- まえがき
- 第1章 学級のルール指導は,学級の姿 やわらかくあたたかく徹底する
- 集団をつくるルールと指導 理論編
- 1 学級崩壊のメリット
- 2 ルールの確立は学級集団づくりの基盤
- 3 「学級崩壊」時代の教師の仕事の難しさ
- 4 ルールを守る体験の不足
- 5 学級に身に付けさせたいルール
- 6 ルール指導の実際
- 「集団をつくるルールと指導失敗しない定着のための心得」の使い方
- ※第2章の実践編は,下記の項目を中心にして,各執筆者が,それぞれの主張を展開しています。
- @学級集団づくりに必要なルール
- ▲学級集団をつくる上で必要なルールと,それがなぜ必要でどのように有効なのかをまとめました。
- A学級づくりを支えるルールづくりの具体的な取り組み
- ▲学級の根幹を支えるルールづくりの具体的な実践を,はじめて取り組む方にも追試できるよう,わかりやすく解説しました。
- ▲成功させるコツ,また失敗しそうなところと失敗してしまった際のリカバリーの方法についても,ポイントをまとめています。
- 第2章 集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得
- 集団をつくるルールと指導 実践編
- 1 「話の聞き方のルール」で安定したクラスづくり
- 1 最も大切な「話の聞き方のルール」
- (1) 学級づくりで一番大切なルールは,「話の聞き方のルール」
- (2) 「相手を見て,うなずいて聞く」
- 2 「話を聞く力」を育てるために教師がすべき四つのこと
- (1) 子どもが「聞く姿勢」になってから話を始める
- (2) 教師が無駄な話をしない
- (3) 子どもの発言を最後まで聞く
- (4) 話を聞く必然性をもたせる
- 3 「話を聞く力を育てる」具体的な方法
- (1) 話をする際の合図を決める
- (2) 発言は理由まででワンセット
- (3) 「話を聞かないと学習が成立しない」状況を意図的につくる
- 4 「役に立つ」と実感できるルール
- 2 ルールのフィットはアンダースタンド&エンジョイ・トゥギャザー!
- 〜ルール定着の三つのポイント!〜
- 1 履物をそろえることにより他者への貢献を感じ,ルールの定着を学んでいく
- (1) 1回1回指示をする
- (2) スリッパの置き場所に足型を書く
- (3) トイレには神様がいるよ
- (4) この活動をして感じたこと
- 3 みんながスター〜あたたかいつながりの中で,個性を引き出す学級づくり〜
- 1 目指すは「みんながスター」になれる教室
- 2 つながりの中で,個が輝く
- (1) 個をつなぐ〜つながることのよさを実感できる教室に〜
- (2) 個が輝く〜「みんなちがって,もっととんがっていい」〜
- 3 個をつなぐためのルールと手立て
- (1) よき聞き手を育てる
- (2) ペアの対話を鍛える
- (3) 伝え方の語尾を変える〜「私もやるから,あなたもやろう」〜
- 4 個が輝くためのルールと手立て
- (1) 学習プロジェクト
- (2) 「みんながスター」
- (3) 「ふわふわシャワータイム」
- 5 子どもが自らつながり合う最高の学級を目指して
- 4 やる気を引き出すルールづくり
- 1 ルール指導 理論編
- (1) ルールとは
- (2) マナーとは
- (3) ルールとマナーを分けて考える
- (4) ルールの大切さを子どもたちに伝える
- (5) ペナルティとは
- (6) スポーツを例に
- (7) ルールは簡単につくらない
- (8) ルールではなく,期待を告げる
- (9) ルールは本質的なものに絞る
- 2 ルール指導 実践編
- (1) コーチングアプローチによるルール決め
- (2) ルールは誰のためにある
- (3) 話し合い活動のルールを決める
- (4) ルールの決定方法
- (5) 倍の数,手を挙げる
- (6) ルールを決めた後
- (7) 班のルールを決める
- (8) ルールの六つのレベル
- 5 ルールを細かく決めずルールを決める!?
- 1 ルールが徹底できないのはなぜ…?
- 2 教師の熱い教育が恐育に
- (1) 子どもを育てることは教師のエゴ
- (2) 20年後,今ある職業の半分がなくなる!?
- (3) 寂しく,悔しかった小学校時代
- 3 子どもを伸ばすためのルールづくり
- (1) 克己心を伸ばすために
- (2) 利他愛を伸ばすために
- (3) 多様な個性を認め合う集団に
- (4) 成長の可視化
- 4 一国の主としての責任感をもつことの必要性
- 5 育てたい子ども像を決めて,ルールを決める!
- 6 あなたたちが大切〜思いが伝わるルール指導〜
- 1 ルール指導の大前提
- (1) 担任がルールをもつ
- (2) 教師が示すルールと相談して決めるルールを区別する
- (3) なぜルールがあるのかを考える
- 2 目指せルール定着!!
- (1) 失敗と,忘れられない先輩教師の言葉
- (2) 学校のきまりを守る
- (3) 聞き方の定着
- (4) 人間関係のルール
- (5) 叱ることもある,謝ることもある
- 7 安心感・所属感を育む集団づくり〜学校生活スタートライン〜
- 1 子どもたちの笑顔のために
- 2 低学年で安心感を育む(1年生の実践)
- (1) 忘れ物指導
- (2) 挨拶指導
- 3 学習環境 お道具箱の整理整頓
- (1) ルール指導の実際
- (2) 失敗しそうなところ,成功させるコツ
- 4 聴くことのルール
- (1) ルール指導の実際:読み聞かせ・本の紹介(朝の会)で
- (2) 失敗しそうなところ,成功させるコツ
- 8 有言実行! あの手,この手で腑に落とす
- 1 自他の存在を大事にするためにルールがある
- (1) 安心の上にある「みんなちがって,みんないい」
- (2) 自由はルールという枠の中でのみ成立可能
- (3) ルールを守ることは他者の存在を畏れ敬うこと
- 2 本気の思いをちゃんと伝える
- (1) 暴力は絶対にダメというルール
- (2) 人の話をちゃんと聞くというルール
- 9 子どもたちに当事者意識を
- 1 何のためにルールがあるのか
- (1) ルールの必要性を語る
- (2) ルールを守るといいことがあることを子どもが実感する
- (3) ルールづくりに子どもが参画する
- 2 学級に必要なルールをどのようにしてつくるか
- (1) 担任として大事にしたいルールを明確にする
- (2) まずは価値を語る
- (3) いざルールをつくる
- 3 ルールを定着させるためのひと工夫
- (1) 日常的に意識できるようにする
- (2) 禁止より目標達成型にする
- (3) 快を体感し,共に喜ぶ
- 10 「人生の宝物」を増やす〜ルールに縛られず,ルールを楽しむ〜
- 1 守ることができないルールはいらない
- (1) ルール無視が常習化
- (2) 守りたくなるルールへ
- 2 ルールを守ることで,人生の宝物が増える
- (1) 子どものやる気を活かすルール指導
- (2) 子ども発信のルールにより,自治的能力を高める
- あとがき
まえがき
人が集まるところにはルールが必要です。チームの最小単位は,2人です。だから,たとえ,学級に児童生徒数1人の極小規模校でも,40人程度のよく見られるサイズの学校でも,そこは人の集まりですから,何らかのルールが必要です。
ルールがあると窮屈だから,学級にルールはない方がいいと言われる方もいます。その主張には部分的に賛成しますが,大筋では賛成できません。ルールは基本的に私たちを縛るものではありません。むしろ逆です。一人一人が気持ちよく過ごすために必要なものなのです。
しかし,教師になる方々は,ルールを守ってきた方が多く,ルールの必要性をあまり感じていない方もいます。また,学級がスタートしたばかりの時は,多くの子どもたちが様子をうかがっていますから,みんな所謂「いい子」なわけです。しかし,子どもたちの中には,ルールがないと集団生活の中で不適切なふるまいをしてしまう子がいたり,時間の経過とともに,様子見の状態から脱して,羽目を外す子が出てきたりします。子どもたちの成長には,失敗やトラブルが必要であることは否定しませんが,それはあくまで,「ルールの範囲内」の話です。
学級生活は,スポーツの試合に似ています。激しいスポーツの代表格としてラグビーが挙げられますが,タックルなどの身体接触は認められていますが,殴り合いや蹴り合いは許されません。そこには厳格なルールがあります。激しいスポーツだからこそ厳しいルールがあります。激しいスポーツほど,厳しいルールによって守られていると言えます。これからは,アクティブ・ラーニングの時代です。子どもたちの能動性が強く求められる時代です。動きの活性化した学級ほど,ルールの確立が必要ですし,ルールを確立した学級だからこそ能動性が担保されるとも言えます。
こうした意味から,学級のルールの在り方は,学級の在り方を反映する学級づくりの基盤だと指摘できます。しかし,学級づくりにおける重要な要素にもかかわらず,円滑な集団生活にはどんなルールが必要で,それをどんなふうに定着させればいいかという,内容論と方法論が曖昧な現状があります。そこで,読者のみなさんの学級の円滑な生活づくりのために,学級のルールづくりとその定着のための指導法に特化した今回の書籍を企画しました。
小学校編,中学校編,合わせて10人ずつの学級づくりのスペシャリストにそれぞれの学級を構成するルールとその指導法を公開していただきました。筆者によってルールの内容やその指導法は,二十人二十色です。
ルールとは一般的に規則のことですから,それに違反した場合は,ペナルティがあります。また,それに似た言葉にマナーがあります。マナーというのは,それを守るとよりよいというもので基本的に違反してもペナルティがないものです。それぞれの実践には,一般的なルールとマナーが混在している場合があります。しかし,それは学校という言わば,教育の場という特殊な環境にあるからでしょう。学校のルールや規則を破ったからと言って,子どもたちにペナルティを課すことは状況的に難しい場合があります。
だからこそ,教師は苦労が絶えないわけです。「人の話を聞こう」という行動様式があって,それをルールとして定めて,それが守られなかった場合でも,実際のペナルティは,「注意される」「叱られる」くらいです。子どもたちの中にはそれが平気な子もいます。しかし,話の聞き方が定着しなかったら授業そのものが成り立ちません。そこで,教師は「あの手この手で」定着を目指して指導します。その手間たるや,交通ルールを守らせるなんてこととは比べものにならないくらいの時間をかけ工夫をしているのです。
小学校の教師のみなさんには,中学校編を,また,中学校の教師のみなさんには小学校編をお読みになることをお薦めします。そうすると,小学校,中学校でそれぞれ大事にしているルールがわかるからです。中学校に必要なルールを小学校で身に付ける,また,小学校で学んだことを理解した上で中学校で指導されることが普通になったならば,子どもたちの学校での居心地のよさをさらに高めることができるでしょう。
/赤坂 真二
コメント一覧へ