生活指導 2011年11月号
東日本大震災と教師・子どもたち(2)―教育、生活指導の課題を問う

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生活指導 2011年11月号東日本大震災と教師・子どもたち(2)―教育、生活指導の課題を問う

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ジャンル:
生活・生徒・進路指導
刊行:
2011年10月6日
対象:
小・中
仕様:
A5判 123頁
状態:
絶版
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目次

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特集 東日本大震災と教師・子どもたち(2)―教育、生活指導の課題を問う
特集のことば
東日本大震災と教師・子どもたち(2)―教育、生活指導の課題を問う
高橋 英児
《インタビュー》原発事故から見える私たちの社会、生活の問題
菅井 益郎高橋 英児井本 傳枝
提起論文1[原発問題と向き合う学びをどう考えていくのか]
原子力発電と放射能の授業プランづくりからの教育学的帰結
子安 潤
提起論文2[阪神・淡路大震災の経験から学ぶもの]
被災地の子どもたちを裏切らないで―被災地から「普通の学校」を問う―
小川 嘉憲
提起論文3[教育と福祉の結合の問題]
スクールソーシャルワーカーの活動から見た“震災後”の教育と福祉の結合
鈴木 庸裕
生活の復興と生活指導の課題―全生研第53回全国大会自主集会「東日本大震災と教師・子ども」から
T 東日本大震災―宮城で起きていること
佐々木 大介
U いかに人間同士が結びつくか
古関 勝則
[報告]全国大会自主集会「東日本大震災と教師・子ども」で語られたこと
井本 傳枝
第2特集 活動で育つ子どもたち
<小学校>お誕生会と学級クラブでつながって
小座野 喜子
<小学校>ぶどうが育てたもの
木佐貫 佳子
<小学校>川に行こう!
風野 みさき
<中学校>「のぞむ」を包むクラスに
兼田 幸
今月のメッセージ
希望を持って再スタートを
折出 健二
私の授業づくり (第32回)
小学校〈道徳〉/リーダーの自立を促した道徳「親友」の授業
藤原 伸一郎
〜学級集団づくりに道徳の授業を位置づける〜
中学校〈道徳〉/エンカウンター風集団ゲームのすすめ
古山 正則
実践の広場
子どもの生活・文化・居場所
居場所が保健室でもいい
上田 華
子どもをつなぐ活動・行事
誰でも苦手なものはあるよ!
竹内 八重子
いきいき部活・クラブ
子どもたちの手でつくるクラブ活動
中本 敬子
手をつなぐ―教師・親・地域の人々
職場の雰囲気を変えた職場会
田井 美月
私と集団づくりとの出会い
教師としての私の生き方を決めた出会い
吉田 智子
案内板 集会・学習会のお知らせ
教育情報
新学習指導要領のもとでの学校・教員の実態と課題
橋本 尚美
使ってみよう!実践グッズ (第7回)
忘れ物をする子どもの指導
志賀 廣夫
〜自己管理能力を育てるチャート式説明図と創造的な指導〜
若者の広場 (第7回)
発信しよう!若い教師の声
全生研若手教師たち
〜全生研千葉大会・若者の集いより〜
地域生活指導へのアプローチ (第11回)
子どもと共に生活をつくるということ
村上 晶代
読書案内
藤田省三「『安楽』への全体主義―充実を取り戻すべく」
竹内 常一
〜『全体主義の時代体験』(『藤田省三著作集』6、平凡社、1995)所収〜
読者の声
9月号を読んで
シリーズ/各地の実践
北海道
倉下 さくら
〜次のステージへつなげるために〜不登校の居場所さがし〜〜
『生活指導』誌の発行・発売元の変更について
全生研常任委員会
全生研の窓
村越 規雄
編集後記
高橋 英児

今月のメッセージ

希望を持って再スタートを

愛知教育大学 折出 健二


日本学術会議東日本大震災対策委員会は、「提言 東日本大震災被災地域の復興に向けて―復興の目標と7つの原則―」(2011年6月8日)の中で、「復興は、何よりも、人々のいのちを大切にし、暮らしを再建し、未来への希望を育むものでなければならない」と述べています。さらに、「被災地域の住民、とりわけ10万人に及ぶ避難住民に対する、日本国憲法の保障する生存権の確立は、復興の基本」であって、「復興にあたっては、その回復に向け全力を尽」すべきで、「中でも、未来の担い手である子どもの成育・教育環境の整備及び人的・物的支援の制度を万全に構築し、大震災により保護者を失った子どもへの特別の支援策を早急に講じる必要がある」と述べています。

この重要な学術的な提言内容を教育の次元で受けとめ直すとき、それは全国生活指導研究協議会・指標の掲げる研究・実践活動の方向性と基本的にはまったく一致するものです。すなわち、わたしたちは3・11大震災後の人々の活動に学び、今まで以上に「一人一人の子どもを具体的な生活者」ととらえ、「子どもたちが自己の環境との能動的なとりくみを通して、自主的な学習をすすめ、自治的・文化的な活動を発展させ、人間としての権利を尊び科学的真実を愛し民主的社会の成員としての諸能力を備えた人間に成長する」機会をいっそう回復・充実していき、核・原子力の問題も視野において「子どもの権利と国際平和の確立につながる学校教育の実現に努めます」。さらに、わたしたちは、「生活指導の実践と研究をとおして、教職員、保護者、地域の人々との共同を深めることによって、未来の社会と教育を切り開く生活指導運動」を、東北の人々と連帯して切り開いていきます。被災地の復興と回復、原発エネルギーからの離脱を含む平和で真に科学的な日本再建に向けた運動とこれからの生活指導運動は、根底では一体のものであり、日本の知性を集めた学術会議の提言の精神と、全国各地で日々子どもと向き合い、そのいのちの尊厳と一人ひとりの夢の実現に取り組む実践家の活動方針は、未来をめざす上で合致しています。

3・11大震災を境にわが国の教育と文化、学術研究さえも根本から問い直される中で、全生研の新しい「指標」の意義が一層輝きを増してくるのです。全国の皆さん。皆さんの地域、職場での地道な取り組みは、学術的な現状分析と改革の方向性に照らしてもけっしてまちがってはいないし、非力でもありません。憲法が保障する人間の生存権のなんであるかを、放射性物質の自然・生物・人体に及ぼす影響の何であるかを、じっくりと科学的に子どもたちと追究していきましょう。その学びの構築が、3・11以後に各地で立ち上がる教育実践と相まって地域のおとなにも受容され、大きな改革エネルギーとなっていくでしょう。

この歴史的転換点での機関誌発行は、「生活指導の実践と研究を充実・発展させることによって、平和と民主主義を築く国民・市民の形成」(指標)に努めていく際の理論的・実践的な知的広場としての意義を持ちます。それは、個性的で創造性のある実践報告と理論的分析がかみ合って活発な研究討議が繰り広げられる機関誌になるでしょう。あの『入門・第二版』(1971年)がなぜあれほど繰り返し読まれ、広がったのか。当時の情勢分析や集団づくりのニーズとかみ合う指導過程の論理がつらぬかれていたから、若い人もベテランも同書をぼろぼろになるまで読み返したのです。文章の難易よりも、もっと大事なことは、筋の通った、十分に応用の効く指導・支援論の展開こそが機関誌の成否の鍵だということです。

この激動期に、次なる針路を間違いなく見極めて進むには、ものごとの本質に迫る論理的な見方がどうしても必要です。また、原発問題を視野に入れた新しい平和教育の創造も重要な課題です。それらすべては、わたしたちが事実をクリアに認識するならば、学術的知見と必ず合致します。真理とはそういうものです。

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