- 特集 ホントに必要な家庭教育の基本型―脳の臨界期 後では取り戻せない教育の中味とは―
- ホントに必要な家庭教育の基本型
- 教育には、最も適した時期があり、最後のチャンスだという臨界期(年)がある
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- 臨界期を知る大切さ
- 脳科学からみた臨界期:臨界期は『最重要期』
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- 十歳の壁
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- 部分ではなく全体でとらえることが大切
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- 幼稚園の園長が証言する臨界期を意識した指導
- 幼稚園の現場から実証的に考える
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- 本を読んで、八時までに寝かせよう
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- 鉄は熱いうちに打て
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- 早期教育で気をつけること、はずしてはいけないこと
- あせらない! あきらめない! 楽しく繰り返すこと
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- 医師が証言する『手遅れ』にならないための注意点
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- わが子に気をつけていたこと
- 就寝は9時まで・徹底した寝る前の歯磨き・ゲームは一日15分間
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- 読みきかせと善悪の区別
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- 気持ちを受け入れてやること。それは「の」で始まる
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- 善悪を教え、TVを見せず読み聞かせを
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- シングルエイジを意識した子育て
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- ことわざが教える乳幼児期の教育
- 「負う子に教えられ」ることのたのしさ
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- かわいい子には旅をさせよ
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- 愛されてこそ関わる力が
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- 教育のことわざは、脳科学の成果に適っていた
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- 「三つ子の魂百まで」が教えてくれるもの
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- ミニ特集 子どもの作文に見る家庭教育
- 子どもへの対応は、教師の力量、親の力量が問われるのです
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- 「どうしたらこんな優しい子が育つのかしら」と感心させられるほど素敵なお子さんがいます。
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- イラストで見る家庭教育のポイント
- あいさつをしよう
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- 家庭教育のポイント
- 明るい挨拶、感謝の声かけができる子は人気があり、人望もある子に育つ
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- 編集前記
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- つぶやきに見る子どもの成長
- 母親は、大大大好き
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- 園長が語る子育ての極意
- クリティカル・ピリオド(臨界期)
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- お母さん教育
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- 校長が語る子育ての極意
- 適度な快と不快の体験を!
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- 医師 私の子育て日記
- おしゃべり大好き井戸端家庭
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- 医師 普通の家庭教育の大切さ
- 10歳頃までが最重要
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- ボランティアの心を育てる
- 「知識」と「体験」でボランティアの心を育てる
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- 年少のドラマ、年中のドラマ、年長のドラマ
- 年少/「せんせい花丸は」
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- 年中/「僕、昨日不良したとよ」
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- 年長/「いつもどこでも、どんな時も」
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- 子どもがピンチの時のとっておきの親の話
- ピョンタの冒険・本屋に行く
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- 衝撃のドラマ 算数が大の苦手の子が満点をとった
- 初めて150点満点とった!
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- 本筋の心の教育
- 心に響くお話は、わが子への最高のプレゼント
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- 小1のドラマ、小2のドラマ、小3のドラマ
- 小1/涙の向こうに笑顔があった
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- 小2/暗唱がS男を変えた
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- 小3/達成感の欠如がもたらした机を蹴飛ばす、顔をゆがめる、だだをこねる子どもの行動
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- 佐藤昌彦の紙工作教室
- 口を動かすことができる「口出しお面」
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- 工作折り込み
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- 子ども調査が示す家庭教育のポイント
- 廃れる言い伝えのしつけ
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- SOS 子ども・親が電話相談をする時
- 能面先生が担任になった
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- 親子で覚える名文・詩文
- 元気になることわざ
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- 親子で挑戦ペーパーチャレラン
- 宇宙旅行チャレラン
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- インターネット・TOSSランドの活用
- 国語の苦手な子には、TOSSランドを使って百人一首の暗唱が一番
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- 習い始めの漢字・輪郭漢字
- 届いたその日から、子どもが熱中し、あっという間に漢字が読めるようになった〜その報告
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- 1年担任の証言・幼児期に何を教えることが大切か
- 社会的規範を身につけさせる
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- 子どものために、食事の工夫を
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- 自分の体を守る教育
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- コンクール入賞続出の酒井式描画法 (第2回)
- 親と子で造るたのしい絵本
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- お稽古、習わせる時の心得
- 子どもの本音「親のために来てやってる」に、ならないように
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- すぐれた教材教具の選び方
- 教材開発のプロが総力をあげて作りあげた教材が誕生した
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- 家庭教育の基本
- 「挨拶」は大人からする
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- これからの小学校教育
- 脳科学の成果に学ぶ(1)
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- シングルエイジ時代(0〜9歳)教育のポイント
- 集団学習の土台は?
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ホントに必要な家庭教育の基本型
教育には、最も適した時期があり、最後のチャンスだという臨界期(年)がある
向山 洋一
本誌編集長、日本教育技術学会会長、千葉大学非常勤講師、無料の世界最大の教育情報サイトインターネットランド主宰TOSS(会員一万名の教師の研究団体)代表
一
新しく赴任した校長先生に、その子の様子が目にとび込んできました。
五年生の男の子です。
目立つ子でした。
トラブルを毎日、起こしていました。
担任に聞くと、ずっと昔から、一年生のときからそうだというのです。
「躾がなっていない。困ったものだ」と、どの学年の先生方も思っていたそうです。
しかし、校長先生には「躾が駄目なためではない。もっと別の原因がある」と感じられました。
その学校の先生方は「子どもを大切にする」と口に出すわりには、本も読まず、勉強もしない先生方が多かったのです。
ですから、教育の方法も「テレビ・新聞」で報道される素人程度の考えしか持っていませんでした。
善意ではあるけど、力の低い先生方だったのです。
校長先生は、すぐ担任を説得し、専門の医療機関で診察してもらうことを指示しました。
担任は、しぶしぶ校長の指示に従いました。
校長は、親にも会って説得しました。
診察は一ヶ月後になりました。
結果は、その子は軽度知恵遅れの障害をもっていたのです。めずらしい症例でした。
校長先生は、知りあいの大学病院の専門医に診察結果を見てもらいました。
専門医から校長先生に電話がかかってきました。
「校長先生、この子は、小学校一年生の時から症状が出ていたはずです。
どうして、今までほっておいたのですか。
もっと前に、来てくれれば、この子は、普通の生活ができるようになったはずです。
五年生の今では、残念ながら手遅れです。
この子は、一生、重荷を負っていくことになります」
私は、この話を聞いて、くやしくてくやしくてたまりませんでした。
小学校一年の時に、いや二年でも三年でも、教師がプロの技量を持っていれば、教師と連携をしたはずだからです。
長野県では、保護者が先生に「うちの子は障害を持っています。その障害の事を少し勉強してくれませんか」と、おずおずとお願いしました。
この保護者の願いを、長野の教師は拒否したのです。
「私は普通学級の教師です。そんな勉強に時間はとれません」と言って……。
何というひどい教師。私は、このような教師をなくすまで、がんばらねばと思っています。
普通学級の教師でも、障害を持つ子のことを理解するために勉強するのは当然の義務です。
障害を持った子は、どの学校のどのクラスにもいるからです。
同じような話は九州でもありました。
四年生を担任した女性教師が、一人の子を発見し、親に「医師」にかかることをすすめました。
親も、実は、内心「どうしたらいいのか」と悩んでいたのです。
診断の結果、原因が分かり、治療の方向も分かり、子どもの発育はグングン改善されていきました。
九州の女教師は、本誌の兄弟誌『教室ツーウェイ』誌を読んでいたから、分かったのです。
このように、教師が学び、親と手をとりあえば、良い方向に向かいます。
そうでないとき、大きな被害をうける子どもが生まれてしまうのです。
大学病院の医師が「校長先生、残念ですが、五年生では手遅れです」と言ったことが、つまり「臨界年(期)」なのです。
ある種の才能や障害には、それを伸ばしたり、治療したりする「最適時期」があります。
それとともに、大切な時期をのんべんだらりとしてしまうと最後のチャンスの年、「臨界年」も、越えてしまうのです。
教育(子育て)には、最適時期と臨界年があるのだと知っているだけで、ずいぶん違います。
「三つ子の魂百まで」ということわざは、このことを言っているのです。
二
次のような経験をした人は多いと思います。
お兄ちゃんが小学校に入るので、お母さんが文字を教えることになりました。
そばで、二つ年下の妹が見ています。
お兄ちゃんは、なかなかおぼえませんが、妹の方は、すぐに覚えてしまいます。
こういう経験をした人は、いっぱいいると思います。
不思議と、年下の子の方がはやく覚えてしまうのです。
これは、年下の子が優秀なためではありません。
文字を覚えるには、六歳というのは少し遅いのです。最適時期は、妹の年齢に近かったのです。
ですから、小さい時から絵本を読み聞かせていると、いつの間にか文字を覚えてしまうのも、文字は四歳ぐらいでスイスイ覚えてしまうからです。
もちろん、ひら仮名よりも漢字の方が覚えやすいのです。
漢字は「絵」だからです。
「学校」という文字を教えるのに、現在次のように教えています。
@ がっこう
↓
A 学こう
↓
B 学校
Aの漢字ひら仮名の「まぜ書き」は、実におかしい教え方です。
これは、最初から漢字で「学校」を示し「がっこう」と読み方を教えればいいのです。
この方が、子どもは楽に覚えます。
書き方は、もっと後になって教えればいいのです。
六十年以前の日本では、そのように教えていたのです。
現在、この「まぜ書き」を訂正する動きが出ています。
三
さて、次のような経験をした人も多いと思います。
幼児期になる頃です。
寝る前に、同じタオルを持って(同じぬいぐるみを持って)寝るようになります。
よごれたタオルをとりあげて、親が新しいのを与えると、火がついたように泣きわめきます。
自分のやることを、ほんの少しでも変更することがいやなのです。
あるいは、毎朝保育園に行くとき、「いつもの階段を上がって」「いつもの犬に声をかけて」と、決まった行動をします。
親の都合で、今日はいそぐからはやくねと、手をひっぱって途中を省略すると、火がついたように泣きます。
けっきょく、「いつもの同じ行動」を、せざるをえなくなります。
似たような体験をした人も多いでしょう。
実は、この行動は、世界中の子どもに共通に見られるのです。
幼児期の一年間ほどです。
発見したのはヨーロッパの医師です。
これは「子どもに、決まった行動様式を学習させるために神様が与えてくださった時間なのだ」と考えられました。
この大切な行動を、親の都合でグチャグチャにすると、「行動」がきちんとしない子になってしまうと言われます。
このように、入学前に、子どもが大切なことを学ぶ時期があります。
その中で、最も大切なのは、親子のスキンシップです。
これは、どれだけ強調しても、しすぎることはないのです。
スキンシップとは、きつく抱きしめてやる、「大好きだよ」「すてきだよ」と言ってやる、「本を読み聞かせてやる」「お話をしてやる」などのことです。
こうした大切なことは、後でとりもどせないのです。
その時期しかできないのです。
私は田園調布地区で教師をしていましたが、しばしば「母親の会」に招かれました。
その時の母親の会では次のような話がされていました。
「子どもが三歳の時、両親が交通事故でなくなってしまった。
でも、三歳まで大切に育てられた子は、その後も立派に育っていった」
これが、田園調布夫人の知恵でした。
テレビやゲームに子守りをさせることは絶対にしませんでした。
テレビがない家もあったほどです。
今回の特集は、幼児期には、学ばなくてはならない大切なことがある。
学ぶのには、最も適した時期がある。
それとともに、最終チャンスの臨界年もある。
後から、とりもどすことができないこともあるのだ――絶対音感は子どもの時にしか身につけられないのと同じように――ということを特集しました。
小さい子どもの方が、よく挨拶をしますよね。なんで高学年くらいになるとあんなに恥ずかしくなっちゃうんだろー?
外国語でも必ず挨拶から習います。挨拶ではじまり、挨拶で終る一日はきっと世界中の家庭の基本なんですね。
返事、挨拶と来て、さて来月はなんだろー?楽しみです!