- 特集 発達障害児のワーキングメモリーに配慮し鍛える授業
- TOSS教材にみるワーキングメモリー
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- 国語におけるワーキングメモリー
- 向山型暗唱指導でワーキングメモリーを鍛えるポイント
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- 「五色百人一首」「うつしまるくん」「暗唱」
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- 「向山型国語でワーキングメモリー」を強化する
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- 発達障害の子も安心して学習できる環境を保障する
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- 教師が学ぶほかに子どもを動かす方法はない
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- 岡惠子氏の音読指導をワーキングメモリーという観点で分析する
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- 算数におけるワーキングメモリー
- 向山型は「ワーキングメモリー理論」に合致するから分かりやすい
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- 「6年平均」谷和樹氏実践の分析
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- 「一時に一事」の原則で,すべての子どもが図形を書けるようになる
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- ヨットとエレベーターで「垂直・平行」の作図を記憶させる
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- 向山型算数指導法ならば,シンプルな情報を効果的に脳に入力できる
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- 百玉そろばん・フラッシュカードでワーキングメモリーを鍛える
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- 英語におけるワーキングメモリー
- ワーキングメモリーが少ない子どもにも成功体験を与えるTOSS型英会話指導
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- 小さな成功体験を繰り返す
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- 実践すれば実感できる すべての子どもに対応しているTOSS型英会話
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- 楽しく,1つずつ負荷をかけ,音楽を通してワーキングメモリーを鍛える授業
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- 低刺激,低刺激,低刺激
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- 理科は暗記ではない 記憶は最小限に限定
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- 褒めることが最善手
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- 向山氏の授業はなぜ子どもが熱中するのか
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- 社会におけるワーキングメモリー
- ワーキングメモリーを強化する社会科教材や指導を開発する
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- 「先生の体育,分かりやすい」を目指そう
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- ミニ特集 教室で育てるソーシャルスキル
- うまくいった体験をさせない限り望ましい行動は入らない
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- ソーシャルスキルの土台を育てる 姿勢や表情の育て方
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- 集団教育力で「はい」と返事をさせる
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- 通常学級との交流は社会を知る大切な機会である
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- 4つの原則を用いソーシャルスキルを定着させる
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- 教育の新課題と特別支援教育
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- ワーキングメモリーの代表的エピソードから考える。何を学ばなければならないのか
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巻頭言
ワーキングメモリーの代表的エピソードから考える。何を学ばなければならないのか
岡山県久米南町立弓削小学校 甲本卓司
エピソード
向山洋一氏は,講演で次のことを繰り返す。
「算数の教科書を出して,25ページの3番をやりなさい」と先生が言った瞬間に「先生,どこやるの」と聞く子がいる。
このような経験のある先生は,手を挙げてください。
東京での講演会で繰り返し言われる。大阪でも福岡でも北海道でもだ。
私は,韓国での向山講演会に同席した。その韓国でも同じように聞かれた。
聞いてその結果は,日本全国,いや韓国でもその反応は同じだった。
会場に参加した教師は,天井を突き刺すように手を挙げた。みな同じような体験をしているのだ。
向山氏は,なぜ何度も同じ内容のことを発信し続けるのだろうか。このことを考えてみる必要がある。
まず,第一にだれもが経験をしていること。
そして,短期記憶,ワーキングメモリーが不足しているという現象の代表的なエピソードであること。そして,この原因が教師側に問題があることなどが極めて分かりやすいからだろう。
多くの教師は,善意で特別支援の子に「悪い」ことをしている。
この場面でもそうだ。聞き返す子どもに,「何回言ったら分かるんだ」と叱責する。教師が悪いなんてひとつも思っていない。
しかし,勉強した教師なら分かる。特別支援を要する子が,聞き返したなら「自分の言い方が悪かった」と思えるはずだ。
一つ一つ分解をし,確認をしてやれば解決する。
私は,このことを,
発見の原則
と名付けた。大したことではない。子どもの行為には意味があり,その一つ一つを発見し考えていこうというものだ。発見することでその子の苦手なことが分かっていく。個に対応するのは発見を続けてデータベース化しなければならない。
向山氏の例を分けてみる。
「教科書を出しなさい」
まず,教科書を出させる。教室には,教科書すら出せないでいる子がいる。
次に,「教科書の25ページを出しなさい」
ここで,確認をする。「出せましたか。すごいなあ,はやく出せたね」と褒める。
確認するとは,叱ることではない。褒めることなのだ。
「3番に指を置いてご覧なさい」
指を置かせることで教室全体に目を向けることができる。
「その問題をノートにします」
分けることでだれもができる。また,特別支援教育を勉強した教師ならすぐに分かる。
一時に一事の原則
である。出すたびに褒めることを続けると,
奨励の原則
を使うことになる。
褒められることで,ドーパミンが分泌され「やる気」になる。授業開始の指示で,やる気になるか,叱責されやる気を失うかは大きな問題だと思う。子どもをその気にさせる原則の組み合わせなのだ。
翔和学園の伊藤氏は,うまくいった指導,うまくいかなかった指導を向山氏が示した「授業の原則10カ条」にあわせて検証するという。まさにそうである。すべての行為に意味があるのだ。
運動会の作文
運動会の作文を書かせる。そのときに「運動会の作文を書きなさい」と指示を出すと「書けない」子が続出する。運動会は,朝から始まり,1日続く。どこも運動会なのだ。
次のように指導した。
一番,ドキドキしたところから書きなさい。わくわくしたところ。一番悔しかったところから書きなさい。
そして,次の指示を付け加えた。
ノートに書き出しの1文を書いてください。合格した人から書き始めます。
次々と子どもたちはノートを持ってくる。が,なかなか合格しない。「私にとって最後の運動会で……」そういったありふれた書き出しが続く。
そのとき,ADHDの健ちゃんが次の文を書いて持ってきた。
「ぼくは,あまり弁当が食べられなかった」
さあ,どうだろう。私は次のように言った。
10点満点の12点。合格。この1文でどうして食べられなかったんだろう。緊張したのかな。走りすぎたのだろうかな。などいろいろと読者の想像を豊かにする。1文を読んで次も読みたいと思えるような書き出しがいいんだ。
健ちゃんは,大の作文嫌いである。その健ちゃんが授業の最初で気持ちよくなり,1時間で5枚の原稿用紙を埋めた。場面を限定し健ちゃんは作文が書けたわけである。
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- 明治図書