- 特集 遅れ発見→対応スキルのシステムをどう構築するか
- 遅れの発見のシステムをどのように構築するか
- 校内支援委員会設置が絶対条件
- /
- 校内特別支援教育システムを模索中
- /
- 小学1年生の場合:担任に課せられる使命は大きい!
- 教師1人1人の特別支援教育への理解を深め,それを学校としてのシステムの流れの中で機能させる
- /
- 発見・対応へのスタートは「基本的知識の共有化」
- /
- 職員全体で情報を共有化し,対策を考えるシステム
- /
- 就学時検診を遅れ発見の第一歩とする
- /
- 「観察」「問診」「検査」の遅れ発見システムで抽出すれば,職員間で共通理解ができる
- /
- 対応スキルの研修・検討システムをどのように構築するか
- 対応スキルの研修・検討システムの構築は,安定した授業システム,結果責任を果たす評価システムとリンクしてはじめて意味をもつ
- /
- 学校,保護者,専門機関の連携システムを作る
- /
- 模擬授業で対応スキルを共有する
- /
- 「授業の始まりをほめてスタートするにはどうすればよいか」を検討する
- /
- グレーゾーンの子どもたちに有効な対応スキルを『具体的に』『繰り返し』学ぶシステムを学校の複数の会合,場面でつくる
- /
- グレーゾーンの子どもに有効な対応スキルを学ぶ研修をどのように行っていますか
- /
- 「安心感」「安定感」を育むための対応スキルをどう共有するか
- /
- 保護者に働きかけるシステムをどのように構築するか
- 保護者に事態を見せ,校内システムを決める
- /
- 絶対やってはいけないこと2 是非やりたいこと4
- /
- 「保護者から」「学校から」の相談システムを作る
- /
- 保護者本位の「ストラテジー」と「タクティクス」を
- /
- 3つの内容を3段階で働きかける
- /
- どうして「あの時」もっとちゃんと教えてくれなかったんだよ!
- /
- 対応スキルを引き継ぐシステムをどのように構築するか
- 年度当初の丁寧な引き継ぎ,名前を覚えて始業式
- /
- 全職員でADHDに対する共通理解をはかり,個々のケースに対しては記録を残す
- /
- 引き継ぎの記録は映像がお勧め
- /
- 気になる子どもへの対応を若い同僚に語る!
- /
- 「スキル」はライブでなければ伝わらない
- /
- 校内模擬授業研修を大いに活用する
- /
- ミニ特集 バークレー先生の原則は10?それとも12?
- バークレー氏の「ADHD指導の原則」は「14」が正しい
- /
- 現場での実践から導かれた原則は普遍性を持つ
- /
- 12の原則には優しさの思想が見える
- /
- より素早く,より頻繁なフィードバックを授業開始15秒以内で与える
- /
- 常に「子どもの事実」から原則を照らし合わせる
- /
- 予想して手だてを考えておく
- /
- すべての教師に必要な原理原則
- /
- セルフエスティームを高める 激励の法則
- /
- 周りの子どもの行動を繰り返しほめることで努力目標を提示する
- /
- 「授業の原理原則十箇条」と通ずるバークレー博士の「10の方針」
- /
- バークレー博士「10の方針」から学んだこと
- /
- 将来子どもが自立していくために必要なのは,親の視点に立った「10の原則」
- /
- ADHD児が変わった! 向山型指導法プラス「動機付けを明確に表す」シール評価表
- /
- TOSSで学べば,バークレー氏の12の原則は具体的に理解できる
- /
- 10の方針を具体的に使う
- /
- グラビア
- 新生TOSS特別支援セミナー in横浜 ほか
- /
- イラストで学ぶ特別支援教育のキーワード (第1回)
- 自己尊厳感(セルフエスティーム)
- /・
- 向山一門が見た向山先生の特別支援教育の思想 (第1回)
- /
- 教育の新課題と特別支援教育
- 教師本来の仕事に全力を!
- /
- 巻頭言
- 辛いと思う時が教師修業のチャンスの時。万策尽きるまで,様々な手立てを講じよう
- /
- 特別支援教育で学校は変わる (第1回)
- 新生TOSS特別支援教育は「人差し指」から始まる
- /
- 特別支援教育と向山型国語の原理・原則 (第16回)
- 授業の「主導権」を子どもに渡さない「対応」がドラマを生んだ(完)
- /
- 伴一孝の特別支援教育だより (第1回)
- 自分が立っている処で何をやるか
- /
- 大森修の一刀両断 教育再生にもの申す (第1回)
- 教育実践の豊かさを示す事例もある
- /
- 吉田教務主任からみた特別支援教育 (第2回)
- 輪読会を通して,現状改善のための研修を行う
- /
- 誌上QAコーナー こんな時どうしますか
- 発達障害が複数在席するクラスには,どんなルールが有効ですか
- /
- 教育は格闘技だ―フリースクールの実践 (第6回)
- B君が「さようなら」といえるまでC
- /
- 〜「また明日ね」と声をかけられる毎日〜
- LD/ADHD・ASの子を伸ばす指導のポイント (第9回)
- 環境対話法を活用したソーシャルスキルの獲得
- /
- ママがする自閉症児の家庭療育HACプログラム (第1回)
- HACプログラムの考え方,課題,効果
- /
- 教師のための応用行動分析入門 (第1回)
- マットの後ろ回り実践と「刺激プロンプト」
- /
- 養護学校・特殊学級コーナー
- コーナー担当
- /
- 養護学校の実践
- /
- 特殊学級の実践
- /
- 保護者と教師の連携で作る特別支援教育 (第2回)
- 障害を理解する,親へのアプローチ
- /
- 読者のページ
- /
- 編集後記
- /
- TOSS特別支援教育イベント情報
- /
- 酒井式描画法で授業する!
- クレパス・スクラッチ「猫のダンス」の描かせ方
- /
巻頭言
辛いと思う時が教師修業のチャンスの時。万策尽きるまで,様々な手立てを講じよう
栃木県市貝町立赤羽小学校 松ア 力
1 毎年訪れる修業の場
学級をまとめ,子どもたちをうまく統率していきたいと願うのは,教師として当たり前のことであろう。知的で,楽しく,明るい学級経営にだれもが憧れる。
年度が替わる頃,教師にとっての最大関心事は,どのクラスを担任するかということである。問題傾向のある子を共通理解するために行われる事例研究会で,常に名前が挙がっている子は,なるべく担任したくないと考える人は多いのではないか。特に発達障害の子どもたちは,どのように対応していったらよいか分からないことから,次年度の担任希望の時は,その子のいる学年は希望をしないという人もいる。
指導困難なクラスを受け持つと,「昔は,この方法で通用したのに,どうしてこの子たちは言うことを聞かないんだ」と悩む教師も多い。そのような話を聞くからこそ,なおさら敬遠したいと思うのだろう。
ここ数年を振り返ってみると,わたしのクラスには,毎年,発達障害と診断をされている子がいた。診断はされていなくても,それに近いと思う行動をする子たちは,その数倍もいた。その子たちは,発達障害の子が何か問題行動を起こすと,連鎖反応を示し,一緒になって教室を引っかき回そうとする。自分を奮い立たせるしかなかったが,正直辛いと思う時もあった。
そのような時,向山洋一氏の教え方教室に参加した。そして「教師は,万策尽きたと言うが,行っているのは1つか2つ。本当に万策も行っているのか」という言葉を聞いた。「自分はそんなにやっていない。やることは,たくさんある」と自分が恥ずかしくなった。
しかし,現実に何をするか具体策がなければ,勇気を振り絞ることはできない。そこで,多くの本を読み,人の話を聞いて勉強した。
幸い,自閉症を専門に研究した仲間がいたので,話を聞いた。話の内容は個別の事例であるから,そこから原則を見つけ出し,自分のクラスに応用しなくてはならない。それでも,情報が集まれば,「明日は,この指導法を行ってみよう」と具体策が見つかった。それがうれしかった。学校へ行って,その指導法を試してみることが楽しみになった。
2 もがき苦しんだときに訪れたチャンス
A君は,過去受け持ったどの子とも違っていた。自分の思い通りにならないときは,すぐに暴力に訴える。体の小さい子に対してはキックをし,大きな子に対しては後ろから砂をかけて逃げ回る。回りから「お前が悪い」と指摘されてしまうと,床に頭をガンガンと打ちつけ自分を責める。授業時間は,机の上に足を乗せたり,自分が一番に指されないと怒鳴り声をあげたり,毎日何らかのトラブルが生じ,その対応に追われていた。
時々,机に突っ伏したまま,延々と落書きをしているときがあった。その時間は,授業をスムーズに進められるので,ほっとしている自分がいた。しかし,心の中では,「こんな状態で授業を進めることに喜びを感じているのは,教師ではない」という後ろめたさがついて回っていた。やるべきことは,A君を起こして,授業の中にぐいと引きこみ,基礎的な学力を高めていくことだ。それこそが教師の仕事であろう。自分自身の授業技量が足りないから,A君の学力を高められない。申し訳ないという思いばかりだった。
「自分はどうしたらよいのか」ということを常に考えていると,チャンスは訪れるものだ。ある日,隣のクラスの子が算数の教科書を借りに教室に入ってきた。親切な子が,すぐに机から教科書を出しその子に差し出した。その子がドアを閉めて教室から出ていくと,A君は突然目を覚ましたように起き出し「何で俺の教科書を貸さねぇんだよ」と怒鳴りだした。A君は,「何でも一番にしろ」「何でも俺の物を使え」と,常に「俺が,俺が」という子だった。いつもなら,その怒鳴り声に手を焼くのであるが,その時に「A君のこだわりを利用すればいいのだ」と閃いた。
早速,ぼうっとしているA君の前に立ち,大きな声で,「誰か教科書を貸してくれないかな」と言った。A君は,ハッと気付き,机の中から教科書を出し差し出した。「ありがとう。あ,先生持っていた。ごめんね」ととぼけながら教科書を返した。すかさず「先生問題です」と問題を出した。答えが分からない時は,A君のノートに赤鉛筆で答えを書いた。A君を指名して「すごい。よく分かった」とほめた。ほめられることで,A君は授業に入り込み,「はい,はい」と何度も手を挙げるようになった。それ以降,彼はぼうっとすることはなかった。
黒板も,一番端を彼専用のスペースにして,いつもそこに書かせた。そこに書かせれば,「では,端に書いたA君から読んで」といつも一番初めに発表させることができた。こんな簡単な工夫で,A君は授業に取り組み,成績を向上させていった。
3 万策尽きるまで
この経験は,トラブルを起こしてから対処するという消極的な対応から,先に手を打つ積極的な対応へと,私を変化させてくれた。賞状伝達式の時,A君は必ず賞状をもらった子を突き飛ばしていた。式が行われる直前に,簡単な賞状を作ってA君に渡してみた。わずかこれだけのことで,A君は,式の間,手を振るわせながらも,必死で自分を押さえているようだった。
それからというもの,「今日はどんな手立てをしようか」と考えることが楽しくなった。彼は日々成長していったのだ。「万策尽きるまで」この言葉が,私を救ってくれた。
-
- 明治図書