- まえがき
- 第一章 授業とは「何を」「どうすることか」考えよう
- 一 授業は勝負であり、勉強観を変えること
- 二 調べることは本当に面白い!
- 三 授業とは何か
- 1 発問・指示
- 2 板 書
- 3 資料活用
- 4 話し合い
- 5 話術、表情、パフォーマンスなどの技術
- 6 人間性
- 第二章 目標とする授業のイメージをしっかりもって努力しよう
- 一 「本物の授業」との出会い
- 1 初めての県外出張
- 2 「これが授業だ!」――本物の授業との出会い
- 3 ポストの授業から学んだこと
- 二 一人の先人を追い続ける
- 1 目標が生まれた
- 2 教育実習のやり直し
- 第三章 教材開発に必要な基礎技術を具体を通して体得しよう
- 一 逆思考の訓練をせよ――思考のパターン化を防ぐために
- 1 逆思考の面白さを知れ
- 2 習慣の恐しさを知れ
- 3 取材で「常識」をこわせ
- 二 常に複数のテーマを追究せよ――怠け者にならないために
- 1 いろいろなことに好奇心をもて
- 2 常にメモ用紙をもて
- 三 現地主義をつらぬけ――禁断の木の実を食べるために
- 1 現地主義者になれ
- 2 現地では何でも見よ
- 3 出張や旅行を取材のチャンスにせよ
- 四 本や新聞の読み方を工夫せよ――正確な情報をたくさん入手するために
- 1 手あたりしだいに本を読め
- 五 一人の子どもを思い浮かべよ―― 一人ひとりの子どもを伸ばすために
- 1 子どもの事業をさぐり続けよ
- 2 一人の子どもを熱中させるネタを考えよ
- 3 一人の子どもの動きを追え
- 六 見る目とセンスをみがけ―― 一つのものが多様に見える目をもつために
- 1 一枚の絵を継続的に追究せよ
- 2 農民の動きが見える目をみがけ
- 七 すべてのものを「師」にせよ――幅広い見方考え方を身につけるために
- 1 人にたずねることを恥じるな
- 2 独学をせよ
- 第四章 指導技術の向上に日夜努力しよう
- T 「発問」の技術をマスターするポイント
- 一 教師の中核的な技術
- 二 発問との出会い
- 1 第一の出会い
- 2 第二の出会い
- 三 発問をどう考えるか
- 四 発問の目的
- 五 子どもを動かす発問
- (1) 思考を焦点化する発問/(2) 思考を拡散する発問/(3) 思考を深化する発問
- 六 発問から「発問の定石化」へ
- U 板書の技術をマスターするポイント
- 一 黒板に「何を」書くのか
- 二 色チョークの使い方のポイント
- 三 指示棒の使い方のポイント
- 四 名札マグネットの使い方のポイント
- 五 カードの使い方
- 六 発問との関連づけのポイント
- 七 板書の消し方のポイント
- 第五章 楽しい学級づくりの技術を体得しよう
- 一 一年生の子どもと学級づくり
- 二 学級づくりと授業づくりの両輪づくりを
- 1 学級とは
- 2 みがき合い
- 三 長所をほめて「その気」にさせる
- 1 成長の芽を見つけ励ます
- 2 長所をほめて「その気にさせる」
- 四 一日三〇回、やさしく名前を呼ぶ
- 1 子どもと信頼関係をつくる
- 2 ほめてほめて方向を示す
- 3 いい授業・面白い授業で学級づくりを
- 第六章 学習意欲の高め方を常に工夫しよう
- 一 学習意欲は簡単には出ない
- 1 教科書に書いていてもわからない
- 2 スイカは野菜か果物か?
- 二 面白い教材で学習のたのしさを体験させる
- 三 多様な学習活動で学習のたのしさを味わわせる
- 四 学習意欲を喚起する教師の雰囲気
- 第七章 パフォーマンス・トレーニングをしよう
- 一 パフォーマンスは相手への思いやりだ!
- 1 パフォーマンスは相手への思いやり
- 2 「あいさつ」で子どもをつかむ
- 3 ユーモアあふれるパフォーマンス
- 二 自分に暗示をかけてある雰囲気を身につける
- 1 「三回入ると、もとにもどります!」
- 2 子どもにも自分にも暗示をかける
- 3 ある雰囲気を身につける
- 第八章 子どもを「見る目」を常にみがこう
- 一 子どもを見る「技術」の必要性
- 二 みんな「面白い子だ」と思ってみる
- 三 「子どもは多様な面があるのだ」と思ってみる
- 四 見る目を深化させるには知識が必要
- 五 「見る」ということ
- 第九章 常にユーモア精神をもち、明るく子どもと対応しよう
- 一 人生最大の財産?
- 二 一年生の子どもに脱帽
- 三 三種類の笑い
- 四 ユーモアのセンスを鍛える
- 1 面白い話をたくさんインプットする
- 2 インプットしたらすぐ話してみる
- 五 ユーモアは対応の技術だ
- 六 わたしのネアカ修業
- 第十章 教師は常に実力・人格・他人との対応を見られていることを考えて行動しよう
- 一 自分を見直してほしい
- 二 自分の実力を見つめ直せ
- 1 自分の実力を見つめよ
- 2 校名にふさわしい実力があるか
- 三 まわりのことにも目を配れ!
- 1 まわりが見えない教師
- 2 まわりが見えないのは性格か?
- 四 服装やことば遣い・マナーに気を配れ!
- 1 服装とことば遣い
- 2 敬語を知らない教師
- 第十一章 一八の学習技能を鍛える授業を常に考えよう
- 一 教材を「太陽」にする教材研究を――材料七分に腕三分
- 二 教える授業から追究する授業へ――「はてな?」をもたせて考え、調べる喜びをかきたてる
- 三 授業で育てたい学力――学習技能とその応用力
- 四 体得させたい一八の学習技能
- 1 学習技能とは何か
- 2 どのように学習技能を鍛えるか
- (1) 「はてな?」発見技能/(2) 調べる技能13/(3) 書く(メモ・記録)技能/(4) 考える技能(自分の考えをもつ)/(5) 話し合う技能(広める、深める)/(6) 表現技能
- 五 追究の鬼の誕生
- 六 指導案の書き方
- 第十二章 「プロ教師」をめざして授業改革に挑戦しよう
- 一 真のプロ教師の五条件
- 二 「伸びたい!」という強い意欲をもち努力をたのしむ
- 1 「伸びたい!」という強い意欲をもち続ける
- 2 自分らしい学び方を創り出す
- 三 新しい目あてをつくって修業する
- 1 社会科への興味関心
- 2 修業につぐ修業
- 3 自分らしい授業づくり
- 四 プロ教師は「教える内容のプロ」になろう!
- 1 ホームランよりヒット主義
- 2 わたしの提案三つ
- 有田和正主要著書一覧
まえがき
ようやく、「入門書」を書ける歳になった。なぜなら、入門書ほどむずかしい本はない、力がなければとても書けるものではないという考えが根底にあったからである。そのくせ、他人の「入門書」はよく買って読んだ。とてもよくわかる。このように誰にでもわかるものが入門書の特色である。そして、内容もがっちり入っているのが入門書だ。
授業力が低下し、学力低下がさけばれてかなりたつ。しかし、いっこうに「これだ!」という決め手がみつからないでいる。わたしは、授業をよくするしか方法はないと考えている。これまで長年ためこんできた「授業力アップ」の方法を「入門書として書くように」と、明治図書の江部満編集長から話があったとき、「いい歳になりましたから、書かせていただきます」と申し上げた。
これまでに書いて出版してきた一五〇冊以上の本のエキスを、わかりやすい文章で書くように、との注文も江部さんからあった。エキスをまとめるのもむずかしいし、やさしく書くのはもっとむずかしい。
そこで、エキスを十二章にまとめれば、どこから読んでもよいし、まとめるのもまとめやすいのではないか、と考えた。しかし、十二にまとめるのは考えていた以上にむずかしいことであった。プロットがなかなかできなかった。どうしても欲張って数が増えるのである。
「授業がうまくなる」というところに焦点をあてて、ようやくにして十二にしぼり込んだ。各章で使った本は章の終わりにまとめて「資料」としてあげた。元本が読みたくなったり、もっと詳しく読みたい方は、元本にあたってほしいというわたしの願いもある。かといって、本書を軽く書いたわけではない。
このことは、第一章から十二章まで読んでいただくと、よくおわかりいただけると思う。
「授業とは何をどうすることか」ということから書き始め、授業の腕をあげるには「目標をしっかりもつことの大切さ」などをはじめに述べた。それから、教材開発に必要な基礎技術や指導技術の向上法、楽しい学級づくりの技術など基礎的な授業技術の向上法を述べた。
学習の原点である「学習意欲を高めることのむずかしさ」を短く述べ、若い人の得意なパフォーマンス・トレーニングのしかたも解説した。又、最もむずかしいといわれる「子どもを見る技術」のみがき方についてもふれた。
わたしが常に心しているのは、「ユーモア精神を忘れないで子どもたちと対応できるように」ということで、これは全編を貫いているバックボーンでもある。今、教師は、タレント並みに他人から、特に子どもや保護者から「実力・人格・対応の技術」などをみられている。このことを教師はもっと意識すべきであると述べた。
わたしが近年主張を強めているのは「一八の学習技能」である。これは学習の道具である。辞典や地図帳を使わないで学習できるわけがない。それで、どのようにして習得したらよいか、わかりやすく述べた。かなり力を入れて書いた。最後の十二章は、「プロ教師をめざして授業改革に挑戦しよう」ということである。昔のような「職人芸の教師」がいなくなったといわれる。これから新しい「職人」をつくり出さねばならない。それはひとえに、読者の皆さんの心がけにかかっている。全力をあげて支援したいと思っている。本書を読んで元気を出してほしい。
先にも書いたように、本書は明治図書の江部満編集長の企画と指名によって書かせていただいたものである。伏してお礼を申し上げたい。ありがとうございました。いい時に、いい本を出していただいて――。
二〇〇五年六月 /有田 和正
@「授業」とは
著書や講座で何度も話されているものである。まずは、「授業とは、どのようなものなのか」という理解が不可欠である。授業で大切なことは@「これだけは何としても教えたい」というものを鮮明にもつことであり、Aそれを「子どもが学びたい・追究したい・調べたい」というものに「転化」させることであり、Bそのために、5つの「対応の技術」と「人間性」を磨くことである。まずはこのことを頭に入れて授業をつくってみることである。
A「学級」とは
有田先生は「『学級』というのは、@助け合いAみがき合いBけん制し合い、という3つのことが機能しているまとまり」であるという。このことはまさに「授業で学級をつくる」ということそのものである。学級づくりが単独であるわけではなく「学級づくりがあって授業が成立する」というものである。いい授業をしていく中で、学級ができていくのである。授業を通して人間関係を創っていく…このことは、私の学級経営にも結びついている。有田先生から学んだことを活かして、すばらしい学級をつくることができる。
B「教師のあり方」とは
教師の大切な学びに「読書」がある。私はこのことの大切さを有田先生から学んだ。有田先生の言う「面白い本の見つけ方」を追実践している。とりわけ「面白い話しをする人や文を書く人に、どんな本が面白かたずねる」「雑誌論文や本の、参考文献・引用文献に気をつけて見る」ことは、読書の幅を一気に広げることにつながっている。そして、その著書自身のあり方や考え方について詳しく学ぶことができる(私は「著者の脳みそを見てみる」と言っている)。そしてもう一つ、「地方へ行ったら、『地方出版』の本に気をつける」。ここから、現地・現場の人から知らない有益な情報を手に入れることができる。
「気に入った著者ならば、その人の書いたものを全部読むぐらいのファイトがほしい」…私にとってこれこそが、有田先生の著書である。
コメント一覧へ