- はじめに
- 第1章 アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校国語科の授業づくり
- 1 アクティブ・ラーニングとは何か
- 2 中学校国語科におけるアクティブ・ラーニングの位置づけ
- 3 本書におけるアクティブ・ラーニングのとらえ
- 第2章 アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校国語科の授業プラン
- 録音・録画再生機器を活用しよう
- (1年/話すこと・聞くこと/「スピーチ名人になろう」「おすすめの本を紹介しよう」)
- 感じたことを文章にしよう
- (1年/書くこと/「鑑賞文を書こう」)
- インタビューで登場人物の心情に迫ろう
- (1年/読むこと/文学的な文章「少年の日の思い出」)
- 筆者の論証に納得するか
- (1年/読むこと/説明的な文章@「オオカミを見る目」)
- 筆者の説明の工夫とその効果を検討しながら読もう
- (1年/読むこと/説明的な文章A「ちょっと立ち止まって」)
- 作者がすばらしいと思っているのは,天上の世界か地上の世界か
- (1年/古典/「竹取物語」)
- 話合いの方向を考えて発言しよう
- (2年/話すこと・聞くこと/「合意形成を図る話合い(自主教材)」)
- 質問に答えて書こう
- (2年/書くこと/「質問に答えて書こう(学テアイデア例)」)
- セリヌンティウスがメロスを疑ったのはいつか
- (2年/読むこと/文学的な文章@「走れメロス」)
- 「字のない葉書」は,どのくらい準備されたか
- (2年/読むこと/文学的な文章A「字のない葉書」)
- 筆者の論証の仕方に納得するか
- (2年/読むこと/説明的な文章「モアイは語る――地球の未来」)
- 兼好法師のものの見方・考え方から兼好像に迫っていこう
- (2年/古典/「徒然草・神無月のころ」)
- 「図書館とインターネット」ディベートをしよう
- (3年/話すこと・聞くこと/「ネット時代のコペルニクス」)
- 論理の展開を工夫して書こう
- (3年/書くこと/「論理の展開を工夫して書こう」)
- 最後の2行で作者は悲しんでいるのか
- (3年/読むこと/文学的な文章@「レモン哀歌」)
- ルロイ修道士の日記を書いてみよう
- (3年/読むこと/文学的な文章A「握手」)
- フリップにした「本論」で考えよう
- (3年/読むこと/説明的な文章「月の起源を探る」)
- 芭蕉が松島の句を載せなかったのはなぜか
- (3年/古典/「おくのほそ道」)
- 第3章 アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校国語科の授業の評価
- 1 アクティブ・ラーニングにおける評価
はじめに
ほぼ10年おきになされる学習指導要領の改訂作業。平成20年版のキーワードの1つは,「言語活動の充実」でした。そして,次は本書の書名にある「アクティブ・ラーニング」です。
次々と新しい用語が出され,それに過剰なまでに反応し,時間の経過とともにいつの間にか死語のような扱いになっている。そうしたことを繰り返すのが教育界の特質でもあります。もちろん社会や子どもたちの変化,時代の要請もあります。それに対応した教育を求め,推進していくことは必要です。しかし,何が本当に大事なことか,大切な力か,本質を見定めて実践に反映させないと,腰の据わらない表面的な取り組みに終わります。
アクティブ・ラーニングは,教師の説明を聞くだけの静的な学習から脱却するための方法論ではあります。ですが,それはただ活動的であればよいというものではありません。深く思考し,適切に判断し,確かに豊かに表現する力に培う学習活動であることが要求されます。
国語科は,そうしたことを可能にするための中枢を担う教科です。人間はことばで対象を認識し,それについて思いを巡らし,考えます。そして,そうしてとらえた事柄をことばで表現し,他者に伝えます。どのような学習活動を設定しようが,ことばを用いないでそれらを成し遂げることはできません。国語科の授業は,ことばでよく思い,よく考え,よく表現することを抜きにしてはあり得ない。改めてそう強く自覚する必要があります。
アクティブ・ラーニングの発想そのものは,中学校の現場での実践でいうと,何も目新しいものではありません。しかし,それがどれくらい実現されてきたかというと,心許なさはつきまといます。せっかくの機会です。アクティブ・ラーニングが主張する内容を生かした授業づくりに取り組むことによって,生徒にことばのもつおもしろさ,奥深さに気づかせ,ことばで表現することの意義や価値を実感させたいと思います。
アクティブ・ラーニングを取り入れる際にもう1つ心しておきたいことは,生徒たちに仲間と協働して学ぶことの楽しさ,おもしろさ,豊かさを実感させてやりたいということです。学校で学ぶことの意義,よいところは,見方や感じ方,考え方や発想の異なるたくさんの他者との学び合いがある点です。
1人で考えることには限界があります。けれども自分と他者,互いに刺激し影響し合いながら,ともに成長していく。力を合わせて,自分でも気づかなかった新たな潜在的な力を引き出し合っていく。こうした学びを経験した生徒たちは,生涯にわたって他者と学び合い,高め合う生活スタイルを大事にしていくようになることが期待できます。
本書には,各学年の3領域1事項の実践18編を収録しました。どの実践も,生徒たちの学ぶ意欲を喚起することに努めています。そして,よく思考,判断し,多様に表現することを求める授業づくりになっています。アクティブ・ラーニングの実践としての不十分さ,未熟さを自覚しながらも,果敢に挑戦した実践です。
課題解決的な授業の中でこそアクティブ・ラーニングの真髄は発揮されるのでしょう。しかし,そうでない授業の中でもアクティブ・ラーニングの考え方に通じる授業づくりのポイントは生かされます。いわゆる「アクティブ・ラーニング的」な授業づくり,実践であっても,恐れず教室で試みていく中で,これぞアクティブ・ラーニングという授業にたどり着くものなのでしょう。実践を確かに,そして豊かにするとは,そういう営みであると考えます。
本書に示した授業づくりの考え方や実践のありようを基に,読者がそれぞれなりに解釈いただいて,ことばの力がつく,楽しい国語科授業の開発に取り組んでいただけることを願っています。
2016年6月 /吉川 芳則
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- 明治図書
- 具体的ですぐに活用できそう。2016/8/29nabezoh
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