として、いじめる側の子どもたちを「わるい子」として見てしまいがちである。だから、厳罰もやむなしと思ってしまったりする。しかし、はたしてそうだろうかと立ち止まって考えてみなければいけない。いじめる子がなぜいじめをしているのかを見ていくと、必ずわけがある。確かにいじめている行為は許せることではない。きびしく叱らなくてはいけないし、大いに反省を促さなければならない。ところが、指導はそれだけで終わってはならない。まず、その子がいじめという行動に出た背景をみなければならない。必ずわけがある。家庭への不満、学校への不満、将来への不安、いじめられてきたことへの反動、友達関係の悩みなど、いじめという行為に走ってしまった背景がある。それを、読みひらかなくてはならない。子どもたちの息苦しさや、集団の中での孤立感、大人に見捨てられている感触の増大など、子どもの生きづらさの発露が、いじめであったり、荒れや暴力であったりしているのだというとらえ方が重要なのである。また、いじめは、集団の力が弱いために生じることが多い。正義を通す討議や討論が育っていない集団の中ではいじめが育つ。だから、いじめは集団づくりの進展によって解決されてくる問題で、いじめている子への個人指導に置き換えるだけでは解決しない。いじめの問題は、所属する集団の問題であり、したがって、「集団づくり」がいじめ克服の一番の手だてなのである。

教師の場合はどうだろう。上司からいじめの有無を詮索され、指導のチェックをされ、いじめを見逃したりいじめを解決できなかったら教員評価を低くすると脅かされたり、指導力不足教員にするなどといわれたらどうだろうか。必死になっていじめの傾向をチェックしながら、「いじめはいけない」「断じて許されない」「いじめは悪だ」とお題目のように言い続けることになるだろう。行政が求めてくる「毅然とした対応」で、絶えず処罰をちらつかせて脅したり、意に反した体罰を行使してしまわないだろうか。社会奉仕(特別掃除などを指しているらしい)や、別教室の指導などというが、お仕置きや見せしめに終わってしまわないだろうか。

結果、どのような事態が起きるか。子どもたちは、教師や親の目の届かないところで、さらに増幅されたストレスを発散させるということになるだろう。教室での荒れや暴力に、今以上に表現されてくるかもしれない。

教育基本法の改悪、教育再生会議や中教審などの安倍教育改革が、子どもたちのおかれた現在の状況をさらに悪化させていくことは目に見えている。競争と管理がいっそう強化され、徳目が注入され、格差を助長し、子どもたちの生きづらさは拡大される。どうしたらいいかははっきりしている。子どもが荒れる背景にある社会情勢を確かな目で見つめ、子どもの生きづらさに思いを寄せることである。そして学校を含めた社会をより良くしようとねばり強く闘うことである。そうすれば、いじめという現象の分析も、子ども集団への指導の方向も、今までよりずっと見えてくるはずである。

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