- 特集 子どもに対する要求“はっきり掲げる3か条”
- 長い時間続ける人を人は信用する 熱中する行為によって子どもはメタモルフォーゼする
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- うちの小学校 当たり前のこと3か条
- 本校の当たり前のこと3か条
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- 基本はただ一つ「あいさつ」にこだわる
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- 理念より実践目標を明確にすること
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- うちの幼稚園 当たり前のこと3か条
- あいさつ、後片付け、仲良くする
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- 子ども達と奏でるしつけ三重奏
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- 「にこにこ」「げんきで」「なかよし」
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- 私の教室の子どもに要求してきた3か条
- 「あいさつ」「返事」「はきもをそろえる」
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- 「迷惑をかけない」「耐性をつける」「考える力をつける」
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- 「いじめをしない」「使った物はもとのところに戻す」「挨拶、返事をする」
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- 子育て私が子どもに要求してきた3か条
- 「体によいものを食べる」「神仏を敬い手を合わす」「おはようのあいさつをする」
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- 「9時には就寝」「寝る前のしっかり歯磨き」「テレビゲームは15分間」
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- 「範を示す」「やろうとしたこと・失敗をほめる」「分からせながら叱る」
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- 小児神経科医 子どもにはっきり要求したいこと
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- 教育社会学者 日本で昔から子どもに要求してきたこと
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- 格言・ことわざに見る子どもへの要求
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- 子どもに要求してよかったこと・反省すること
- しつけは、徹底することが大切である
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- 安易な要求は、子どもを駄目にする
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- 靴を揃えなさい
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- 子どもの人生に必要なことを教え込む
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- ミニ特集 感心した保護者、びっくりした保護者
- 教室を混乱させる自信過剰、非常識な親
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- まわりを配慮できるかどうか
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- 集金封筒の中に子育てを発見することができる
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- 危機回避能力で保護者にお願いする
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- 教師を育てるのも、ダメにするのも保護者次第である
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- すばらしい保護者に恵まれ私は幸せだった
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- 手紙
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- イラストで見る家庭教育のポイント
- 靴を揃えよう
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- 家庭教育のポイント
- 靴箱を見ればクラスの様子が分かる
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- 編集前記
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- つぶやきに見る子どもの成長
- 知的学習開始期
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- 園長が語る子育ての極意
- 楽々子育て法
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- 自立へのはじまり
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- 校長が語る子育ての極意
- 凡庸徹底
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- 医師 私の子育て日記
- モデルのような美しい母さんよりも肝玉母さんのすすめ
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- 医師 普通の家庭教育の大切さ
- 多重知能
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- ボランティアの心を育てる
- お金ではなく「人の役に立つこと」を喜べる子どもを育てたい
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- 年少のドラマ、年中のドラマ、年長のドラマ
- 年少/願い事
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- 年中/感動したこと
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- 年長/子どもの褒め言葉
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- 子どもがピンチの時のとっておきの親の話
- ピョンタの大冒険・ぼくもできたよ、初めてのおつかい
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- 衝撃のドラマ 算数が大の苦手の子が満点をとった
- かけ算九九表があるからできた
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- 本筋の心の教育
- 子どもの成長を心から喜ぶ
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- 小1のドラマ、小2のドラマ、小3のドラマ
- 小1/初めての授業参観
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- 小2/「集中の美」と「練習量のすごさ」
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- 小3/やんちゃ坊主こそホントに優しい
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- 何が出るかな?びっくりバタバタ
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- 工作折り込み
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- 子ども調査が示す家庭教育のポイント
- 仲直り文化を復活させよう
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- SOS 子ども・親が電話相談をする時
- 子どもが友だちと買いものに行きたがる
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- 親子で覚える名文・詩文
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- 親子で挑戦ペーパーチャレラン
- 地図記号・天気記号チャレラン
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- インターネット・TOSSランドの活用
- 楽しんでいるうちにいつの間にか力がつく
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- 習い始めの漢字・輪郭漢字
- 正しいフラッシュカードのやり方で漢字指導を行う
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- 1年担任の証言・幼児期に何を教えることが大切か
- 「ありがとう」「ごめんなさい」を言うこと
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- テレビ・ゲームの上手なつき合い方
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- スキンシップと甘えさせることでよい親子関係を
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- コンクール入賞続出の酒井式描画法 (第5回)
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- お稽古、習わせる時の心得
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子どもに対する要求“はっきり掲げる3か条”
長い時間続ける人を人は信用する
熱中する行為によって子どもはメタモルフォーゼする
向山洋一
本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師
無料の世界最大の教育情報サイトインターネットランド主宰
TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表
昨日、中学校時代の恩師、平井八重先生を訪ねて、池袋から川越近くのお宅を訪問しました。
平井先生には、中学二年の三学期、三カ月間だけ習ったのです。
早稲田の大学院生であった先生は、臨時講師として来られました。その知的な授業は、中学二年生の生徒を魅了しました。
わずか、三カ月間だけの師弟の関係でした。しかし、ご縁は長く続くことになります。私が、上海師範大学の客員教授になったのも、平井先生のお招きでした。
中学二年の三カ月間があまりにもすてきでしたので、高校に入学した時、友人と先生宅を訪ね、産経新聞に勤めていたご主人も加わって夜遅くまで語りあかし、先生宅に一泊しました。
その時から、四十五年ぶりの訪問です。
私は教育界にすすみ、同行の友人、矢口君も都立江戸川高校の校長となり退職したばかりでした。
先生とご主人に迎えられ、マンションの席につきました。
先生が「矢口君、これよ、持って帰ってね」と、一鉢の植木を示しました。
秋海棠(しゅうかいどう)の花が植えてありました。
四十五年前、先生宅を訪問した時、矢口君は、おみやげに一株の秋海棠を持参したのです。
先生は、それを大切に育て、たくさんの株分けをするようになり、四十五年ぶりに訪れた矢口君に、里帰りを用意していたのです。
四十五年前の、高校一年生の、一株の植木を、先生は大切に大切にしていてくれたのです。
読者の方々は、このような先生をどう思われますか?
私は、ジーンと胸があつくなっていました。
四十五年前、たった三カ月教えただけで私たちをとらえた先生の、本当の姿を見た思いがしました。
帰る電車で「いい話だなあ」と私が言うと、矢口君は「これを育てて、江戸川高校にそっと植えておきたい」と言いました。
人は「長く続けていること」がある人を信用します。
私は、ある大学で教えたことがありますが、その時、声をかけてくれた教授が、私に決めた理由は、私の「著書」「論文」の多さではありませんでした。
私の本の中にあった、次の一文です。
「私は、子どもの時から、続いている自分の仕事がある。
朝、仏壇にお茶と水とご飯を新しく供えて、お線香をあげることである。
夕方、水だけをとりかえてお線香をあげることである。
これが、五十年近く、今も続く私の日課である。」
この文を読んで「向山先生は信頼できる先生だと思った」ということでした。
長く続くことを子どもの仕事とするのは、親の大切な教育と思えます。
小さい時の私は、忘れることもありましたが、母が黙ってやってくれました。
そんな時期が、何年もあり、やがて、気がついたら私の仕事になっていたのです。
乳児、幼児の時に「熱中してやること」を経験させるのは、とっても、とっても、とっても大切なことです。
小さい頃の子どもは、落ちつかないものです。あちら、こちらへ身体を動かし、親のしつけも、ままなりません。
中には「ぼー」としたように、「生気」のない子もいます。
あれこれ、手をつくすのですが、うまくいきません。
そんな子どもが「一つの体験」に熱中することがあります。
ある子は、積み木を並べるのに熱中しました。一時間も二時間もです。
ある子は、ひもに輪を通すのに熱中しました。一時間も二時間もです。
大人から見ると何でもないことのようですが、この体験は、子どもの成長に極めて大切なことなのです。
イタリアの女性医師(そして教育学者)のモンテッソリーが発見したことです。
「熱中する体験」を「充分にやった子」はそれまでと「一皮むけた状態」になるのです。満足し、どこか落ちつくのです。
これは、小学校でも経験します。
「おみこしづくり」「チャレラン大会」などのイベントを、クラス全員が熱中してとりくむと、クラス全体がまとまるのです。
私は、教師になってから気がつきました。
そのことを、私は次のように書きました。
「子どもの成長は、表文化だけでは十分ではない。
一人一人が裏文化にひたり、クラスの中に裏文化が位置づけられる時、子どもの成長は、豊かにたくましくなっていく。」
表文化とは「ピアノが上手」「テストが満点」「走るのが速い」というようなことです。
裏文化とは「カエルをすぐつかまえてくる」「細い秘密の通路を知っている」「けん玉が上手」というようなことです。
小学校の教師は、裏文化に通じている必要があります。
トカゲを教室に投げ込む男の子を、上手にほめて、いなしてこそ、その先生は「ヤンチャ坊主」にも信頼されるのです。
女の先生に、特に必要なことです。
乳・幼児期の母親は「子どもが熱中している体験」を、大切に大切に大切にする必要があります。
それは、神様が「よりよく育つため」に送ってくれたプレゼントなのです。
間違っても「熱中してやっていること」を途中で、止めてはなりません。
それは「成長のための神様のプレゼント」を、捨ててしまうようなことなのです。
乳・幼児期の本については「相良敦子先生」の本が、絶対のおすすめです。具体的で分かりやすく、得るところ大です。
乳・幼児期の子が熱中する体験場面は、ある時、突然目の前に現われます。
そのことを知っていた親なら、子どもの経験を大切に大切に扱うはずです。
それまでの自分から、新しい自分へのメタモルフォーゼ(脱皮)が始まったのですから……。
子どもに、三つのことを要求するとしたら、どのようにしたらいいのでしょう。
それは、親や教師が、自分の生き方の中でつかんだものでいいのです。
家庭によって、人によって違いがあって当然です。
私が言われてきたのは、次の三つです。
一 人に迷惑をかけるな
二 弱い者いじめをするな
三 神や仏や本などを大切にせよ
ちなみに、教室で教師が子どもに要求することは、次のような内容と思えます。
先生は、次のような時に、本気で叱るよ。
第一は、生命にかかわる危険なことをしたとき。
第二は、他人をぶったり、他人の悪口を言って身体や心を傷つけたとき。
第三は、多くの人に迷惑となる行為をしたとき。例えば、授業中のおしゃべり。
子どもには、このように、はっきりと言っておくことが大切です。
長崎・佐世保で、大変な事件がありました。
私の教師経験からすると、必ず予兆があったはずです。
突然、大事故がボーンと起こることはありません。
それに先立って三十ぐらいの「中、小事件」があったはずです。
更に、それに先立って「三百近い、小さなできごと」を見逃していたはずです。
大事故は、多くは「学級崩壊」の状態から生まれます。
いじめも、多発します。
「学級崩壊」は「子どもが授業に満足していない」ことが最大の原因です。
つまり「つまらない授業」「分からない授業」の時、子どもは反発します。
「つまらない授業」は「子どもの事実を見ていない学校」にはびこります。
学力テストなどを、まともにしていない学校です。
また「見栄だけの研究」を学校ぐるみでやるところに生まれてきます。
例えば教科書を使わず一時間の授業で一問しか教えない「算数の問題解決学習」を熱心にやる学校に「つまらない、分からない授業」がはびこるのです。
長崎・佐世保の事件の裏には「教師」の私から推測して、右のような条件があったと思えます。ここを直さないと、別の形の事件はまた生まれます。
私の推測が正しいかどうか、いずれ事件の解明とともに明らかになると思います。
教師として、親として「きちんと要求する三か条」を心に持ちたいものです。
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- 明治図書