家庭教育ツーウェイ 2004年8月号
子どもに対する要求“はっきり掲げる3か条”

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家庭教育ツーウェイ 2004年8月号子どもに対する要求“はっきり掲げる3か条”

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ジャンル:
その他教育
刊行:
2004年7月8日
対象:
幼・小
仕様:
B5判 80頁
状態:
絶版
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目次

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特集 子どもに対する要求“はっきり掲げる3か条”
長い時間続ける人を人は信用する 熱中する行為によって子どもはメタモルフォーゼする
向山 洋一
うちの小学校 当たり前のこと3か条
本校の当たり前のこと3か条
杉田 久信
基本はただ一つ「あいさつ」にこだわる
槇田 健
理念より実践目標を明確にすること
青坂 信司
うちの幼稚園 当たり前のこと3か条
あいさつ、後片付け、仲良くする
舘野 健三
子ども達と奏でるしつけ三重奏
内田 則子
「にこにこ」「げんきで」「なかよし」
駒井 隆治
私の教室の子どもに要求してきた3か条
「あいさつ」「返事」「はきもをそろえる」
勇 和代
「迷惑をかけない」「耐性をつける」「考える力をつける」
樋口 正和
「いじめをしない」「使った物はもとのところに戻す」「挨拶、返事をする」
細羽 朋恵
子育て私が子どもに要求してきた3か条
「体によいものを食べる」「神仏を敬い手を合わす」「おはようのあいさつをする」
飯田 清美
「9時には就寝」「寝る前のしっかり歯磨き」「テレビゲームは15分間」
伴 佳代
「範を示す」「やろうとしたこと・失敗をほめる」「分からせながら叱る」
田村 治男
小児神経科医 子どもにはっきり要求したいこと
横山 浩之
教育社会学者 日本で昔から子どもに要求してきたこと
明石 要一
格言・ことわざに見る子どもへの要求
赤木 雅美
子どもに要求してよかったこと・反省すること
しつけは、徹底することが大切である
吉川 廣二
安易な要求は、子どもを駄目にする
松崎 力
靴を揃えなさい
鈴木 智光
子どもの人生に必要なことを教え込む
小倉 郁美
ミニ特集 感心した保護者、びっくりした保護者
教室を混乱させる自信過剰、非常識な親
向山 洋一
まわりを配慮できるかどうか
松野 孝雄
集金封筒の中に子育てを発見することができる
松本 勝男
危機回避能力で保護者にお願いする
杉山 裕之
教師を育てるのも、ダメにするのも保護者次第である
迫田 一弘
すばらしい保護者に恵まれ私は幸せだった
有村 春彦
手紙
山 佳己
イラストで見る家庭教育のポイント
靴を揃えよう
岩野 節男岩野 紀子
家庭教育のポイント
靴箱を見ればクラスの様子が分かる
向山 洋一
編集前記
師尾 喜代子
つぶやきに見る子どもの成長
知的学習開始期
水野 茂一
園長が語る子育ての極意
楽々子育て法
菅原 雅子
自立へのはじまり
藤川 珪子
校長が語る子育ての極意
凡庸徹底
舘野 健三
医師 私の子育て日記
モデルのような美しい母さんよりも肝玉母さんのすすめ
香川 宜子
医師 普通の家庭教育の大切さ
多重知能
澤口 俊之
ボランティアの心を育てる
お金ではなく「人の役に立つこと」を喜べる子どもを育てたい
熊谷 直樹
年少のドラマ、年中のドラマ、年長のドラマ
年少/願い事
宮下 由紀子
年中/感動したこと
曽根 美穂
年長/子どもの褒め言葉
山ア 静枝
子どもがピンチの時のとっておきの親の話
ピョンタの大冒険・ぼくもできたよ、初めてのおつかい
田中 由美子
衝撃のドラマ 算数が大の苦手の子が満点をとった
かけ算九九表があるからできた
星原 一宏
本筋の心の教育
子どもの成長を心から喜ぶ
宇田川 浩樹
小1のドラマ、小2のドラマ、小3のドラマ
小1/初めての授業参観
藤崎 久美子
小2/「集中の美」と「練習量のすごさ」
酒井 武男
小3/やんちゃ坊主こそホントに優しい
奥田 純子
佐藤昌彦の紙工作教室
何が出るかな?びっくりバタバタ
佐藤 昌彦
工作折り込み
佐藤 昌彦
子ども調査が示す家庭教育のポイント
仲直り文化を復活させよう
明石 要一
SOS 子ども・親が電話相談をする時
子どもが友だちと買いものに行きたがる
波多野 ミキ
親子で覚える名文・詩文
春夏の俳句
岡 惠子
親子で挑戦ペーパーチャレラン
地図記号・天気記号チャレラン
伊藤 亮介
インターネット・TOSSランドの活用
楽しんでいるうちにいつの間にか力がつく
西村 佳子
習い始めの漢字・輪郭漢字
正しいフラッシュカードのやり方で漢字指導を行う
五十嵐 勝義
1年担任の証言・幼児期に何を教えることが大切か
「ありがとう」「ごめんなさい」を言うこと
西田 成子
テレビ・ゲームの上手なつき合い方
小室 由希江
スキンシップと甘えさせることでよい親子関係を
曽我部 香
コンクール入賞続出の酒井式描画法 (第5回)
親と子で造るたのしい絵本
酒井 臣吾
お稽古、習わせる時の心得
親の過大な期待は禁物、おおらかに子どもを見守る
森川 敦子
すぐれた教材教具の選び方
数千年の歴史を持つ教材
板倉 弘幸
家庭教育の基本
部屋に本を置く
椿原 正和
これからの小学校教育
学校選択制と情報の公開
吉永 順一
シングルエイジ時代(0〜9歳)教育のポイント
美しい字形を身につけるには
水野 美保
読者のページ
編集部ニュース
親子で学ぶインターネット
夏休みだからこそチャレンジ!
三澤 雅子

子どもに対する要求“はっきり掲げる3か条”

長い時間続ける人を人は信用する

熱中する行為によって子どもはメタモルフォーゼする

向山洋一

本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師

無料の世界最大の教育情報サイトインターネットランド主宰

TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表


 昨日、中学校時代の恩師、平井八重先生を訪ねて、池袋から川越近くのお宅を訪問しました。

 平井先生には、中学二年の三学期、三カ月間だけ習ったのです。

 早稲田の大学院生であった先生は、臨時講師として来られました。その知的な授業は、中学二年生の生徒を魅了しました。

 わずか、三カ月間だけの師弟の関係でした。しかし、ご縁は長く続くことになります。私が、上海師範大学の客員教授になったのも、平井先生のお招きでした。

 中学二年の三カ月間があまりにもすてきでしたので、高校に入学した時、友人と先生宅を訪ね、産経新聞に勤めていたご主人も加わって夜遅くまで語りあかし、先生宅に一泊しました。

 その時から、四十五年ぶりの訪問です。

 私は教育界にすすみ、同行の友人、矢口君も都立江戸川高校の校長となり退職したばかりでした。

 先生とご主人に迎えられ、マンションの席につきました。

 先生が「矢口君、これよ、持って帰ってね」と、一鉢の植木を示しました。

 秋海棠(しゅうかいどう)の花が植えてありました。

 四十五年前、先生宅を訪問した時、矢口君は、おみやげに一株の秋海棠を持参したのです。

 先生は、それを大切に育て、たくさんの株分けをするようになり、四十五年ぶりに訪れた矢口君に、里帰りを用意していたのです。

 四十五年前の、高校一年生の、一株の植木を、先生は大切に大切にしていてくれたのです。

 読者の方々は、このような先生をどう思われますか?

 私は、ジーンと胸があつくなっていました。

 四十五年前、たった三カ月教えただけで私たちをとらえた先生の、本当の姿を見た思いがしました。

 帰る電車で「いい話だなあ」と私が言うと、矢口君は「これを育てて、江戸川高校にそっと植えておきたい」と言いました。

 人は「長く続けていること」がある人を信用します。

 私は、ある大学で教えたことがありますが、その時、声をかけてくれた教授が、私に決めた理由は、私の「著書」「論文」の多さではありませんでした。

 私の本の中にあった、次の一文です。


「私は、子どもの時から、続いている自分の仕事がある。

 朝、仏壇にお茶と水とご飯を新しく供えて、お線香をあげることである。

 夕方、水だけをとりかえてお線香をあげることである。

 これが、五十年近く、今も続く私の日課である。」


 この文を読んで「向山先生は信頼できる先生だと思った」ということでした。

 長く続くことを子どもの仕事とするのは、親の大切な教育と思えます。

 小さい時の私は、忘れることもありましたが、母が黙ってやってくれました。

 そんな時期が、何年もあり、やがて、気がついたら私の仕事になっていたのです。

 乳児、幼児の時に「熱中してやること」を経験させるのは、とっても、とっても、とっても大切なことです。

 小さい頃の子どもは、落ちつかないものです。あちら、こちらへ身体を動かし、親のしつけも、ままなりません。

 中には「ぼー」としたように、「生気」のない子もいます。

 あれこれ、手をつくすのですが、うまくいきません。

 そんな子どもが「一つの体験」に熱中することがあります。

 ある子は、積み木を並べるのに熱中しました。一時間も二時間もです。

 ある子は、ひもに輪を通すのに熱中しました。一時間も二時間もです。

 大人から見ると何でもないことのようですが、この体験は、子どもの成長に極めて大切なことなのです。

 イタリアの女性医師(そして教育学者)のモンテッソリーが発見したことです。

 「熱中する体験」を「充分にやった子」はそれまでと「一皮むけた状態」になるのです。満足し、どこか落ちつくのです。

 これは、小学校でも経験します。

 「おみこしづくり」「チャレラン大会」などのイベントを、クラス全員が熱中してとりくむと、クラス全体がまとまるのです。

 私は、教師になってから気がつきました。

 そのことを、私は次のように書きました。

「子どもの成長は、表文化だけでは十分ではない。

 一人一人が裏文化にひたり、クラスの中に裏文化が位置づけられる時、子どもの成長は、豊かにたくましくなっていく。」

 表文化とは「ピアノが上手」「テストが満点」「走るのが速い」というようなことです。

 裏文化とは「カエルをすぐつかまえてくる」「細い秘密の通路を知っている」「けん玉が上手」というようなことです。

 小学校の教師は、裏文化に通じている必要があります。

 トカゲを教室に投げ込む男の子を、上手にほめて、いなしてこそ、その先生は「ヤンチャ坊主」にも信頼されるのです。

 女の先生に、特に必要なことです。

 乳・幼児期の母親は「子どもが熱中している体験」を、大切に大切に大切にする必要があります。

 それは、神様が「よりよく育つため」に送ってくれたプレゼントなのです。

 間違っても「熱中してやっていること」を途中で、止めてはなりません。

 それは「成長のための神様のプレゼント」を、捨ててしまうようなことなのです。

 乳・幼児期の本については「相良敦子先生」の本が、絶対のおすすめです。具体的で分かりやすく、得るところ大です。

 乳・幼児期の子が熱中する体験場面は、ある時、突然目の前に現われます。

 そのことを知っていた親なら、子どもの経験を大切に大切に扱うはずです。

 それまでの自分から、新しい自分へのメタモルフォーゼ(脱皮)が始まったのですから……。

 子どもに、三つのことを要求するとしたら、どのようにしたらいいのでしょう。

 それは、親や教師が、自分の生き方の中でつかんだものでいいのです。

 家庭によって、人によって違いがあって当然です。

 私が言われてきたのは、次の三つです。


 一 人に迷惑をかけるな

 二 弱い者いじめをするな

 三 神や仏や本などを大切にせよ


 ちなみに、教室で教師が子どもに要求することは、次のような内容と思えます。


先生は、次のような時に、本気で叱るよ。

第一は、生命にかかわる危険なことをしたとき。

第二は、他人をぶったり、他人の悪口を言って身体や心を傷つけたとき。

第三は、多くの人に迷惑となる行為をしたとき。例えば、授業中のおしゃべり。


 子どもには、このように、はっきりと言っておくことが大切です。

 長崎・佐世保で、大変な事件がありました。

 私の教師経験からすると、必ず予兆があったはずです。

 突然、大事故がボーンと起こることはありません。

 それに先立って三十ぐらいの「中、小事件」があったはずです。

 更に、それに先立って「三百近い、小さなできごと」を見逃していたはずです。

 大事故は、多くは「学級崩壊」の状態から生まれます。

 いじめも、多発します。

 「学級崩壊」は「子どもが授業に満足していない」ことが最大の原因です。

 つまり「つまらない授業」「分からない授業」の時、子どもは反発します。

 「つまらない授業」は「子どもの事実を見ていない学校」にはびこります。

 学力テストなどを、まともにしていない学校です。

 また「見栄だけの研究」を学校ぐるみでやるところに生まれてきます。

 例えば教科書を使わず一時間の授業で一問しか教えない「算数の問題解決学習」を熱心にやる学校に「つまらない、分からない授業」がはびこるのです。

 長崎・佐世保の事件の裏には「教師」の私から推測して、右のような条件があったと思えます。ここを直さないと、別の形の事件はまた生まれます。

 私の推測が正しいかどうか、いずれ事件の解明とともに明らかになると思います。

 教師として、親として「きちんと要求する三か条」を心に持ちたいものです。

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