- 特集 新しい環境へのよりよい移行のために
- 特集について
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- 提言
- 将来の自立・社会参加をめざし、一貫性のある支援を!
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- 事例
- 保育園・幼稚園→小学校
- 「1年生になるよ!」を支える幼児期から学齢期への移行
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- キーパーソンは、保護者
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- 小学校→保育園・幼稚園
- 小学校・特殊学級へのスムーズな移行をめざして
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- 小→中
- 校種をこえて、子どもの主体的な学びを支えよう
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- 環境変化に敏感なA児の指導
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- 社会資源を生かした適切な支援をめざして
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- 高→中
- 受け入れた高校でやるべきことは
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- 学校教育→社会参加(就労)
- 個に応じた社会参加をめざして
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- 事例についての解説とコメント
- 「環境移行」に伴う困難に対するさまざまな対処の形
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- Essay
- 良いオピニオンに
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- 子どものページ
- 「ほっちくんのたまご」
- 親の会ニュース (第18回)
- 北海道学習障害児・者親の会「クローバー」/北九州LD親の会「すばる」
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- 医療との連携 (第18回)
- 情報共有を通した教育と医療の連携A
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- 〜連携の第2のタイプ〜教育と医療の双方向の連携〜〜
- 実践の小箱/臨床学校現場から (第17回)
- ネットワークを点と点から、一本の線へ
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- 情報最前線/行政や海外の動向は (第18回)
- 中教審が答申を取りまとめる
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- 〜「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」〜
- 最近のアメリカLD事情 (第2回)
- 新しいLDの判定モデルによってみえてきた壮大なテーマ
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- 教室で使えるやさしい行動分析 (第2回)
- 望ましい行動を育てる・増やす方法
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- 巡回相談員から先生へ (第2回)
- 巡回相談で感じたいくつかのこと
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- 発達障害の子がいる学級経営のコツ (第2回)
- できるところから始める特別支援教育
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- 一度は手にしたい本
- 『ソーシャルストーリーブック』書き方と文例/『特別支援教育を支える行動コンサルテーション』
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- 編集後記
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特集について
新しい環境へのよりよい移行のために
東京学芸大学教授/松村茂治
「今後の特別支援教育の在り方について」(平成15年3月)の中で提言された「個別の教育支援計画」は,就学前から卒業後までを視野に入れた支援計画です。そこでは,障害のある子を生涯にわたって支援するということ,つまり支援の連続性が強調されています。
ところで,学校心理学のテキストの中に,いささか気になる記述を見つけました。
「入学や進級などで新しい環境に入ったとき,それまで問題とは見なされてこなかった行動が問題視されることがある。新しい環境にいる教師は,子どもに対してそれまでとは違った目標を提示することがあるし,発達的に見て何が適切かということに関して,それまでとは違った態度をとることがある。子どもがそれまで過ごしてきた所に『新しい大人』が入ってきたときも同様である。以前には大目に見られていた行動を,その新しい大人は,問題だと見なすかも知れない……」
家庭から保育園・幼稚園,保育園・幼稚園から小学校,小学校から中学校,中学校から高等学校・大学そして一般社会へ……と,子どもたちは次々に新しい環境の中で生活することが求められています。それまでの環境の中では有効だったやり方,認められていた態度や振る舞いが,新しい環境では役に立たなくなったり,批判的な目で見られたりすることがしばしばあります。
確かに,それまで当たり前だったことがら,有効だったやり方が通用しなくなったとき,努力し,工夫をして新しい適切なやり方を編み出すことが,成長であり,発達なのだとする考え方もあります。
しかし,環境の移行にともなって生じる戸惑いや困難は,子どもたちの努力によってのみ克服すべきものなのでしょうか。これらは,ときに子どもたちに大きな負担や超えがたい障壁となる場合があるのです。
新年度が始まり,子どもたちが新しい環境に飛び込んできました。大人にとっても子どもにとっても,新しい環境は不安に満ちた場でもあります。スムースな環境移行を促進し,新しい環境を希望に満ちた場にするためには,それまで過ごしてきた環境と新しい環境との間に連続性をもたせることが必要で,それには,環境と環境の間をつなぐための大人たちの努力が求められているのです。
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