- 特集 発達障害児とみんなが友達になった学級物語
- 授業を通して仲のいい学級ができた
- 友達とのかかわりの中で,そのよさをうまく引き出す
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- 得意分野を生かしてプラスイメージに変える
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- 数ミリの成長をほめてほめてほめまくる
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- 逆転現象が変えた
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- 障害の正しい理解こそが,真の意味で仲のいい学級,そして学校を創ることができる,決して逃げてはいけない
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- カミングアウトで理解を深めた
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- 担任が,その子をいとおしみ大事にすることが学級づくりの要である
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- 「まずは学級集団をつくる」という優先順位を守ること そして,やはり助けられたのは,なんと言ってもTOSS教材!
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- 子どもの生きにくさに寄り添う
- 討論の授業で他人の意見を受け入れることを学んだA君
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- 係活動や行事を通して仲のいい学級ができた
- イベントは,ほめることがたくさんある。ほめる目を鍛えることが大切である
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- トカゲ好きな自分の特技がクラスのために役立った
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- 会社活動でみんなが楽しめる活動を計画・実行することで,クラスのみんなとつながりができる
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- トラブルを通して考えさせる
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- 行事をきっかけに全校児童と仲よしになる
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- やり遂げたいというこだわりが学級を盛り上げる
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- 向山型指導の延長線上にあった忘年会でのA君
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- 係活動は特別支援を要する子の格好の活躍の場
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- 4つの指導で,腹の底からの実感ができた
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- 遊びやイベントを通して仲のいい学級ができた
- 五色百人一首で「負けを受け入れるようになった」事例100募集
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- 子ども集団の成長には裏文化も必要だ
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- チャレンジランキングは,人とのつながりをつくり,固定イメージを変えられた
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- 五色百人一首が生み出した教室のドラマ「クラスの人間関係に変化が生じた!」
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- 特別支援を要する子どもがクラスにとけ込む4つの遊び・イベント
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- 五色百人一首は「朝の会」で行うのが効果的!
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- 「好きなこと」が,奇跡を生む
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- 集団の流れの中によさが発揮できる場をつくれ
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- 学級づくりの中心アイテム「五色百人一首」を通して,どの子も仲のいい学級を創る
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- ミニ特集 熱中報告 ペーパーチャレラン
- ペーパーチャレランを+αで活用する ペーパーチャレランを使って,望ましい行動を入れる
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- ペーパーチャレランに熱中するのは,発散的思考が意欲を引き出すからだと考える
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- こだわりが強いからこそ,熱中度も高い!?
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- コミュニケーション能力の向上を保証するペーパーチャレラン
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- 「毛虫チャレラン」が優れたシステムの価値を教えてくれた
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- ルールがきちんと分かるから熱中できる
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- このような子どもたちにこそ,ペーパーチャレラン!
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- 特別支援の子に対する心配は杞憂だった
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- たった1種類のゲームが人を変える
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- 子どもが熱中! 夢の教材ペーパーチャレラン
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- その子の特性にあったペーパーチャレランを選ぶ
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- 子どもTOSSデーで初めて会った子でも交流が生まれた
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- 下級生に説明するまでに成長した!
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- ペーパーチャレランが,子どもに自信をつけ,持続力を育てる
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- グラビア
- 第3回 新生特別支援セミナー ほか
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- イラストで学ぶ特別支援教育のキーワード (第5回)
- 遠足作文における「局面の限定」と「情報の切り出し」
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- 向山一門が見た向山先生の特別支援教育の思想 (第5回)
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- 教育の新課題と特別支援教育
- 勉強不足の教師は,子どもの責任にする
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- 巻頭言
- 子どもたちに「障害」についてどのように理解させるのか
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- 特別支援教育で学校は変わる (第5回)
- 特別支援教育のめざすものは何かを問う
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- 〜あるショッキングな事件より〜
- 伴一孝の特別支援教育だより (第5回)
- 「子どもの力」は「教師の実力」が規定する
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- 大森修の一刀両断 教育再生にもの申す (第5回)
- 「研修」花盛りで,現場で働く人が散る無残!
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- 吉田教頭からみた特別支援教育 (第6回)
- 否定的な言葉は使わない
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- 自閉症圏の子どもたちの対人関係能力を伸ばす試み (第1回)
- 対人関係能力の発達に特化したかかわり
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- 教育は格闘技だ―フリースクールの実践 (第10回)
- 集団を統率し,成功体験をもたせる
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- LD/ADHD・ASの子を伸ばす指導のポイント (第13回)
- 発達障害児がいるクラスの人間関係づくり クラスは社会! お互いを敵と感じない,抑制の効く脳を育てる!!
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- ママがする自閉症児の家庭療育HACプログラム (第5回)
- 「課題表記録」と「評価」
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- 教師のための応用行動分析入門 (第5回)
- 手がかりツール
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- 誌上QAコーナー こんな時どうしますか
- 基本の対応を学び,それを状況によって変化させよ
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- 特別支援学校・特別支援学級コーナー
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- 論文ランキング
- 19号/具体的なドラマが綴られた論文が好評!
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- 編集後記
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- TOSS特別支援教育イベント情報
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- 酒井式描画法で授業する!
- 天の川が美しい『よだかの星』
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巻頭言
子どもたちに「障害」についてどのように理解させるのか
五十嵐勝義
富山県立となみ養護学校砺波学園分校
1 障害について,いつどのように話すのか
1977年,向山洋一氏は5年生のクラスを担任した。そのクラスに情緒障害の吉岡君(仮名)がいた。彼の障害について,クラスの子どもに説明する場面が,向山氏の記録にある。
1学期が始まって間もない4月18日,給食のとき,牛乳パックをしまうことでトラブルが発生する。きれいにたたんだ牛乳パックを吉岡君が片付け忘れ,他人のだと言い張ったのである。このとき向山氏は,吉岡君が瞬間の記憶がなかったことを思い出し,(昼休みに,たぶん電話をして)母親と話をしている。瞬間の(記憶がなくなる)発作について母親に覚えがあることが分かり,向山氏は5校時に全員を集め,次のように話をしている。
吉岡君はうそをついているのではありません。一時的に電流が切れるのです。小さな障害です。ある種の左きき,近視などと同じです。だれもこうした障害をかかえています…。
このような説明を,子どもたちはシーンとして聞いていた。その顔には安堵の表情が浮かんでいたという。吉岡君も周りの子どもも,どちらも正しいという向山氏の判断であった。
ここで大事なことは二つある。一つは,吉岡君の障害の特性を分かりやすく伝えることである。もう一つは,吉岡君の障害について周りの子どもに伝えることを,事前に母親に聞いておくことである。(また,そのことを校長にも話してある。)
障害の特性を伝えるには,このように,子どもに話す内容の吟味と,事前に保護者に言っておくことが必要である。伝えてほしくない保護者もいるからである。
障害のある同級生などの理解についての指導を行う際は,幼児児童生徒の発達段階や,障害のある幼児児童生徒のプライバシー等に十分配慮する必要がある。
文部科学省「特別支援教育の推進について(通知)」(平成19年4月)で示された内容である。向山氏は,この通知の30年前からすでに実践していたのである。
2 「障害」についての見方を変える
障害の理解についての授業実践の多くは,発達障害の子どもが苦手なこと,誤解されやすい行動に焦点を当てた内容である。
向山氏はあるセミナーで,障害を理解するときに,そのことだけでよいのかという発言をしている。これは哲学,考え方の問題であると前置きをした上で,次のように述べた。
アスペルガーの子どもたちがやっていることは困ったこともあるが,それが人類にとって本当に困ったことなのかどうなのかは,なかなか言えない要素がある。(文責:五十嵐)
アスペルガーの人たちがもっている重要な要素に「選択的注意ができない(情報を選択することができない)」ということがある。大変なこともあるが,そのことがあるからこそアスペルガーの何人かは,人類史に残るような天才的な発明・発見を行うことができたとも言える。
障害の特質は困ったことだけではなく,人類を前進させてきたかもしれないということを,ぜひとも授業化したいと考えた。
3 自閉症理解 私の授業
私が平成20年6月に大阪で行った授業を紹介する。以下,私の説明の抜粋である。
(1) 東京六本木。ビルの屋上から見た360度パノラマの街並みです。たくさんの建物が見えます。今見た街並みを記憶だけで描いてください,と言って描ける人?(挙手なし)
それができる人がいるんです。スティーヴン・ウィルシャー。イギリス人の画家です。
<スティーヴンが記憶だけで描いた絵>
(2) スティーヴンには生まれつき障害があります。自閉症です。彼は10歳のときに,すでに大人顔負けの絵を描くことができました。でも,人の顔をじいっと見つめるなど,小さな子どもができることができませんでした。
(3) 自閉症の子どもはパニックになることがあります。なぜそんなふうになるのでしょうか。その理由を考える手掛かりがスティーヴンの能力にあります。「写真のように覚える」自閉症の人に見られる能力です。
写真のように覚えるというのは,丸ごと頭に入ってくるということです。でも私たちは選んで頭に入れています。<実験:省略>
このように私たちは注目すべきことを見つけると,残りのことは気にならなくなるのです。でも,自閉症の人はこのような「選択的注意」がうまくできません。それは視覚だけでなく,他の感覚でも同様です。
自閉症の子どもがパニックになるのは,選択的注意ができず,どの感覚からも情報が入ってくることが挙げられます。押し寄せる情報へのバリアーを自ら作り出しているのです。
(4) 選択的注意ができないことはマイナス面でとらえがちです。しかし,情報を丸ごと頭に入れられる能力があるからこそ,スティーヴンのように天才的な絵が描けたり,アインシュタインのように,人類の歴史に残るような発見発明が可能になったとも言えます。
人類を前進させてきたのは,今まで障害と思われてきたものの中にあるのかもしれません。(以上 指導案より抜粋)
障害の特性だけではなく,これまで障害と思っていたことが人類の前進に寄与していることを知らせる。そのことで障害に対する見方を変えたいのである。
引用文献:『向山洋一は障害児教育にどう取り組んだか』向山洋一(明治図書)
『発達障害の子どもたち』杉山登志郎(講談社)
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