家庭教育ツーウェイ 2004年7月号
子どもの時こそ「絶対させたい体験」ベスト10

イ004

«前号へ

次号へ»

家庭教育ツーウェイ 2004年7月号子どもの時こそ「絶対させたい体験」ベスト10

紙版価格: 827円(税込)

送料無料

電子版価格: 744円(税込)

Off: ¥83-

ポイント還元20%

ファイル形式

PDF
ジャンル:
その他教育
刊行:
2004年6月15日
対象:
幼・小
仕様:
B5判 80頁
状態:
絶版
出荷:
ダウンロード
定期購読

目次

もくじの詳細表示

特集 子どもの時こそ「絶対させたい体験」ベスト10
体験は知恵と知識と生きる力を支える根っこになる。力のある教師は授業で子どもの体験を大切にとり入れていく。
向山 洋一
教育社会学者のおすすめベスト体験10
明石 要一
校長先生・園長先生5人のすすめる体験5
何よりも音読 親子で声を出して絵本を読む
阿部 惣一
キャンプ(野営)のすすめ
浅尾 三吉
おすすめはやっぱり読み聞かせ
仲田 一
遊び心をもって、継続する
廣中 洋子
露天風呂への正しい入り方
山口 長伸
乳幼児期に私がさせた体験ベスト5
我が家でできることを無理なくやる
伊藤 由紀子
誇り・自信・思いやりは、親の励ましで萌芽する
田村 治男
語彙を増やし、思考力を養うための体験重視
遠藤 真理子
そっ啄同時…無理せず、自然に、時期を見て
松尾 清恵
手先をどんどん使わせる
五十嵐 明子
小学校時代に私がさせた体験ベスト5
家族の絆を深め、社会性を磨く体験を多くさせる
星野 裕二
当たり前のことをしていてテレビ出演できる時代
水野 正司
情動を伴った体験活動
青坂 信司
一年生に最初からローマ字入力を教えよう
岡 惠子
日常的に繰り返して習慣に
河田 孝文
教師になった今、子どもの頃をふりかえってよかった体験
ペットを飼う体験を通して、命の大切さを学ぶ
甲本 卓司
魚捕り虫捕り・旅行・転校―どれもよかった体験ばかり
松本 俊樹
心身を鍛える場には、学校では得られない成就感や達成感が
澤田 好男
砂、粘土、ブロック遊び
高橋 正和
母に看病された
大場 寿子
作文に見るおすすめ体験
学校の「体験活動」で知性は育たない
伴 一孝
大人と一緒の体験が子どもの世界を広げてくれる
齋藤 一子
親の姿を見て育つ
神谷 祐子
親子一緒に楽しんだ体験が、子どもを大きく成長させる
細羽 朋恵
貴重な体験を積む作文ネタ
村野 聡
ミニ特集 学力の基本、筆記用具の使い方指導で子どもが伸びる
第二の頭脳の手指機能は、正しい筆記用具の使用で伸びる
向山 洋一
学習用具はお母さんが決めるべきものです
椿原 正和
脳を刺激し、成績をアップさせる、柔らかいえんぴつとミニ定規
木村 重夫
たかがミニ定規、されどミニ定規
宮崎 京子
ノートは赤鉛筆使用で学力アップ間違いなし赤鉛筆先生を応援しよう!
木村 孝康
授業中、筆箱の中味で見られる姿
小松 裕明
ミニ定規で丁寧さが身につく
赤石 賢司
イラストで見る家庭教育のポイント
テレビの時間を制限しよう
岩野 節男岩野 紀子
家庭教育のポイント
我が子の将来を真剣に考えるなら、テレビ・ゲームの時間を制限することがとっても大切である
向山 洋一
編集前記
向山 洋一師尾 喜代子
つぶやきに見る子どもの成長
きょうだい・喧嘩はしても
水野 茂一
園長が語る子育ての極意
よい子に育てるためには、いつから始めるべきか
戸田 白鳳
私の幼稚園教育・三層構造「あそび」「けいこ」「きまり」の三つの柱
向野 外行
校長が語る子育ての極意
主語をつけて話すとよい
浅尾 三吉
医師 私の子育て日記
信念のある夢を持てる子に(その二)
香川 宜子
医師 普通の家庭教育の大切さ
臨界期
澤口 俊之
ボランティアの心を育てる
「小さなことでも大きな迷惑」周囲の大人が手本を示し続けよ!
青木 雅子
年少のドラマ、年中のドラマ、年長のドラマ
年少/子育ては愛情
濱畑 由紀恵
年中/友だちの大切さ
渡辺 麻里
年長/保育者のかかわり方の大切さ
鈴木 順子
子どもがピンチの時のとっておきの親の話
給食を嫌がった時にする話
佐々木 静
衝撃のドラマ 算数が大の苦手の子が満点をとった
「先生が書いた赤い字、消しちゃえ!」
正木 恵子
本筋の心の教育
先人の知恵に学ぶために―伝記読書のすすめ―
槇田 健
小1のドラマ、小2のドラマ、小3のドラマ
小1/運動会を十倍楽しむ方法
藤崎 久美子
小2/子どもの優しさ
酒井 武男
小3/後ろ向きな言動をする子どもへの対応
奥田 純子
佐藤昌彦の紙工作教室
ブーメランにチャレンジ
佐藤 昌彦
工作折り込み
佐藤 昌彦
子ども調査が示す家庭教育のポイント
箸の持ち方の指導方法
明石 要一
SOS 子ども・親が電話相談をする時
妻が離婚を考える時
波多野 ミキ
親子で覚える名文・詩文
早口言葉
岡 惠子
親子で挑戦ペーパーチャレラン
熟語しりとりチャレラン
伊藤 亮介
インターネット・TOSSランドの活用
家庭でも好評・おすすめサイト
中谷 結花
習い始めの漢字・輪郭漢字
漢字の習い始めは、教材が命
五十嵐 勝義
1年担任の証言・幼児期に何を教えることが大切か
テレビやゲームではなく本に親しむ
上山 留美
時期を逃さず、着替え上手に育てよう
三島 麻美
うそをつくのはいけないこと
坂口 理恵子
コンクール入賞続出の酒井式描画法 (第4回)
親と子で造るたのしい絵本
酒井 臣吾
お稽古、習わせる時の心得
習字・そろばんから、英語への変化
森川 敦子
すぐれた教材教具の選び方
漢字習得は、覚え方とテストのシステムが決め手である
板倉 弘幸
家庭教育の基本
決まりは親が決める
椿原 正和
これからの小学校教育
脳科学の成果に学ぶ(2)
大森 修
シングルエイジ時代(0〜9歳)教育のポイント
図形学習のもとは幼児期
水野 美保
読者のページ
編集部ニュース
親子で学ぶインターネット
自由研究の強い味方!
三澤 雅子

子どもの時こそ「絶対させたい体験」ベスト10

体験は知恵と知識と生きる力を支える根っこになる。力のある教師は授業で子どもの体験を大切にとり入れていく。

本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師

無料の世界最大の教育情報サイトインターネットランド主宰

TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表

向山洋一


 子どもにぜひとも体験させたい……と思い努力している親がいます。

 歌舞伎役者は、三歳の頃から、「長いセリフ」を覚えさせ、舞台を体験させます。

 伝統的芸道の世界には、小さい時から「体験」をさせるメニューが揃っています。系統的な体験は、最もすばらしい教育です。

 子どもが入学する直前に「学校までの道」を一緒に歩いたり、「ランドセルを背負わせて一人で行かせた」人も多いと思います。

 私も、経験しました。

 あるいは「一人旅」を経験させた方もいると思います。

 新幹線のホームまで送って、ついた駅には田舎の親を待たせておき、列車に一人のせた経験をした人もけっこういるはずです。

 また、スイミング、ボーイスカウトなどの夏の合宿に、まだ低学年の子を出した人もいることでしょう。私も小二の娘を、五日間のスイミング合宿に出しました。親の方が淋しく思いました。

 更には、さまざまな自然体験をさせるために、旅に出た人もいると思います。

 小学生を教えていた時、夏休みの宿題に「旅行したら旅行記を書きなさい。旅で出会ったものは、何でもとっておきなさい。

駅弁の袋、ハシの袋、できたら切符も」と話しました。どの子も、すてきな旅行記を書いてきました。

 私の言った事を忠実に守って、旅先の思い出の地に落ちていたタバコのスイガラを旅行記に貼りつけていた女の子もいました。

 その子は、すてきなレディに成長し、衆議院議員の河野太郎夫人になっています。

 動物を飼うことを体験させたいと考えている人も多いでしょう。

 犬猫はもとより、鳥や金魚や熱帯魚に至るまで……体験させた人もいると思います。

 このような、それぞれの体験は、子どもにとってすばらしい学習となります。豊かな体験は、豊かな人格をはぐくむのです。

 子どもたちの体験は、多い方がいいのです。多方面、多種類の体験をしてほしいと、良質の体験をしてほしいと思います。

 さまざまな体験は、子どもたちの「生きる力」「考える力」「知識」を支え、育てていきます。

 体験をもとに、教室では授業がされます。

 授業は、意図的で計画的な行為です。

 しかし、その根っこには、体験が横たわっているのです。

 小学校低学年で「買物調べ」があります。昔は社会科で、今は生活科でとりあげられる内容です。

 子どもたちの「買物体験」を、教師はどのように「授業」にしていくのか、かつて私が学校通信で、クラスの保護者に報告した文章を紹介します。

◇社会科で「買物調べ」をしました。

 一週間(の間)、家の買物を調べます。つまり買物日記をつけたわけです。

 一週間分の買物を発表してもらいました。いろんなものが出てきます。当然のことながら「わけのわからない物」もまじります。「せんせい、みりんってなんですか。」

 私は教えません。「わからない物」を「わからない」と意識するのも大切な勉強です。

◇上質紙を小さく、細長く切ってカードを作りました。このカードに、品物の名を記入させました。一枚に一個です。たくさんのカードができあがっていきます。もちろん、カードが少ない子もいます。こうやって一時間、終了しない子は宿題にしました。

 次の時間、カードを仲間ごとに分けさせました。これもテンヤワンヤです。机の前に、たくさんのカードが並びます。ここでも「わからない物」が大問題です。どこに入るのか見当がつかないのです。ここでも、「わからない物」は、「わからない物関係」というグループに入れさせました。

「食べ物関係」「やおやさん関係」「のみもの関係」、同じ飲食物でもいろいろな「関係」が生まれます。

 これを、一枚の上質紙に書かせました。

 速くできる子おそい子いろいろです。

◇一番、速くできた増田さんに、黒板に書かせました。

 増田さんは、いっしょうけんめい黒板に書きました。その間に、他の子は自分のを完成させます。次が増田さんの図です。


さかな

あ じ


やさい

レタス

キャベツ

アスパラ

わけぎ

トマト


くだもの

いちご

みかん


パ ン

パ ン


ごはん

おにぎり

す し


おかし

むぎちゃ


アイス

アイス


たまご

たまご


ようふく

Tシャツ



おさとう

おさとう


おにく

ひきにく

ベーコン


◇この図で「へんだな」と思うことを聞きました。となりの子と相談します。自分の考えをペアで確かめます。「トマトをくだもの関係に入れる」という考えが出ました。「やおやで売っている」というので却下です。「アイス」を「おかし関係に入れる」というのも出ました。これは大論争です。いろんな所で売っているのです。「アイス」は「甘いもの関係」だという意見も出て、「それなら、さとうも甘いもの関係でアイスと一緒で、おかしい」という反論も出ました。「おかし関係」で一応おさまりました。

◇すごいのが出ました。

「タマゴ、ごはん、肉」を、食べ物関係で一緒にしろと言うのです。この時は、みんなコーフンしてしまいまして、「ソーユーことユーなら、みんな食べ物カンケイジャナイカ」と大変です。「食べ物関係」だと大きすぎて、みんな入っちゃう、ちょっとへんだということで、言い出した今村君も納得です。

◇ここで、「アイスは、オヤツ関係だ」という意見が突如出ました。さっきの結論が気になっていたのでしょう。新しいコトバ、新しい概念、ニューコンセプトを提出したのです。「アイスは、オヤツ関係だ」という考えは、大混乱になりました。

 家々で、「オヤツ」が異なるからです。「うちじゃ、イチゴがオヤツだ」「いや私んちは、パンよ」「わたしのとこオヤツがない」というわけで、せっかくの考えだったのですが、これも却下ということになりました。

◇次は、佐藤さんが黒板に書きました。

 佐藤さんの図では、次のところが問題となりました。「わからない関係」です。


わからない

たけぐし 花 こめ


 話し合いの末、たけぐし……けしょう品や、花……花や、米……米やということになりました。

 矢島さんは、「お米がパンになる」と主張し、座間さんが、「パンやにお米が売ってない。だからお米はお米やだ」という意見が対立しましたが、面白いので持ちこしです。こういう所を、すぐ教えてしまうと、いい勉強ができないのです。

「パンは何でできているか」という討論になりました。矢島さんは「パンはお米から作る」と言います。でも「パンやとお米やはちがう」という意見が出ます。太田さん、矢島さんなどは、「パンはお米で作るとママが言ってた」と言います。こういう言い方は一つの「流行現象」となって、みんなつられます。

「そういえば、うちのお母さんも言っていた」という意見が出ます。ほとんどの子が「パンは、米と麦から作る」になってしまいました。

◇「ちがう」と、大声でさけんだ子がいます。勉強は大嫌いと言っている山田一郎君です。みんなは、大ぜいで言ってますから、ワイワイしていて山田意見をとりあげようとしません。

「パンはね」と山田君が大声で続けます。「バターとね、卵とね、塩とさとうと、小麦粉とイーストから作るの」と言いました。「バター」と言った時、「うそー、へんなの」と声が出ました。

 しかし、山田君が続けると、教室が静かになってきました。言い終わった時、教室はシーンとなってます。

 あまりにも、圧倒的な知識のちがいに、子どもたちは呆然としているのです。私は、「ここにいるのは、まぎれもなく人間の子だ」と思いました。「知の力」に子どもながら圧倒された姿なのです。もう一度、山田君に前に出て説明してもらいました。イーストの説明もしてくれました。「さあ、どう考える」私は聞きました。「ママに聞いた」「お母さんに聞いた」子は黙ったままです。しばらく沈黙が続きました。

◇「先生、教科書にパンのこと出てる」と永田さんが言いました。みんなもいそいで本を見ました。後のページです。「本当だ」「山田君あってる」驚きの声が続きます。「調べる力」「読みとる力」も人間の力なのだと私は実感しました。

 小学校二年生の授業です。

 とっても、知的だと思いませんか。

 子どもたちは、ありとあらゆる体験を動員して考えます。

「お母さんが言っていた」という意見がありました。これは、勘違いで、間違いなのですが、多くの子どもは、つられていきます。

「お母さんが言った」というのは、水戸黄門の印ろうのようなものです。活発な子が言えば、クラス中なびいていきます。

 でも「違う」と叫ぶ子もいたのです。

「計算嫌い・漢字大嫌い」で、授業中はシーンとしている山田君です。

 山田君の叫びに、誰も反応しません。

 でも、山田君は続けます。

 しかし「バターと、卵と、塩とさとうと、小麦粉とイーストから作るの」の意見に、クラス中がシーンとします。

 山田君は、多くの優等生、クラス中の子を、この発言でシーンとさせたのです。

 これは、山田君が、お母さんと体験していたことなのでした。

 体験は、このように知恵となり生きる力となるのです。

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ