- 特集 子どもの変化と集団づくり―発達障がいの子ども理解がもたらしたもの―
- 特集のことば
- 子どもの変化と集団づくり―発達障がいの子ども理解がもたらしたもの―
- /
- 実践
- <小学校> ユウジとマコ
- /
- <小学校> タカシと学級の子どもたちをつなぐ
- /
- <中学校> みんなで支え合える学級・学年をめざして
- /
- 分析
- 困難な課題を抱えた子どもの側からの学級づくり・学校づくりの再検討の視点
- /
- 論文
- ケアの視点と集団づくりの実践の構図―ケアし合う関係から集団の自治の地平へ―
- /
- 第2特集 学級・学年のまとめをどう構想するか
- <小学校>ユニット班と学習班の多層構造でひろげる
- /
- <小学校>卒業までのカウントダウン!〜三か月を子どもたちの力でどう過ごすか〜
- /
- <中学校>「学校文化」を大切にしたい
- /
- <中学校>地震・災害・科学技術をどう教えるか―大震災をきっかけとして―
- /
- <中学校>卒業期の生徒とともに
- /
- 解説論文
- 学級・学年の軌跡をたどる物語づくりのために〜五人の方の実践から思うこと〜
- /
- 今月のメッセージ
- 全生研で学んでいたから乗り切れた―苦闘の一ヶ月―
- /
- 私の授業づくり (第34回)
- 小学校〈道徳〉/「津波てんでんこ」―あなたはどうする?
- /
- 中学校〈道徳〉/仲間の見方を豊かにする
- /
- 実践の広場
- 子どもの生活・文化・居場所
- 家庭と共に育つ
- /
- 子どもをつなぐ活動・行事
- 迫力満点!児童会種目「棒取り合戦」
- /
- いきいき部活・クラブ
- だんだんくらぶ・子どもボランティア
- /
- 手をつなぐ―教師・親・地域の人々
- 関係のもつれを抱えた保護者と
- /
- 私と集団づくりとの出会い
- 集団嫌いを乗り越えるために
- /
- 案内板 集会・学習会のお知らせ
- 教育情報
- 大阪の、日本の、教育の未来はどうなるのか
- /
- 〜シンポジウム『大阪の教育「不安」の声』の報告〜
- 使ってみよう!実践グッズ (第9回)
- 「達成お祝いの会」が生みだす世界
- /
- 若者の広場 (第9回)
- 私の実践紹介します
- /
- 〜「時々、自分で自分が止められなくなるんよ」〜
- 地域生活指導へのアプローチ (第12回)
- 学び塾「猫の足あと」を家族で設立
- /
- 〜子どもの貧困にとりくむ中で始めた無料の学習支援〜
- 読書案内
- 『いのちの選択―今、考えたい脳死・臓器移植』
- /
- 追悼・鈴木和夫さん
- もう少し生きていっしょに仕事をしたかった
- /
- 読者の声
- 11月号を読んで
- シリーズ/各地の実践
- 京都
- /
- 〜きみは一人ぼっちじゃない!〜良太を学級の仲間として迎えるために〜〜
- 編集後記
- /
今月のメッセージ 全生研で学んでいたから乗り切れた―苦闘の一ヶ月―
京都・中学校 松原 憲治
九月半ばに十二年ぶりに急遽、担任となった。父の葬儀があけて翌日出勤すると、三年の担任が年休をとっていた。そのまま三ヶ月の長期休暇に入られた。葬儀関連で休んだ三日間、男子がいっきにコントロールしがたい状況を呈し、かなり混乱した場面が続いたようだった。担当している三年生は、小学校時代から有名な学年だった。六年時の後半はすべてのクラスが学級崩壊。中学入学後は何とか平穏を保っていたが、二年スキー修学旅行を苦労の末に終えた直後、教員二名の不祥事が報道され、学年の中心的役割をつとめていた彼らが学校から去っていった。生徒達の教師不信はいっきに高まった。
担任が二度も替わるという事態を経験した生徒も多数にのぼった。保護者の不信や不満もさらに高まるだろう。この状況を乗り切るために、教務主任の私が「最も課題のある生徒の担任になります」と手を挙げた。職員打ち合わせの席で、こう訴えた。「二年間、学年の行事の企画・運営や総合学習・行事もほとんど担当してきました。文化祭の学年劇でやんちゃグループを引き受けて劇指導を進めています。練習は本当に大変で、忍の一字でやってます。来週から体育祭と合唱コンの練習も始まります。曲も指揮者が誰かも知りません。前期末の全校生徒の成績処理と通知票の作成、週ごとの時間割も作成しなければなりません。新人戦の団体戦と個人戦もこれから始まります。その合間に父の法要が入ってきます(この二週間後に妻の母も亡くなった!)。みなさん、これをやり切れますか? 私はできません! このままではきっとつぶれます。……でも、やらなければ生徒も保護者も納得しません。今、自分に『目標は五十点』と言い聞かせています。普通の合格点は七十点です。でも、五十点しかできません。私を助けてください。陰口や批判はいりません。ありがとう、ご苦労さん、よく頑張ったね。そんな言葉が飛び交う職場にしましょう」。数日間は心がザワザワと落ち着かなかった。イライラはピークに達し、早朝覚醒が続いたので、心療内科で睡眠剤をもらい、飲むようにした。朝まで眠れるようになり、少し落ち着いた。
担任宣言の日がきた。「担任の先生は体調不良でしばらく休まれます。今日から私が担任をつとめます」。宣言するや否や、課題のKは「なんでやねん、本人がここに来て説明せえや。こんなんやってられるか!」と、教室を飛び出した。追いかけて話し込む。「あいつら、なんで担任が替わって、普通に授業が受けていられるねん!」。再び怒りが湧いてきたのか、教室に戻り、「おまえらなんでこんな状況で普通に授業受けていられるんや!」と声を荒げ、教卓を蹴る。校外へ飛び出したKの背中に、「『担任、何で急に休んだんやろ? このクラスどうなるんやろ?』そんな不安と不満は、みんなもお前も同じなんやで」と声をかけた。「それなら、話をさせて。みんなと話がしたい」とK。「わかった。次の時間もらって、とことん話し合おう」。
Kの思いを紹介し、みんなの気持ちを出し合おうとよびかけた。はじめは質問からポツリポツリと。一時間かけてようやく三分の一程度が発言でき、さらにもう一時間かけてみんなが発言できた。女子の大半は涙を流し、不安な気持ちや担任を心配する気持ちを訴えた。Kはみんなの発言を聞く中で納得できたのか、最後は半泣きで「勝手な思い込みや行動でみんなに迷惑をかけた。これから文化祭や体育祭ではリーダーになってがんばるし、一緒にやっていきたい」と発言した。残り時間、話し合いを終えての感想を自由に書かせた。その夜、二時間かけて全員の感想文をまとめ、翌日の朝、読書の時間に読みあった。
KやKをとりまく男子たちは、相変わらずトラブルを起こし続けた。が、そのたびにとことん彼らと話し合った。劇練習は『この活動で彼らとの人間関係を結び直す』と決意してつき合い続けた。原作の『戦争を知らない子どもたち』をやんちゃ軍団の個性にあうように書きかえ、京都弁にして演じやすくした。本番、見事に演じきったあと、ステージ上でKたちが感極まって次々と泣き出した。
この先、卒業までたくさんの課題にぶつかるだろう。だが、私はこう決意している。「全生研で学んだことのすべてを残り数ヶ月でやり切り、教師=人間への強い信頼感を生徒に獲得させるのだ」と。
-
- 明治図書