- はじめに
- 対話でつむぐ 愛と勇気の生徒指導 ホンネでぶつかり合うクラスづくりのすすめ
- だれがもつの? このクラス
- 「やり直しっ!」から始まった学級開き
- 席替えでズル
- 今ががんばり時
- 自分たちでクラスをまとめてみろっ!
- 私,いじめられてたんです…
- 私たちはダメなのに,どうして先生はイイの?
- 席に着きなさい! あいさつはしっかり!
- 嗚呼,避難訓練
- パキラの葉っぱ
- 私,盗ってません…
- どうする? 修学旅行の部屋割り
- 嗚呼,修学旅行
- たった1つのお願い
- お別れは軽くない〜卒業
- 対話でつむぐ 愛と勇気の生徒指導@ いかなるときも暴力に屈しない
- オレはバカにされた!
- 暴力を誇示し,自分の地位を確立しようとする生徒との対話
- オマエなんか,カスだっ!
- クラスの仲間に対して暴言を吐いた生徒との対話
- アイツは悪くなかった
- 重大な暴力事件を起こした生徒との対話
- 先生,超ムカつくんだけど!
- 教師に対して暴力を向けてきた生徒との対話
- 対話でつむぐ 愛と勇気の生徒指導A 不登校の生徒のココロと向き合う
- ボクはもうダメだ…
- 困難にぶち当たると,すぐにあきらめてしまう生徒との対話
- 頭が痛いから保健室で休みたい
- 不登校のパターンにはまりそうな生徒との対話
- 大人は信用できない!
- 厳しい家庭環境に置かれる生徒との対話
- 対話でつむぐ 愛と勇気の生徒指導B いじめはゼッタイ許さない
- ボク…,ホントはイヤなんだ
- 「いじめられ」の初期段階にある生徒との対話とクラスへの指導
- 私はウワサされている!
- 過去のいじめ体験の呪縛に苦しむ生徒との対話
- この雰囲気がイヤなんです!
- いじめられた生徒との対話といじめた生徒,傍観者への指導
- どうして私だけこんなことされるの…?
- いじめを通して,人権や差別と向き合う
はじめに
教師になって26年目を迎えました。
我ながらよくぞここまで続けてこられたと感慨深い思いです。
教師という仕事は責任が大変重く,簡単ではありません。特に,生意気盛りで情緒不安定な中学生を束ねるという仕事は,私にとって神業に近いものであり,若いころは“生計を立てていくのであれば,もっと別な私に向いている職業があるのではないか…”といつも思っていました。そのぐらい教師という仕事は私にとってストレスの大きいものであり,精神科の門を叩くほど悩み込んだときもありました。
けれど,あるとき罠からスルリと抜け出すように生徒たちと心が通じ合うようになりました。心がヒタヒタと触れ合い,温かいものがお互いの心を満たしていく感じです。そのときはじめて“教師の仕事はお金には代え難いものを与えてくれる”と実感しました。別の言葉で言うならば,ズバリ「幸福」でしょうか。
生徒たちのことも「仕事の対象」ではなく,大切な人生の時間を共有する「共同生活者」とみることができるようになりました。
私の受けもった生徒たちは,“教師ヅラした言葉じゃなくて,オマエの本心はどこにあるんだ?”と常に迫ってきました。それを“教師なんて生徒に嫌われてナンボ”とはぐらかすか,人としての自分の本当の気持ちを探り伝えていくか,2つの道があります。幸いにも(?)私の生徒たちは,はぐらかすことを許してくれませんでした。
私は,あるときからカウンセリングを学び始めました。迫ってくる生徒たちとどう向き合うべきかを学びたかったのです。
私が出会ったカウンセリングの理論と技術(交流分析とサイコドラマ)は「傾聴」のみならず,「対話」を重んじるものでした。生徒の話をしっかり聴く。そして,わき上がってくる人としてありのままの感情を率直に生徒に伝え,対話をしていく。これこそが,生徒たちが求めているものでした。
この本に収録されている物語の主人公・詩織先生は架空の人物ですが,私自身と多くの共通点があります。大いに笑い,泣き,怒り,不器用だけどその真っすぐな愛情が生徒たちを圧倒します。生身の人間だから,生徒からの心ない一言に傷つき,悩むこともあります。まさに「生徒まみれ」の日々を送っている先生です。だからこそ,生徒たちの目線に降りて対話することができるのです。
私は若いとき,生徒との関係で悩み,自分をダメ教師だと思っていました。だから今,同じように思い悩んでいる先生方に,この本を通してエールを送ることができたら幸せです。
ダメな自分を認められることも,教師にとって重要な資質です。これからも一緒にこのよき仕事に邁進しましょう。
空梅雨かと思わされる6月の夜に。
2013年6月 /堀川 真理
※本書に収録されている物語は,筆者の様々な経験を基につくられたものであり,登場する人物は実在の人物とは一切関係ありません。
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