- まえがき
- Chapter1 コミュニケーション力を支える10の力
- コミュニケーション力とは何か
- コミュニケーション力を支える10の力
- 1 思いやり力
- 2 自己肯定力
- 3 文脈力
- 4 要約力
- 5 傾聴力
- 6 質問力
- 7 即興力
- 8 称賛力
- 9 非言語力
- 10 語彙力
- Chapter2 コミュニケーション力を育てるための「聞き方・話し方」の指導アイデア
- コミュニケーション学習の年間指導計画
- 「聞き方」の指導
- 1 「傾聴」の指導
- 2 「ミラーリング」「ペーシング」の指導
- 3 「コメント」の指導
- 4 「情報整理」の指導
- 5 「事実と意見」の指導
- 6 「キーワード」の指導
- 7 「クリティカル・リスニング」の指導
- 8 「質問」の指導
- 9 「インタビュー」の指導
- 10 「メモの活用」の指導
- 「話し方」の指導
- 1 「出す声」の指導
- 2 「アイコンタクト」の指導
- 3 「笑顔」の指導
- 4 「間」「短文」「レトリック質問」の指導
- 5 「具体化」の指導
- 6 「要約」の指導
- 7 「構成」の指導
- 8 「ナンバリング」「ラベリング」の指導
- 9 「応答関係の活用」の指導
- 10 「ショウ&テル」の指導
- Chapter3 学年別コミュニケーション・トレーニング45
- 低学年
- 1 言葉あつめゲーム/新しい漢字を覚えよう (日常・帯時間)
- 2 あいさつきょうそう/あいさつパワーアップ週間 (日常・帯時間)
- 3 しつもんタイム (日常・帯時間)
- 4 ほめ言葉のシャワー (日常・帯時間)
- 5 3択日直クイズ (日常・帯時間)
- 6 校長先生のお話クイズ (日常・帯時間)
- 7 「イエス」「ノー」ゲーム (特設単元)
- 8 あじゃじゃおじゃじゃゲーム (特設単元)
- 9 聞き出そう!好きなもの (特設単元)
- 10 じゃんけんトーク (日常・帯時間)
- 11 3秒で答えよう (日常・帯時間)
- 12 同じくらい話そうインタビュー (特設単元)
- 13 ♪ぴったり言葉を言いましょう (日常・帯時間)
- 14 なりきりインタビュー (特設単元)
- 15 ミニディベート (特設単元)
- 中学年
- 16 なかよししつもんゲーム (特設単元)
- 17 別の言葉で伝言ゲーム (日常・帯時間)
- 18 マナー教室 (日常・帯時間)
- 19 タブレットを使って反省会 (日常・帯時間)
- 20 すごろくトーキング (特設単元)
- 21 1分間トーキング (日常・帯時間)
- 22 マジックフレーズで場面劇 (特設単元)
- 23 三角ロジックで説得 (特設単元)
- 24 家族にお願い (日常・帯時間)
- 25 インタビューで他己PR (日常・帯時間)
- 26 Googleフォームでアンケート (特設単元)
- 27 思いやり反論ゲーム (日常・帯時間)
- 28 ブレインストーミング (特設単元)
- 29 メモでスピーチ再現ゲーム (日常・帯時間)
- 30 反駁型ディベート (特設単元)
- 高学年
- 31 私のクラスのいいところ (学習指導)
- 32 引用しりとりゲーム (日常・帯時間)
- 33 チャップリントーク (日常・帯時間)
- 34 セリフ当てゲーム (日常・帯時間)
- 35 ホット・シーティング (学習指導)
- 36 アサーショントレーニング (特設単元)
- 37 マッピング・コミュニケーション (学習指導)
- 38 メタ・ディスカッション (学習指導)
- 39 ラウンドロビンで話し合い (学習指導)
- 40 ピラミッド・チャートで話し合い (学習指導)
- 41 クリティカル・シンキング (日常・帯時間)
- 42 1,2,3,4/特派員 (学習指導)
- 43 ジグソー学習 (学習指導)
- 44 子ども熟議 (学習指導)
- 45 「第2反駁型」学級ディベート (特設単元)
- あとがき
- 引用・参考文献
まえがき
皆さんは,「社会人基礎力」というものをご存じでしょうか。「職場や地域社会で活躍し続ける上で必要な基礎的な力」として経済産業省が2006年に提唱し,2017年に「人生100年時代の社会人基礎力」として新たに定義されています。そこには,3つの能力と12の能力要素が示されています。
前に踏み出す力…主体性,働きかけ力,実行力
考え抜く力…課題発見力,計画力,創造力
チームで働く力…発信力,傾聴力,柔軟性,情況把握力,規律性,ストレスコントロール力
文部科学省が示す「主体的・対話的で深い学び」と重なる部分も多いかと思います。そして,企業が学生に求める能力としては,長年「コミュニケーション力」がトップに来ています。学校教育の中で,コミュニケーション力を育てていくことが重要であることが分かります。
さらに,今後の社会の変化を考えると,チームで働く機会の増加,コミュニケーションツールの発達によるコミュニケーションの機会の変化,外国の人との交流の増加などから,さらにコミュニケーション力の重要性は増すように思われます。
しかし今回,本書を執筆するに際してコミュニケーション力の情報を集めましたが,教育関係の本は非常に少ないことに驚きました。学校教育の中で,いかにコミュニケーションの指導がなされてこなかったかを感じました。
これまで国語関係で,対話やスピーチの指導の本はありました。私は若い頃に,何回か見に行った元静岡市立安東小学校の築地久子先生や元藤枝市立高洲南小学校の鈴木恵子先生の授業に憧れ,そのような学級を目指して,子供たちが対話力を身につけられるように授業づくりを勉強しました。村松賢一氏,高橋俊三氏などの本や,ディベートの本も読みました。総合的な学習の時間も始まり,総合的学習を支え活かす国語科という視点での,堀裕嗣氏を中心とした研究集団ことのはの本も読みました。そして菊池省三氏と出会い,対話も含めたコミュニケーションの指導に目を向けるようになりました。対話を支える「話す」「聞く」の基礎技能,そして非言語の指導や心を育てる取り組み,対話力が育つ学級づくりなども意識するようになりました。
これまでの自分の「話す」「聞く」「話し合う」の指導がコミュニケーション力の向上になかなか結び付かなかった理由には,コミュニケーション力についての自分の理解が浅かったことがあります。
第1章では,コミュニケーション力とは何かを自分なりに明確にし,支える「10の力」としてまとめました。10の力について詳しく知ることで,コミュニケーション力を育てるヒントが見えてくるかと思います。
第2章では,コミュニケーション力を支える「聞き方・話し方」指導のアイデアを書きました。コミュニケーション力の基礎的技能である「話す」「聞く」指導のポイントと実際に使える指導アイデアを載せました。
第3章では,対話力を高めるためのコミュニケーション・トレーニングを紹介しました。コミュニケーション力をつけていくためには,子供たちが意欲的に取り組めるように,楽しくて繰り返し行えるような工夫が必要になります。ゲーム化したり,授業の中で友達と一緒に楽しく取り組んだりできるようなアイデアを考えました。また,ICTの活用や協同学習,思考ツールの活用も取り入れました。
第2章,第3章の中には,技術や能力を習得するトレーニングもあれば,身につけた技術や能力を活用するトレーニングもあります。ぜひこれらを計画的に行ってみてください。参考に,カリキュラムの作成例も載せています。習得した技術や能力を他教科や日常の生活とつなぐ工夫をすることで,確かなコミュニケーション力がつくことを願っています。
2021年1月 /橋本 慎也
本校では、来年度の校内研究に活用しようと思っています。