- はじめに
- 第1章 生徒指導主事のスタート!
- 〜最初におさえたい実務の「考え方」〜
- 1 スタートの心構え
- 2 生徒指導主事は何をするのか
- 3 4月初旬までにすること
- 4 現状を振り返る
- 5 振り返るにはこうする
- 6 指導結果の確認と修正
- 7 どんな指導や助言をするか
- 8 情報収集のシステムをつくる
- 9 情報を共有する
- 10 情報の記録と保管
- 11 信頼される生徒指導主事になる
- コラム 褒める指導がいいのか,厳しく叱る指導がいいのか
- 第2章 生徒指導の基礎の基礎
- 〜生徒指導主事として身につけるべき「考え方」〜
- 12 なぜ指導が入らないのか
- 13 トラブルを恐れない
- 14 荒れた生徒ばかり追い回さない
- 15 本当の「校則指導」とは?
- 16 人には「基本的欲求」がある
- 17 生徒指導は「わけ」に取り組む
- 18 「わけ」は解決できない
- 19 欲求を満たす教育活動
- 20 「毅然とした指導」とは?
- 21 「壁」をつくる
- 22 カウンセリングは万能ではない
- 23 保護者と共同するコツ
- 24 「不公平感」を抱かせない
- 25 1人で抱え込まない体制
- 26 「事実調べ」の基本
- コラム 生徒の座席に鈍感な教師ではいけない
- 第3章 指導方針と目標をつくる
- 〜リーダーシップを発揮するための「考え方」〜
- 27 全体の情報を集めて分析する
- 28 目標は具体的に設定する
- 29 「一致した指導」と教師の個性
- 30 100%正しい方針はない
- 31 「外科的治療」と「内科的治療」
- 32 合意を形成する
- 33 「PDCA」はA→Pが問題
- 34 「根っこ」を見つける
- 35 指導のレベルには違いがある
- 36 問題行動へのおもしろ対応
- コラム 意外な事実!
- 第4章 問題行動の指導と対応
- 〜あらゆるケースに応用できる「考え方」〜
- 37 「いじめ」指導の「考え方」
- 38 「いじめ」指導のポイント
- 39 暴力など重大な問題行動の指導と対応
- 40 その他の問題行動の指導と対応
- 41 不登校の指導と対応
- 42 問題行動の指導と生徒指導主事の役割
- コラム 最後は「自立」!
- 第5章 学校内外との連携
- 〜チーム力を高めるための「考え方」〜
- 43 管理職との連携
- 44 担任との連携
- 45 学年主任,生徒指導係との連携
- 46 養護教諭,SC,SSWとの連携
- 47 PTA,地域との連携
- 48 警察や関係機関との連携
- コラム やってはいけない「叱り方」
- 第6章 ちょっとした仕事術でワンランクアップ!
- 〜生徒指導主事を賢くやり抜く〜
- 49 生徒の対応は最優先する
- 50 担当教科との両立のために
- 51 荒れた生徒の後ろにいる保護者を知る
- 52 教師に激しい思春期はあったか?
- 53 多様な視点から見る
- 54 私の1日の時間の使い方
- 55 書物からも学ぶ
- おわりに
はじめに
教師には最低2つの力がないと子どもを育てることはできません。
1つは「学習指導の力」です。もう1つは「生徒指導の力」です。「学習指導の力」というのは,教材研究や指導技術が土台ですが,これはやる気さえあればやれます。教材研究や指導技術は,先人の教師たちが残した成果を書物からも学ぶことができます。
ところが,「生徒指導の力」は書物ではなかなか養うことができません。
みなさんは,これまでに「生徒指導の理論と方法」「生徒指導の理論と実践」「生徒指導とカウンセリング」などという書名の本を読んだことがあるのではないでしょうか。
その結果,それはそれで役立っても,今の自分の悩みの解決にはほど遠かったというのが率直な感想ではなかったでしょうか。1軒の建物を造るのと似ていて,どんなに立派な設計図や建築理論があっても,実際に造るのは大工さんですから,大工としての腕を磨かなければいけません。教師はいわば大工さんのようなものです。
本書は既存の生徒指導の本とはおよそ違います。
例えば,「荒れた学校」には必ず「荒れた生徒」がいます。荒れた学校を良くするには,荒れた生徒を改心させることだと考えて,莫大な手間暇をかけます。しかし,そう簡単にはうまくいきません。むしろ,「荒れていない生徒」に手間暇をかけるほうが近道なのです。このような「考え方」こそが生徒指導の現場には必要であり,これが大工さんの「考え方」です。大工としての腕を磨くという意味は,このような「考え方」を身につけることです。
また,生徒指導では必ず生徒と対立する場面があります。このような時には誰もが迷います。嫌われて人間関係が壊れてもいいから叱るべきか,それとも人間関係が壊れないことを優先すべきか,そもそもこの対立は意味がないのではないか,などと迷ったことがあるでしょう。この判断も「考え方」がないとできません。
一方で生徒指導の「実践書」も多数あります。これも参考にはなりますが,「学校も生徒の様子も違うな」と感じたり,「真似してみたがうまくいかない」ということもあったはずです。「考え方」が伝わらない実践は,他人は応用できないという難点があります。
このようなことは私自身が中学校に勤めていた頃に感じていたことです。私は教師生活の多くを「荒れた学校」に勤め,担任32年,学年主任13年,生徒指導部に30年近く所属し,指導部長も兼任しながら50歳前後からは全国の「荒れた学校」と関わってきました。
その結果,理論を唱えるのではなく,ただ実践を並べるのでもなく,理論と実践を結ぶ生徒指導の「考え方」というものに着目してきました。この「考え方」を磨くことが生徒指導の力を磨くことになります。
本書はその「考え方」を中心に書きました。
2018年1月 /吉田 順
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