- 特集 子どもの生活の乱れ=かしこい親の上手な対処
- 学級崩壊のクラスで一番乱暴だったA君は、担任が変わって1週間で奇跡の変身をした
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- 生活の乱れの予兆とその対処
- 忘れ物が増えてくるその対処
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- 言葉を変えると行動も変わる
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- 時間の乱れとその対処
- 「時間を守らせる」効果があった3つの方法
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- 生活のリズムが元気にさせる
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- 食生活の乱れとその対処
- 肥満は重大な病気を引き起こす原因になる
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- 親父が和食の良さを示し続ける
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- 学習態度の乱れとその対処
- 我が子の生活の乱れは筆箱、ノート、教科書のチェックから
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- 学習の乱れを未然に防ぐポイント
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- 私がびっくりした子どもの生活の実態
- 子どもの生活の乱れには必ず背景がある
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- 学校で子どもの睡眠時間と栄養を確保する?
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- 大人になったわが子の姿を思い浮かべて
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- テレビ視聴時間から、子どもの生活の乱れが見える
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- 「もう手遅れです。この性格はなおせません」と見放されたA君
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- 子どもの家庭での生活を把握せよ
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- 最近の子どもの生活の乱れ
- 教育社会学からの考察
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- 最近の中学生の生活の乱れ
- 現場で起きていること
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- 教室で感じた生活の乱れとその対処
- 嘘やごまかしを見逃さない
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- 生活の乱れは、些細なところに現れる
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- すてきな身のこなしは、普段の生活の中でこそ培われる
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- 生活の乱れ かしこい親の上手な対処
- 説教ではなくて、趣意の説明をする そして、親も一緒に行動する
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- 「ならぬは、ならぬ」「やらねば、ならぬ」が大切
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- よい状態を目に見える形で実現させてほめる
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- 物やお金を、勝手に貸したりあげたりしない 子どもの筆箱の中身に注意する
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- 夕食時刻六時三十分、就寝時刻九時三十分を母親が守り続ける
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- ミニ特集 教育界の衝撃 とび箱は誰でも跳ばせられる―2004年1月31日、NHK「週刊こどもニュース」で放映された向山式とび箱指導法―
- お子さんがとび箱を跳べないとしたら、教師を問いつめよう
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- 跳ぶための動きを明確にし生まれた、最高の指導法
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- 悩める数多くの子どもと教師を救う向山式とび箱指導法
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- やった!跳べたよ。先生、みんなありがとう―できる喜びを体験させる―
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- 一年生でも実現! クラス全員達成の時
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- 根性も筋力もいらなかった
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- 「成功体験」で子どもを変える
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- イラストで見る家庭教育のポイント
- イスを入れよう
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- 家庭教育のポイント
- 成長する企業の重役会は椅子がきちんともどされる
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- 編集前記
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- つぶやきに見る子どもの成長
- 祖父母―いついつ迄も―
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- 園長が語る子育ての極意
- 「自立」こそ、子育ての基礎
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- 二輪の和
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- 校長が語る子育ての極意
- 共に育てる
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- 医師 私の子育て日記
- 落ちこぼれだった私から語る勉学の勧め
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- 医師 普通の家庭教育の大切さ
- ゲーム脳は恐怖?
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- ボランティアの心を育てる
- 人に役立つ喜びを味わわせることが、大人の大切な役目
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- 年少のドラマ、年中のドラマ、年長のドラマ
- 年少/やさしい心としつけ
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- 年中/無限のちから
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- 年長/ドリームズ カム トゥルー
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- 子どもがピンチの時のとっておきの親の話
- 運動会のかけっこで悩んでいる時にするお話
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- 衝撃のドラマ 算数が大の苦手の子が満点をとった
- 素直な子どもは必ず伸びる
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- 本筋の心の教育
- 子どもの成長を心から喜ぶA
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- 小1のドラマ、小2のドラマ、小3のドラマ
- 小1/夏休みの作品、親子合作もOK?
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- 小2/「ごめんね」「いいよ」
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- 小3/やんちゃ坊主の連帯感をくすぐる
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- 佐藤昌彦の紙工作教室
- 口がパクパク動くおしゃべりバード
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- 子ども調査が示す家庭教育のポイント
- 学習意欲の高め方
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- SOS 子ども・親が電話相談をする時
- 親のさいふからお金をとった
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- 親子で覚える名文・詩文
- いろはかるた
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- 親子で挑戦ペーパーチャレラン
- A→B→C・木→草→水チャレラン
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- インターネット・TOSSランドの活用
- 都道府県を無理なく覚えることのできるインターネットランド
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- 習い始めの漢字・輪郭漢字
- 輪郭漢字カードはどのように誕生したか
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- 1年担任の証言・幼児期に何を教えることが大切か
- 幼児期の読み聞かせは感情豊かな子に育てる
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- 自然は絶えず子どもを鍛える
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- 偏りのない食事
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- コンクール入賞続出の酒井式描画法 (第6回)
- 親と子で造るたのしい絵本
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- お稽古、習わせる時の心得
- 夏休み、短期講座を上手に利用する
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- すぐれた教材教具の選び方
- 成功体験の積み重ね
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- 家庭教育の基本
- お母さんはいつも見える所にいてあげてください
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- これからの小学校教育
- 脳科学の成果に学ぶ(3)
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- シングルエイジ時代(0〜9歳)教育のポイント
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子どもの生活の乱れ=かしこい親の上手な対処
学級崩壊のクラスで一番乱暴だったA君は、担任が変わって1週間で奇跡の変身をした
向山洋一
本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師
無料の世界最大の教育情報サイトインターネットランド主宰
TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表
教室における子どもたちの乱れは、実は教師の授業の力によって立ち直る。その観点から特集を考えてみる。
参議院選挙の折、小学校の校庭で「逆上がり」に挑戦している親子がいた。
夫婦と低学年ぐらいの娘二人だ。
お父さんが、一メートル七十センチくらいの鉄棒で、逆上がりをやってみせた。
お母さんが「すごい」と拍手した。
娘も、高い鉄棒で挑戦したが、足が少しあがるだけだった。
すてきな風景に、二、三分見とれていた。
「お手伝いしようかな」とちょっぴり思ったが、「親子の絆」の方が大切な気がして、その場を去った。
お父さんは、熱心に鉄棒を教えていたが、プロの目から見るとピントがずれている。
第一は、鉄棒の高さだ。
高い鉄棒だと「ケンスイ」プラス「逆上がり」となり、とっても難しい。
初心者の鉄棒指導の時、高さは「乳頭より少し下」ぐらいがいい。
第二は、補助についてだ。
逆上がりのできない子は「鉄棒」と「腰」が大きく離れる。腰が鉄棒から離れない補助が必要だ。
例えば、ジャングルジムで、足を次々にかけながら、練習する方法である。
例えば、斜めの補助板を、かけ上がるように練習する方法だ。
例えば、背中あわせになった子が、背中に相手をのせてしまう補助だ。
例えば、大人が手でくるりとまわしてしまう補助だ。
一番いいのは、帯、タオルなどで、鉄棒と子どもの腰をくくりつける方法である。
この補助具は、かつて有名スポーツ店で販売された。一つで二万五千円ぐらいした。
私たちは老人ホームの協力を得て、千八
百円の「鉄棒くるりんベルト」を作り出した。これが、現在、日本中の学校で広く使われている補助教具である。
このように「プロの目」から見ると、別の風景が見えてくる。
ちなみに私は、とび箱が跳べない子を、
三分くらいで跳ばせることができる。なわとびを一回跳べる子なら、成功率は九十八パーセントぐらいだ。
小学校の教科指導で、最も難しいのは、算数である。算数テストで五点、十点だった子が、七十点、八十点、百点をとれるようになったという報告は、ほとんどない。
多分、日本中で皆無だろう。百マス計算でも駄目だ。百マス計算は、できない子を更に駄目にしてしまう場合が多い。
でも、私たちTOSSの教師の中には、「できない子に満点をとらせた」「算数のクラス平均点が九十点を超えた」という人はいっぱいいる。
何十人も、何百人もいる。
『向山型算数教え方教室』誌八月号(明治図書)から、一例を紹介しよう。
荒れたクラスで勉強を妨害していたA君を新担任は短時間で変身させたのである。
奇跡と呼ばれた。
*
奇跡と呼ばれた向山型算数
岡山県岡山市立大野小学校 吉田 真弓
◇「吉田先生、すごいです! A君を変えた奇跡の人だ!と○○さんと話していたんですよ」
今年の四月。家庭訪問である保護者から言われた言葉である。
昨年クラスが大変だった学年を三年生で受け持った。A君は多分授業に参加できていなかった、いや、妨害すらしていたのである。
「A君が教科書を開いているのを一年ぶりに見ました」「A君が問題を読んでいる! 授業に参加している!」と保護者はびっくりした。
この保護者は何を見てこの発言をしたのか。それは四月のはじめの参観日のたった一時間の様子を見ただけである。
新しいクラスになってわずか一週間。昨年の修了式のその日まで、落ち着いて授業に参加することのできなかったA君は、わずか一週間で大きく変わった。
◇家庭訪問でA君のお母さんが言われた。
「三月に持って帰った教科書は、全く開いた形跡もなく、新しいままでした。もう、勉強はいい。ただ席に座っていてくれさえすれば。人のじゃまさえしなければいい。それだけ守ってくれ、と話していたんです」
A君は医師の診断も受け、朝晩薬を服用していたが、なかなか席に座っていることすらできなかったという。ふらふら歩き回る、ヒステリックに教師を大声で呼び続ける。すねると机に突っ伏していた。一度も教科書を開かず何か月かを過ごす。A君のそのつらさを思うと、胸がつまった。
◇A君の指導にとって基盤になるのは当然授業だ。とりわけ向山型算数指導が最も効果的な指導であると感じた。それはA君だけでなく、騒然とした教室で心静かに学習をすることができなかった、クラスの子どもたちのためにも重要なことであった。
「教科書を出しなさい」「三ページを開きなさい」「両手に持って読みなさい」
たった一つの指示を確実に全員の子にさせていった。A君は素直に指示に従った。変わりたがっていたのだ。勉強をしたがっていたのだ。必死で黒板を写すようになった。筆算では喜々として黒板に書くことができた。表情も明るくなった。たったの一週間の変化。
向山型算数指導は、算数のみならずすべての学習に通じる原則で貫かれている。そしてどの子にも温かい指導だ。
A君は四月、初めて算数のテストで八十点を取った。一か月前まで、五点、十点、十五点だったA君の変化だった。
保護者達は「奇跡だ」とうわさしたのである。
*
教室の荒れの中心だったA君を、担任はわずか一週間で立ち直らせたのである。それは算数の授業のおかげだった。
最も難しい「算数の指導」でTOSSの教師は、次々と奇跡のようなドラマを創り出している。
私たちは「学校の授業時間」だけで、このドラマを創っている。
休み時間まで授業をのばすことはない。
放課後の残り勉強もしない。
個別に特別指導することもない。
宿題は出さない。
「算数の授業時間を大切にして、授業時間だけで」、奇跡のドラマを創っている。
どういう授業かというと「教科書をリズムよくテンポよく教える授業」である。
ただし「教科書をきちんと教えられる教師は千人に一人もいない」。教師は、そういうことを学んでいないのである。
授業が「リズム」よく「テンポ」よく、できる教師は、一万人に一人もいない。
教師としての技量をみがかないと、「教科書をリズムよくテンポよく」教えられないし、奇跡のドラマも創れない。
算数のノートは、一人残らず「ウットリ」するほどきれいだ。一学期で、ノートを三冊ぐらい使っている。
ノートは鉛筆で書く。シャーペンは当然禁止だ。線を引く時は、ミニ定規を使う。「できない問題」は、正解をノートに写しておけばいい。
日本の教室で一番多く使われている『あかねこ計算スキル』は「できない子」にも「できる子」にも、超人気の練習帳だ。私が開発をした。
以上のような奇跡のドラマと反対に、子どもを駄目にする方法がある。
第一に、教科書をほとんど使わない授業だ。プリント学習などである。
クラスの大半の子が、算数嫌いになる。
第二に、ノートが美しくない指導だ。グチャグチャとつまって書いてある子は、伸びないのである。ウッカリミスも多い。
第三に、宿題が多い授業も駄目だ。
教科書の例題、練習問題などは、当然ながら「学校の授業中」に教えるべきなのだ。
ところが、例題をこねくりまわして、時間不足になり、練習問題を宿題に出している学校が、日本に半分くらいある。
そういう学校では、当然、学力が下がる。「教科書の問題が、すべてノートにやってあり、間違い直しがされている」ことが算数の授業の基本だ。
TOSSの活動は、この基本をきちんとやっている。
だから、平均点が九十点にもなる。
ところが「算数の問題解決学習」や「百マス計算」に熱心な学校、クラスは、この基本をやっていないのである。
保護者の方々が、学校、担任に対して「教科書を全部やってください。どうぞ、ノートにきちんと書いてあるようご指導ください」と発言していけば、日本の教育は良くなっていく。
ところが「宿題を出してください」とか「先生のプリントを出してください」とか、見当違いの声を出す保護者がいて、日本の教育を駄目にしていっているのである。
ちなみに、法律では、教師は教科書を使わなくてはならないと定められている。
クラスの中には、軽度の知的障害の子が六、七パーセントいる。三時間以上もテレビ、ゲームに熱中している子も、ゲーム脳の障害が出ていると言われている。ワーキングメモリという短期記憶が、働きにくくなっている。普通、六つも七つものことも覚えられるのに、一つのことだけに集中してしまうのだ。そうした子には「一つ一つを明確に示す授業」が必要なのである。
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- 明治図書