- まえがき
- 第1章 保護者・雇用者の「本音」とは?
- 1 保護者の嘆き
- ―保護者の視点から―
- 2 「事業所が求める人材」とは?
- ―採用側(人事担当)・就労支援者の視点から―
- 3 マッチングのために出来ること
- COLUMN 情報不足
- 第2章 子どもの進路の仕組み ―雇用の仕組みと就労支援―
- 1 子どもの進路
- ―雇用の仕組みから―
- 2 就労継続支援
- ―よい事業所を探す手がかり―
- 3 就職出来ないとき
- ―卒業後もつながりを持ち続ける学校に―
- 4 手帳
- ―障害者手帳と受給者証―
- COLUMN 知られていない
- 第3章 義務教育で出来ること
- 1 本当にそれが必要ですか?
- 2 仲間が必要
- ―義務教育の中で多様な友人を―
- 3 どんな授業をしたらよいのか
- 4 特別支援の子どもが通常学級の子どもと学び,つながる意味
- 5 「みんなで乗り越えよう」が実現出来る社会
- COLUMN 何故,そのような教育がなされてしまうのか?
- 附章 特別支援担当教師からの視点
- ―「つながり」を親亡き後の人生を生き抜く力として―
- 読書ガイド ―あとがきにかえて―
まえがき
本書は特別な支援を必要とするお子さんを指導する義務教育段階の教師に向けた本です。同時に,それを通して保護者の方につながることを願っています。
まず,私(西川)は一般的な意味での特別支援教育の専門家ではありません。私は高校の物理教師として教師人生をはじめました。教材や発問を磨いてよい授業をしたいと思う,ごく普通の教師でした。しかし,どうやっても全ての子どもを分からせることは出来ませんでした。そして,数多くの子どもがこぼれ落ち,学校教育からドロップアウトすることを防ぐことは出来ませんでした。
高校教師に挫折し,縁あって大学の教師になりました。大学に異動してから,私が救えなかった子どもをどうやったら救えたかを追求しました。その結果として生まれたのが『学び合い』(二重カッコの学び合い)です。
『学び合い』という授業では,教師は「一人も見捨てるな」ということを一貫して子どもたちに求めます。子どもたちに充分な時間を与えると,彼らは頭を使って様々な問題(学習面及び人間関係面)を乗り越えます。結果として,子どもたち全員が教師の立場で物事を考え行動するようになります。そして誰一人見捨てられないクラスが生まれます。当然の帰結として,特別支援学級の子どもも,通常学級の子どもと一緒に学び,遊ぶようになります。
このような実践を続けるには,特別支援学級の教師や保護者の方の協力と理解が不可欠ですが,それがなかなか困難なのです。もちろん,その方々の「その子」を思う気持ちは変わりません。いや,思う気持ちははるかに強い。しかし,それ故に理解し合うことに困難を感じています。
本書は,子どもが本当に幸せになるために何が必要かを,特に就学中にスポットを当てて書いたものです。本書の内容を一言で言えば,「1年のスパンで物事を考えるのではなく,30年,40年,50年,いやそれ以上のスパンで物事を考えましょう」ということなのです。
途中,ビックリするようなことや,今まで取り組んでおられたことを否定するようなことを書くかもしれません。すみません。しかし,それは「その子」の幸せを願っていることを信じて付き合って下さい。3ヶ月かけて子どもが九九を覚えたが,夏休み明けには忘れてしまっていたことはありませんか? そして,もう一度,九九の学習を繰り返す。このループから逃れるには,長いスパンで考えることが必要なのです。最初にお願いです。読み終わったら保護者にご紹介下さい。若い保護者の場合,知らないことが多いと思います。そして知るべきことです。
本書は,学校で何を学ぶべきかを就職との関係で書いています。就職に関する詳細は『特別支援学級の子どものためのキャリア教育入門 実践編』(明治図書)をご覧下さい。
さあ,始めましょう。
/西川 純
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