- はじめに
- 第1章 「言葉による見方・考え方」を育てる国語授業づくり7の原則
- 原則1 主体的な学びのために
- 何を目指すのかをはっきりさせる
- 原則2 主体的な学びのために
- 学習過程・見通しを示す
- 原則3 主体的な学びのために
- 個で取り組む機会を設ける
- 原則4 対話的な学びのために
- 対話のはたらきを使い分ける
- 原則5 深い学びのために
- 推敲・精査する
- 原則6 深い学びのために
- 三つのポイントで振り返る
- 原則7 深い学びのために
- 活用のために呼びかけを繰り返す
- 第2章 7の原則に基づいた「言葉による見方・考え方」を育てる発問&指示
- 原則1 何を目指すのかをはっきりさせる
- 導入 「この勉強をしたら,どんないいことがあるか知ってる?」
- 導入 「分からないこと,いっぱい出して」
- 読解 「何が分かるようになりたいですか?」
- スピーチ・作文の導入 「相手にどう思ってほしいですか?」
- スピーチ・作文の導入 「先生のスピーチ,ちょっと聞いてみて」
- スピーチ・作文の導入 「学校生活の中で,問題に感じていることはありますか?」
- 原則2 学習過程・見通しを示す
- 思考の手掛かり 「何に目を付けたらできそう?」
- 思考の手掛かり 「どう考えたらできそう?」
- 思考の手掛かり 「言葉の意味から考えてみよう」
- 思考の手掛かり 「『繰り返し』に目を付けてみよう」
- 個人追究 「今日の見通しを使って,一つ考えをつくってみよう」
- 個人追究 「考えたことを型に沿って書き入れていこう」
- 構造を捉える 「三つの設定を取り出そう」
- 「白いぼうし」 「共通していることを見付けて,松井さんの性格を読み取ろう」
- 「大造じいさんとガン」 「場面の様子や風景から人物の気持ちを見付けよう」
- 「わらぐつの中の神様」 「『大造じいさんとガン』と比べてみよう」
- 構造を捉える 「役割に沿ってはじめ・中・終わりを分けよう」
- 「どうぶつの赤ちゃん」 「目の付けどころを決めて強さ比べをしよう」
- 「すがたを変える大豆」 「説明されていることを目の付けどころに沿って分けよう」
- 「生き物は円柱形」 「具体とまとめを図に表そう」
- 音読 「音読の工夫を,ポイントに沿って理由を付けて考えよう」
- 俳句 「五感に沿って,イメージをふくらまそう」
- 詩 「繰り返し,たとえに目を付けて想像しよう」
- 作文 「流れに沿って,筋道立てて書こう」
- 作文 「意見文マップを使って説得力のある文章をつくろう」
- 作文 「オノマトペ,たとえを使って楽しい作文を書こう」
- 作文 「反論を予想して意見文を書こう」
- インタビュー 「5W1Hプラス3でインタビューをしよう」
- 原則3 個で取り組む機会を設ける
- すぐに友達と相談し始める子 「まず,自分で考えよう」
- 手が止まってしまう子 「例を示します。顔を上げよう」
- 手が止まってしまう子 「隣の友達と2分間相談しよう」
- 手が止まってしまう子 「目の付けどころを決めて考えをまとめよう」
- 考えるヒントが必要な子 「ここに書いてあることとこっちに書いてあることを比べてごらん」
- 主張となる考えができた子 「どこから,なぜそう考えたかも書こう」
- 早くできた子 「できた人は,先生のところに持ってきて見せて」
- 早くできた子 「この考え,黒板に書きましょう」
- 早くできた子 「隣の友達のお手伝いをしましょう」
- 音読 「どうしてもやりたい工夫を一つだけやってみよう」
- 原則4 対話のはたらきを使い分ける
- 対話の土台づくり 「何のために,どうやって,何について話し合うのかはっきりさせよう」
- 聞く 「自分の考えと比べて友達の考えを聞こう」
- 反応する 「共感,驚き,疑問を表そう」
- 関連させる 「つながる言葉を使って関わり合おう」
- 話し合い 「隣の人と言い合いっこをしよう」
- 話し合い 「ペアをどんどん変えてみよう」
- 話し合い 「同じ立場同士で話し合おう」
- 話し合い 「違う見方の人同士で話し合おう」
- 話し合い 「Aさんはどんな見方をしていると思う?」
- 話し合い 「見方を決めて意見を分類しよう」
- 話し合い 「Aさんの意見についてどう考える?」
- 交流 「目の付けどころに沿って,感想を原稿用紙の裏に書こう」
- 評価 「目の付けどころに沿って,チェックしよう」
- 原則5 推敲・精査する
- 考えの焦点化 「今日の学習課題と見通しは何だった?」
- 考えの強化 「根拠や理由を増やして自分の考えをまとめよう」
- 考えの強化 「友達の考えを参考にして自分の考えをつくろう」
- 考えの拡充 「友達と比べて,考えを新しくつくろう」
- 原則6 三つのポイントで振り返る
- 振り返り 「今日できるようになったこと,分かったことは何ですか?」
- 見方・考え方の定着 「どう考えたらできるようになりましたか,分かりましたか?」
- 知識・技能の育成 「分かったことを詳しく言ってください」
- 学びの協働 「誰のどんな言葉が参考になりましたか?」
- 原則7 活用のために呼びかけを繰り返す
- 主体的に学習に取り組む態度を育てる 「今日勉強した考え方,また使ってみたい?」
- 活用の意識づけ 「図書館で借りた本を読むときに,勉強した読み方を使ってみよう」
- 参考資料 平成29年版学習指導要領の指導事項と見方・考え方の関係(試案)
- おわりに
はじめに
国語の授業でこのように感じたことはありませんか。
「この物語の『命』を子どもたちにぜひ感じ取らせたい!」――子どもたちの読みが深まるように授業を主導した結果,子どもたちに感動体験をさせることができた。でも,この子たち,次に物語を読んでいくときに,自分の力で読み取っていくことができるのだろうか……。
「みんなで話し合って課題を解決することが大切!」――授業はとにかく話し合いをたくさん行って,話し合いで出た考えをまとめ,課題解決をすることができた。でも,この子たち,次に同様の課題に出会ったとき,一人で課題を解決することができるのだろうか……。
国語の授業でありがちなこととして,この授業では読み取りはできたけれど,この単元ではしっかりとした文章は書けたけれど,次に同様の課題に出会ったときにそれを解決する力が付いていないということが多くあります。つまり,多くの国語の授業では,追究する内容の獲得には目が向くものの,あるいは,追究する際の話し合いの盛り上がりには目が向くものの,追究方法獲得への関心は薄く,子どもの自力解決の力が弱いのです。
だからこそ,子どもに自力解決の力を付けるには,「課題解決するにはどう考えたらいいのか」を,子ども自身が「分かって」「使える」ことが必要になります。そのためには,対象のどんなところに目を付けるのか,どんな点から対象を見るのかという視点と,どう考えたら課題を解決できるのかという考え方を身に付ける授業を行うことが必要になるのです。
平成29年3月に告示された新しい学習指導要領でも,視点や考え方については「見方・考え方」(『どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのか』というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方)(学習指導要領解説国語p.4)として位置付けられています。また,「各教科等を学ぶ本質的な意義の中核」(同p.4),「児童生徒が学習や人生において『見方・考え方』を自在に働かせることができるようにすることにこそ,教師の専門性が発揮されることが求められる」(同p.4)とまで述べられ,「見方・考え方」を獲得する授業の重要性が示されています。また,各教科の目標の筆頭にも教科の特性に応じた「見方・考え方」が据えられています。
国語科の目標の筆頭にも同様に「言葉による見方・考え方」(「児童が学習の中で,対象と言葉,言葉と言葉との関係を,言葉の意味,働き,使い方等に着目して捉えたり問い直したりして,言葉への自覚を高めることであると考えられる」同p.154)が挙げられています(学習指導要領でどのような見方・考え方を示しているかは,解説編から言葉による見方・考え方に関連するものを取り出した本書巻末の付録「指導事項と見方・考え方の関係(試案)」を参照してください)。
さて,見方・考え方を設定したら,次に問題となるのは,どのようにしたらそれが身に付くかということです。見方・考え方を自在に働かせるには,見方・考え方を育てつつ働かせて身に付けていくことが必要になるからです。本書では,そのための授業展開への7つの原則を示しました。もちろん単元全体を通した設計や,個々の学級の子どもの実態からすればいろいろな展開があるでしょうが,これらの原則は「言葉による見方・考え方」を身に付けるためのベーシックなものとして考えていただければと思います。
さらに,それぞれの原則に応じて,実際に子どもたちに対する発問・指示を示しました。特に,「言葉による見方・考え方」の具体については,数多く示しました。授業のねらいに応じて,本書に示した発問・指示を選択し,指導・支援に当たっていただければと思います。
本書を,活動重視,獲得した内容重視だった国語の授業を,追究する内容を獲得することを目的に置き,そのための見方・考え方をしっかりと身に付けることができるための授業改善にお役立てください。
/小林 康宏
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