- はじめに
- Chapter1 授業と学習のユニバーサルデザインとは何か
- 1.子どもにアプローチするデザイン
- 2.7つの原則からみるユニバーサルデザイン
- 3.ユニバーサルデザインとカウンセリングマインド
- Chapter2 国語科授業&学習のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 授業と学習のユニバーサルデザイン
- (1)わかる楽しさからできる喜びに
- (2)楽しく学ぶ
- (3)繰り返して学ぶ
- (4)交流して学ぶ
- 2.ここがポイント! ノートのユニバーサルデザイン
- (1)マス目ノートを使おう
- (2)ワークシートを活用しよう
- 3.ここがポイント! 板書のユニバーサルデザイン
- (1)視覚的に挿絵を活用した板書デザイン
- (2)音読につなげる板書デザイン
- (3)連続性をもたせる板書デザイン
- (4)表を活用した板書デザイン
- 4.発展的な学習をしよう
- Chapter3 社会科授業&学習のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 授業と学習のユニバーサルデザイン
- (1)異なる意見こそ大事にしよう!
- (2)学習の流れはシンプルにー想定外は大歓迎!ー
- 2.ここがポイント! ノートのユニバーサルデザイン
- (1)学習問題と予想を考える
- (2)板書は写さなくてもいい
- (3)わかったことと学習を通して自分が考えたことをまとめる
- 3.ここがポイント! 板書のユニバーサルデザイン
- (1)「学習問題」,「予想」,「まとめ」は書く場所を決め,簡潔に書く
- (2)話し合いは,誰がどのような意見をもっているのか明らかにする
- 4.ここがポイント! 宿題のユニバーサルデザイン
- Chapter4 算数科授業&学習のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 授業と学習のユニバーサルデザイン
- (1)「ふきだし法」を活用しよう
- (2)「ふきだし法」とはどのような指導法か
- (3)支援を要する子の「ふきだし」に注目しよう
- (4)学習の見通しをもたせる「めあて」の設定デザイン
- 2.ここがポイント! ノートのユニバーサルデザイン
- (1)ノートは2種類でチャンネルを変える!
- (2)「ふきだしカード法」という柔軟デザイン
- 3.ここがポイント! 板書のユニバーサルデザイン
- (1)みんなで大きなノートを創りあげる
- (2)全員参加ツールとしてのネームプレート
- (3)全員が見通しをもつことの意味
- (4)ノートと板書は同じコンセプトで!
- (5)分割提示型「ふきだし法」というデザイン
- 4.ここがポイント! 宿題のユニバーサルデザイン
- (1)宿題観を変える!
- 5.教師の学びのデザイン
- Chapter5 理科授業&学習のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 授業と学習のユニバーサルデザイン
- (1)全員のやる気を引き出し,能動的参加を促す
- (2)問題解決への見通しをもたせる
- (3)多面的に解決させる場合にも,実験方法の見通しをもたせる
- (4)基礎・基本を丁寧に教えておく
- (5)グループ学習に適したグループ編成を取り入れる
- (6)個性を生かし学びを深めるてだてを取り入れる
- (7)協同での学びの機会を用意する
- (8)学びの多様性に対応する
- (9)発問と指示で子どもの思考を促す
- (10)見方や考え方の違いに気付かせる
- (11)学習した知識を生活と結び付ける
- (12)授業をできるだけシンプルに進める
- (13)「わからない」,「調べてみたい」,「ふしぎ」の三つを大切にする
- (14)教室レイアウトはシンプルにする
- 2.ここがポイント! ノートのユニバーサルデザイン
- 3.ここがポイント! 板書のユニバーサルデザイン
- Chapter6 生活科授業&学習のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 授業の事前準備
- (1)1年生は入学前の実態を知ることからスタートする
- (2)学校を取り巻く地域の環境を知る
- (3)単元構想には子どもの思いや願いをつぶやきでイメージする
- 2.ここがポイント! 学習活動
- (1)活動と時間の見通しを子どもと積み上げる
- (2)次につながる「なぜ?」,「どうして?」を引き出す工夫を
- 3.まとめに
- Chapter7 音楽科授業&学習のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 音楽の視覚化
- (1)音楽と言葉をつなげよう―歌唱―
- (2)手の動きを目で見よう―器楽―
- (3)聴こえるものを形にしよう―鑑賞―
- 2.ここがポイント! 創作活動
- (1)イメージをイメージのまま伝え合おう
- (2)「よくわからない」ことを楽しもう
- 3.遊びの中で生まれる音楽を大切に
- Chapter8 体育科授業&学習のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 単元学習のスタート
- (1)楽しみ方の特性で運動を取り上げる
- 2.ここがポイント! とび箱運動
- (1)小学校で扱う技(跳び越し方)とその系統をつかんでおく
- (2)指導例 4年 とび箱運動(8時間扱い)
- (3)とび箱運動・指導のポイント
- 3.ここがポイント! ボールゲーム(バスケットボール型)
- (1)子どもにあったルールにする
- (2)指導例 6年 バスケットボール(8時間扱い)
- 4.子どもと子どもの関係を強めて学習を進める
- Chapter9 外国語活動のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 授業前
- (1)外国語活動のねらいは熟知し,中学校英語科との接続を理解する
- (2)子どもの実態を知って学習内容,方法を決める
- (3)教室環境を整えて,学習に集中できるようにする
- 2.ここがポイント! 授業中
- (1)多様な活動を構成して,テンポよく展開する
- (2)視覚的な支援でわかりやすくする
- (3)新しい表現は五感を活用してインプットする
- (4)コミュニケーションを楽しむ指導に徹する
- (5)小物を使って,子どもの興味・関心・意欲を高める
- 3.ここがポイント! 授業後
- (1)評価は子どもの励みになる内容にする
- 4.ここがポイント! 大切な学級担任の役割
- (1)教室英語を使うところを子どもに見せる
- (2)授業をALT任せにしない
- Chapter10 総合的な学習の時間のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 事前把握
- (1)支援を必要とする子どもの特性を知る
- (2)単元構想には子どもの思いや願いをつぶやきでイメージする
- 2.ここがポイント! 学習活動(参考事例から)
- (1)予想通りにならなかったところから問題意識をもつ ―支援を必要とする子どもの思いや願いを受け止めて―
- (2)支援が必要な子どもの“つぶやき”を意味付け,価値付け,学級に返す
- (3)「個別の指導計画」を更新し,学級全体で探究的・協同的に学ぶ
- Chapter11 学級活動のユニバーサルデザイン
- 1.ここがポイント! 誰もが楽しめる学級活動
- (1)学級活動におけるアイスブレイク
- (2)友達との関わりを体験していく8つのアイスブレイクプログラム
- 2.まとめ
- おわりに
はじめに
中央教育審議会初等中等教育分科会の報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」(平成24年7月23日)の冒頭に,「共生社会の形成に向けて」と題された次のような記述があります。
「共生社会」とは,これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が,積極的に参加・貢献していくことができる社会である。それは,誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い,人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である。このような社会を目指すことは,我が国において最も積極的に取り組むべき重要な課題である。(p.5,下線引用者)
この共生社会の実現は,国家の目標であると同時に,「教育」の悲願であるとも言え,日々の地道な教育活動の中でその実現がたえまなく希求されていかなければならないと考えています。そしてその実現に向けた具体的な授業・学習デザインが,筆者達の考える「授業と学習のユニバーサルデザイン」であります。この言葉の定義については,Chapter1で詳述することにしますが,いみじくも,上述の下線を施した部分は,この書物の全体を貫くキーワードでもあります。
それは,@学級の全ての子どもが,A授業・学習に積極的,主体的に関わり,Bお互いを尊重し合う互恵的な学び(reciprocal learning)をめざす授業・学習デザインの探求であります。
様々な個性があるからこそ,そこに繰り広げられる豊かな学び,真の学びがあります。誤解を恐れずに言えば,このことは,学力低下問題で注目された,「習熟度別指導」やトラッキング(tracking(注))のある意味で対極にある考え方であると考えています。
もちろん,インクルーシブ教育システムの構築には,多様で柔軟な学びの場の整備が必要であり,多様な子どものニーズに即応した教育機会の提供とその組み合わせの保証であることは言うまでもありません。本書では,そのことをも十二分にふまえた上で,まず子ども達の学習の基本となる学級での授業場面をどのように改善していくことが必要かについて考究しました。
様々な個性をもった子ども達が,ともに学ぶことの喜びを味わい,その意義を実感し, 全ての子どもの活動が生き生きと輝く「協同的学び(collaborative learning)」を紡いでいける姿を求めて,授業・学習デザイン,ノートデザイン,板書デザイン,学習材開発などの各項目について,新たな「授業と学習のユニバーサルデザイン」の提案を試みています。
9名の執筆者がそれぞれの専門性と実践経験をもとに,「実践知」の統合をめざして執筆にあたりました。
子ども一人一人の成長を願い日々たゆまぬ努力をされている全国の諸先生方に,少しでも新たな授業改善のためのヒントが提供できますことを心から願っています。
2014年8月 編集代表 /亀岡 正睦
(注)tracking =能力や進路の差によってコースを振り分ける教育。佐藤学著『習熟度別指導の何が問題か』(岩波ブックレット 2004)によると,欧米諸国では習熟度別指導やドリル学習は成果を上げられず,もはや時代遅れとなった教育であることを指摘している。
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- 明治図書
- 全教科が掲載されているので基本的な考え方を理解することができました。2015/12/1930代 教諭