- 出版によせて
- 本書の構成と使い方
- 1章 音楽療法と感覚統合
- 1 音楽と感覚刺激
- 2 楽器と音楽療法
- 3 楽器と感覚統合
- 2章 感覚統合の考え方を活かした音楽療法の進め方
- 1 実践のつくり方
- 2 子どものアセスメント
- 音楽療法士のための感覚統合チェックリスト
- 感覚統合チェックリストと活動の対照表
- 3 アセスメント結果の理解
- 4 実践の組み立て
- 5 セッションの進め方
- 6 音の提供
- 7 声の意味
- 3章 子どもを伸ばし,挑戦を誘うユニークな楽器たち
- 1 感覚統合の発達と楽器
- 2 触覚刺激を提供しやすい楽器
- 3 振動刺激を提供しやすい楽器
- 4 視覚で楽しめる楽器
- 5 体の配置と筋肉調整の感覚刺激を生む楽器
- 6 体全体を使う楽器
- 7 力のコントロールを促す楽器
- 8 操作性を要する楽器
- 9 伴奏に適した楽器
- 10 口を使う楽器
- 11 心地よさを感じる楽器
- 12 操作の簡単な音階楽器
- 13 美しい音の音階楽器
- 4章 音楽を使った感覚統合あそび
- 活動の解説
- 1 感覚調整の問題を持つ子どもに対する音楽療法
- 活動1 カバサでごろごろ
- 活動2 スカーフひらひら
- 活動3 あめふりの歌
- 活動4 ボールがごろり
- 活動5 おしぼりごっこ
- 活動6 どんな音かな?
- 活動7 カエルの合唱
- 活動8 おうまはみんな
- 活動9 毛布ブランコ
- 2 感覚識別の問題を持つ子どもに対する音楽療法
- 活動10 音あてクイズ
- 活動11 まねっこリズム
- 活動12 大きな太鼓
- 活動13 トントン メトロノーム
- 3 姿勢や器用さの問題を持つ子どもに対する音楽療法
- 活動14 ハイハイフィッシング
- 活動15 小さな大工さん
- 活動16 あちこちおうち
- 活動17 木琴5音あそび
- 活動18 太鼓がなったら
- 活動19 感覚統合サーキット
- 4 認知能力に関連した活動
- 活動20 ハンマー色あそび
- 活動21 あいうえおの行進
- 5章 事例を通した音楽療法の実際
- 1 集中して活動に参加できるようになった子どもの例
- 2 音楽に興味のない子どもを伸ばす感覚統合アプローチ
- 3 グループの音楽活動がもたらした自己有能感への一歩
- 音楽療法士のつぶやき
- その1 「こんな楽器がほしいのに……」
- その2 「音楽療法に使える楽器とは?」
- その3 「オーシャンドラムはいいけれど……」
- その4 「手を動かしたら音が出た!」
- その5 「重度の障害をもった子どもたちが音楽を楽しめるように!」
- おわりに
出版によせて
音楽という活動は,年齢を問わず多くの人たちにとって,とても馴染み深いものです。しかし,音楽療法となるとまだまだ日本では馴染みの薄いアプローチの一つではないでしょうか。私の音楽療法に関する知識のほとんどは,アメリカのフェニックスにある神経発達研究所(CNS: Center for Neurodevelopmental Studies)で出会った,Sheryl Kelly女史との出会いから来ています。CNSは,アメリカの作業療法士である故Lorna J.King女史によって設立された施設で,私が在外研究員として滞在した1989年当時は感覚統合理論を発達障害がある児童,生徒の教育に取り込む実践の試みを精力的に行っていました。そのため多くの専門職(特別支援教育を担う教師や作業療法士,言語聴覚士等)に混じって音楽療法士が活躍しており,中でも彼女のセッションはとても魅力的なものの一つでした。どのような子どもでも,彼女のセッションに入ると生き生きと,楽しく,意欲的な姿を見せることに感動を覚えたのを今でも懐かしく思い出します。その後ご縁があって,彼女を日本に2回ほどお招きする機会がありましたが,その時にも日本各地で様々な子どもたちに出会っていただきました。そこでもすばらしい,感動的なセッションをいくつも見せていただきました。彼女からは,音楽療法の言葉を超えたユニバーサルな力や職種を超えたセラピストとしての普遍的な力を学ばせてもらったように思います。
彼女は,音楽療法の実践家として必要な基礎的な知識の一つとして,感覚統合理論は欠かせないということを常に訴えていらっしゃいます。アメリカにおいても,このような考えを持つ音楽療法士は少ないのではないかと思います。
その意味でも,日本において柿アさんがこの本を上梓してくださったことをとても嬉しく思います。彼女のアメリカや日本に戻られてからの学習と実践の経験が,この本にはとてもよく活かされていると思います。この本における私の役割は,初めて感覚統合理論に出会う読者,音楽を療育に活かそうとこの本を手に取ってくださる読者をイメージしながら,主として感覚統合理論の音楽活動への活かし方について,誤解のないよう表現を手直しすることでした。その意味で,本書の中に理解しにくい内容があるとすれば,その責は私にあります。忌憚のないご意見,ご指摘をいただければと思います。
なお,本書は実践の紹介に重点を置いていますので,音楽療法に関しても感覚統合理論に関しても,対象となる様々な子どもたちが抱える障害に関する基礎知識にはあまり触れていません。より質の高い音楽療法を実践するためには,これらの領域の学習も欠かせないことをご理解ください。
本書が,音楽の持つ魅力や力を見直す扉,感覚統合理論への興味を開く扉となることを願っています。
/土田 玲子
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- 明治図書
- おもしろい内容ではあったが、現場で活かせる知識かと言われると・・・・。2021/12/340代・男性
- 現場の事例がたくさん載っていてわかりやすかった2018/8/27まいまい