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- 家庭教育のポイント (第19回)
- 運動会、子どもをほめてください。練習をやりすぎて、算数、国語をつぶす学校に注意してください。
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中学受験・成功していったあの親子
難関中学11名全員合格 向山学級の子どもたちへのアドバイス
向山洋一
本誌編集長/日本教育技術学会会長/千葉大学非常勤講師
無料の世界最大の教育情報サイト、インターネットランド主宰
TOSS(会員1万名の教師の研究団体)代表
受験指導についての私の体験談です。
今から四十年以上昔のことです。父親がお世話になったお医者さんから「ぜひとも」ということで、家庭教師を頼まれました。
その子は、小学校五年生、慶應の幼稚舎(附属小学校)に行っていました。
実は、お姉さんもお兄さんも幼稚舎に行っていたのですが、中学校に進学できず、それぞれフランス、アメリカに留学していました。下の子だけは親元に置きたい、ぜひとも中学に無事に進級させてほしいとのことでした。
その時、私は教師になりたてでした。当時、教師が家庭教師をすることは(自分の学校の生徒でないなら)認められていました。
私は、やりたくなかったのですが、お世話になったお医者さんに熱心に頼まれたので、先方の親御さんと会いました。
私は、ひきうけるかわりにと、四つの条件をお願いしました。
教える時間は私にあわせること
教え方は、私にまかせること
成績が上がらなくても文句を言わないこと
謝礼は、日本で一番高いこと
この四つが認められ、私は五年生の男の子を教えることになりました。
素直な子でした。幼稚舎に行っているのですから、普通の小学校ではトップクラスの実力はあります。
が、トップばかりの子の中で「落第」しないような力をつけさせるわけです。
その子は、学年の下位にいて、けっこうあぶない節も見られました。
さて、私は週に一、二度教えることにしました。最初の頃は週に二回、後に一回になります。
一回につき二時間教えました。
百二十分の時間のうち、私が直接教えたのは「十分間」だけでした。
残りの時間、私は自分の本を読んでいました。
私は、最初の頃「勉強のシステム」(しくみ)を教えたのです。
「勉強のやり方」を教えたのです。
後は、「勉強のやり方」が、上手に進んでいるかどうかを確認していればよかったのです。その子は、どんどん自分でやっていったのです。
結果は、どうだったでしょうか。
無事に附属の中学に進学できました。
それだけでなく、難関の附属中で、学年トップの成績をとったのです。
その時、私は家庭教師を止めました。
もう、ついている必要がないからです。
噂を聞いた慶應の附属中学の方々から、二十軒ほど家庭教師の依頼をうけました。
私はすべて断りました。
給料の何倍もの収入も可能だったのですが、そのことより「自分の教室での教師の仕事」の方が、魅力的だったのです。
それから何年かして、田園調布地区にある小学校に転校しました。
五年生を担任したのです。
転入生が二人、後の代議士の河野太郎氏夫人の香織さんと、NHKで活躍している宮越君が、オーストラリア、大阪から入ってきました。
すてきな子どもたちで、すばらしい親たちでした。思い出がいっぱいです。
三十四人のクラスでしたが、中学受験する子が十一人いました。
希望する学校は、麻布、慶應、日本女子大、聖心などの難関校です。
その学校の過去の実績からいうと、こういう学校にクラスから一人か二人入るのが平均でした。
五年生の後半、私は受験する親子に、アドバイスをしました。
要点は、次の通りです。
一、学校の勉強を大切にすること。一見、塾の方がスピードが早く見えるけど、実力の基本は学校の教室で習ったことにあることを強調しました。
よく、受験直前に、学校を休んで集中的に勉強する子がいますが、多くは落ちるタイプなのです。
学校でのことを熱心にやる子が、合格していくことが多いのです。
二、むずかしいといわれる程度の学校であれば「算数教科書」を完全にやりとげれば合格できます。
ですから、算数の教科書の問題全部に「できた」「できない」印をつけて「全部できた」ことにするのが大切です。
教科書のすべての問題です。
ただし、実力は「やった日から遠ざかる」と落ちていきます。学校のテストで百点だったのに、一カ月もすると八十点ぐらいしかとれないのです。
そのために、「やった日の実力」を保持することが必要です。そのためには、前日まで、教科書、問題集をパラパラでもいいから見続けることが大切なのです。
三、落ちる子に共通することがあります。参考書、問題集を何冊も持っていて、どれも中途で終わっていることです。
こういう子は、落ちることが多いのです。私は、問題集は一冊にしてもらいました。
何冊も持っていた子は、残りをひもでしばって、ものおきに持っていってもらいました。
どの本でもいいのです。子どもがやりやすいのでいいのです。
塾で使っているのがあれば、それだけでよく、他にやる必要はありません。
四、決めた問題集は「すべてできる」までやってもらいました。
やった問題に印をつけるのです。
できた場合 /(1) できなかった場合 (1)
問題集全部をやると「できた印」「できなかった印」がすべての問題につきます。
ここまでに三カ月、半年とかかります。
苦労しますが、実力はたいしてついていません。
多くの親子は、ここを間違えるのです。「問題集を全部やったから実力はついた」と錯覚するのです。
しかし、実力はついていないのです。
ここまでは「自分のできる問題はできたし、できない問題はできなかった」ことを区別するだけなのです。
三カ月、半年かかって一度目が終了しました。すべての問題に、印がついています。
すぐに二度目に入ります。
その時「できた印」のある問題は、もうやらなくていいのです。
「できなかった印」だけをやります。
やり方は同じです。二度目の印をつけながら進みます。今度は、全部を終えるのに一、二カ月で終わります。
二度目にできた所は、実力になっています。
しかし、二度目もできないのがあります。
次に三度目に突入です。
できた問題は、とばします。
三度目は一カ月以内で終了します。
実力は、すごく向上しています。
三度ともできなかった問題、それこそ、試験に出る問題なのです。
四度目は、二、三週間で終えてしまいます。
そして五度目は、一、二週間で一冊分終了です。
一冊の問題集を完全にマスターするとはこういうことなのです。
最初が大変なのです。しかも実力は伸びない。しかし、二度目、三度目で、急速に実力が向上するのです。
さて、問題集をやる時、「分からないことをじっと考える」のは時間の無駄です。
答えを見ながら、覚えてしまうのです。
社会科、理科なら、同じ問題集を二冊買って、一冊目は答えを見ながら問題集に写してみて、二冊目から、ちゃんとやるのも合理的です。難関大学への合格者には、この方法をやる人は多くいます。
一冊を完全にやろうとすると、厚い問題集は避けた方がいいのです。塾で使っている問題集などは「偶数番号だけ」というようにします。すると半分でいいことになります。
それで十分です。
これが、受験勉強に対する向山の指導でした。
向山学級から、十一名の子が難関中学校を受験しました。結果はというと、全員合格しました。
子どもたちも、親たちもがんばったのです。
私のアドバイスを素直にうけ入れてくれました。
楽しく、生き生きとした学校生活をしながら、希望した中学校へ進学していきました。
私は、自分の娘にも同じことを教えました。運よく、東京の女子では最難関といわれる青山学院の附属中に入れました。
そこで、すばらしい友達といっぱい出会うことになります。
最後に、受験をするからには、本気ですべきだと思います。落ちれば、やはり傷つくからです。
実力より、少し高い所に挑戦するのが現実的です。あまりにも高い峰に、小学生のうちに挑戦させるのは、酷な面が多いと思います。
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- 明治図書