- はじめに
- 第1章 本当は大切だけど、誰も教えてくれない[授業方法]7のこと
- 1 よい授業方法は、自明のものではない
- 2 ゴール次第で、望ましい授業方法は変わってくる
- 3 授業のゴールには、構造がある
- 4 隔たりが大きいほど、新しい手立てが見えてくる
- 5 授業の上手い下手は、3つの要素で決まる
- 6 第四の要素「システム・形態」によって、授業に差がつく
- 7 「臨機応変に授業を変化させる力」で、授業のレベルが一段上がる
- 第2章 本当は大切だけど、誰も教えてくれない[できる・楽しい授業づくり]7のこと
- 8 「できる」授業が、すべての学びの出発点になる
- 9 「できる」に至るには、4つの段階がある
- 10 「楽しい授業」には、子どもの認識の飛躍がある
- 11 「できる・楽しい」授業の段階で、「学び方」を身につけさせる必要がある
- 12 「深く学ぶ」と「学び方を学ぶ」が、「主体的な学習」を促す
- 13 授業の各段階には、相互的な因果関係がある
- 14 教師にとってのカギは、学びの過程で行うべき「指導方略」
- 第3章 本当は大切だけど、誰も教えてくれない[認識の飛躍を促す深い学び]8のこと
- 15 よい授業は、認識の飛躍を促している
- 16 教師が自身の「論理・考え方・見方」を、自覚する必要がある
- 17 子どもが間違えそうな状況が、認識の飛躍を促す
- 18 図や式をはじめに見せるのは、授業力の低い教師
- 19 習得、活用、探究の過程を通して、認識の飛躍が起こる
- 20 初学者には、価値ある問いの発想は難しい
- 21 知らないものは、見えてこない
- 22「獲得主義」と「参加主義」は、両立できる
- 第4章 本当は大切だけど、誰も教えてくれない[主体的な学習]7のこと
- 23 学習の「主体性」には、3つの意味がある
- 24 予想や仮説を検証するサイクルが、主体性の高まりを促す
- 25 発問の優先順位は3番目
- 26 内容知と区別し、方法知としての「学び方」を学ばせる
- 27 単元の学習中に、内容知と方法知をメタ認知させる
- 28 問題解決の力を高めるポイントは、方法のメタ認知を促すこと
- 29 主体性を高めるもう1つのカギは、「環境づくり」
- 第5章 本当は大切だけど、誰も教えてくれない[協同学習]6のこと
- 30 「協同学習=グループ学習」ではない
- 31 意欲を高めるカギは、成功体験と教師の語り
- 32 協同学習を成立させるには、3つの条件がある
- 33 自由な活動ほど、即時のフィードバックが必要
- 34 「システム・形態」は、課題の内容や解決のさせ方に応じて選ぶ
- 35 討論に導くカギは、意見の食い違いを意図的に生み出すこと
- 第6章 本当は大切だけど、誰も教えてくれない[授業展開]6のこと
- 36 ゴールと実態の隔たりから、望ましい授業展開が見えてくる
- 37 望ましい授業展開は、「学習者の認知の仕方」でも決まる
- 38 「わかった」の先の授業展開が、教師の腕の見せ所
- 39 「わかっていると思い込んでいる世界」は、かなり広い
- 40 「大きな知識」と「個別の知識」を区別する必要がある
- 41 話し合いが、かえって問題を見え難くすることがある
- その他の引用・参考文献一覧
- おわりに
はじめに
「授業方法がよかったかどうか」
それは、いったい何によって決まるのでしょうか。
答えは簡単です。
授業のねらいである「ゴール」を達成したかどうかで決まります。
つまり、ゴールを達成できたらよい授業方法、達成できなければ悪い方法になるのです。
では、授業のねらいであるゴールには、どんなものがあるのでしょうか。
日本だけでなく、世界各国やOECDなどの国際機関で共通しているゴールがあります。
@生きて働く「知識」を習得させる。
A生きて働く「技能」を習得させる。
B「思考力・判断力」を高める。
C「よりよく生きる力・価値観」を涵養する。
授業は、主にこの4つの資質・能力を育てることをゴールとする営みです。
ひと言で言えば、「自立した人」を育てるためにこそ、授業はあるのです。
授業のゴールは、社会や時代によって変わることがあります。かつての学校では、「読み・書き・計算」に代表される「基礎的な知識・技能の習得」がゴールとなっていました。
それは、社会的要請として、「工場で能率よく働ける労働者を育てる」ことが学校に求められたからです。戦時中は、このゴールが「従順な兵士を育てる」ことにもなりました。
しかし、今のゴールはそれではいけません。
予測不可能な時代を生き抜ける資質・能力を育てたいのです。複雑で、答えのない問いにも対応できる資質・能力です。
つまり、社会や世界に目を向け、仲間と力を合わせながら、自分の意思で自由に生きていける「自立した人」を育てたいのです。それこそが、授業のゴールになります。
自立のためには、深い理解に到達させ、技能を使いこなせるようにしないとけません。また、思考力や科学的な考え方、問題解決の方法や協働して学習する方法、主体性や意欲なども高めていかなければなりません。つまり、授業というものを、「自立」をゴールとした、幅の広い「営み」として見るべきなのです。
さて、「授業方法」の理論は、時代と共に進化します。
例えば、かつての授業は、次のような考え方を基にして行われていました。
「学問の内容は、『事実』と『手続き的な知識・技能』から成り立っていて、その事実と手続きを、上手に伝達することが授業である」
最近になって、この考え方が、次のように変化しています。
「学習者はもともと知識や技能をもち、ある程度の理解をしている状態であり、新しい知識・技能を獲得させるには、学習者のもつ知識・技能を利用して教える必要がある」
「学習者は、仲間との協働によって問題を解決する中で、知識や技能、思考力・判断力、よりよく生きる力・価値観を高めていくものである」
その結果、例えば次のような「授業方法」が取り入れられるようになりました。
・発展的な課題に挑戦させ、解決の手助けを教師が行うことで、学習者の認識を飛躍させ、深い理解に到達させる。
・発展的な課題に、チームで解決させるようにし、仲間との相互作用、協働を通して、知識を批判的・多面的に振り返らせ、新しい認識を構築させる。
このように、時代と共に、授業方法の理論は進化します。それは、認知科学や学習心理学、発達心理学などの学問が進化しているからです。
これまでの優れた授業に学び、新しい学問的知見を取り入れ、実践を行う中で、よりよい授業方法をつくり出す。これは、教育現場にいる全員に課せられた共通の仕事と言えます。
本書は、先人の優れた授業に学びながらも、新しい学問的知見を加え、現場で磨き上げてきた「授業方法(=授業における教授方法)」を紹介していくものです。
※本書で示した研究成果の一部は、JSPS科研費 JP 20K03261の助成を受けたものです。
2021年12月 /大前 暁政
というのが衝撃的でした。ないものにしてしまうと、次の理解は難しいので、子どもが既に知っているものと、新しい知識と、うまく融合させて授業づくりをしたいと思いました。
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