次のように思ったことはないでしょうか。
「優れた実践を真似できるようになったけど、いざ一から自分で授業をつくろうとすると、授業のつくり方がわからない」
書籍等を基に優れた授業の真似をすることはできます。
しかし、ここではたと気がつきます。
「一から自分で授業をつくることができない」
例えば、発問のつくり方がわかりません。
展開の仕方がわかりません。
教材研究の仕方がわかりません。
子どもの学びを支援する方略がわかりません。
様々なことがわからないのです。
いえ、上のようなことがわからないのなら、まだ力のある先生です。
わからないことがわからない。
ほとんどの場合は、何がわからないのかさえわからない状態なのです。
つまり、授業のカテゴリーや授業に必要な要素がわかっていない状態です。これは、授業デザインの方法論を誰も教えてくれないからです。
授業とは、どういう要素で成り立っているのか。
授業を一からつくるとき、何から行えばよいのか。
よい授業とは、そもそも何なのか。
そういうことがわからないまま、多くの先生が、日々の授業を「自分の過去の経験(生徒だったころに受けた授業)」を頼りに行っているのです。
この状況を改善するためには、授業デザインに関して、網羅的にすべてまとめた書が必要です。
本書は、最高の授業を一からつくるための、授業デザインの方法論を網羅的にすべてまとめたものなのです。
本書がこれまでの類書と違うところは、まず次の2つを紹介したことです。
1 授業のつくり方に関する、誰も教えてくれないけれど、重要な知識
2 一から授業を自分でつくるときの、授業のつくり方
この2つは、「不易と流行」の「不易」に相当するものです。
時代に関係なく、授業づくりにおいて重要なことです。
1と2は、教師なら絶対に知っておかないといけません。
そのうえで、本書では、次のことも紹介しているのです。
3 新しい時代に必要とされる授業のつくり方
本書のもう1つの特長として、2030年を生き抜く力をはぐくむための授業のつくり方を考えていることがあげられます。変化の激しい時代にも対応できる力や態度をはぐくむための授業のつくり方をも紹介しているのです。
このように、「不易と流行」を踏まえて授業のつくり方を体系的にまとめているというところが、本書の大きな特徴です。
理由は簡単です。
本シリーズ3冊で繰り返し述べてきましたが、「重要な知識」ほど、教えるのが簡単ではないからです。
日常の中ですぐに教えられるような簡単な知識とはまったく異なり、「重要な知識」には、たくさんの知識が含まれており、それらを理解するには、ある程度の蓄積が必要なのです。
そのため、「重要な知識」について断片的に聞いたとしても、「よくわからない」で終わってしまいがちです。
「重要な知識」についてきちんと教えようとすると、例をあげながら、丁寧に説明する必要があり、今の忙しい学校現場では、そのような時間はなかなかありません。
本書は、こういった「重要な知識」について深く理解するためのものでもあります。
最高の授業を目指すためには、教師が最高の授業のつくり方を知っていないといけません。
本書のタイトルの「授業デザイン」とは、授業を一からどう構想していくのかという、本質的な授業のつくり方を意味しています。
本書では様々な授業事例をあげています。具体的な授業事例を参考にしながら、「重要な知識」を理解できるはずです。
小学校、中学校などの校種に関係なく、授業を行うすべての教師は、全員が「最高の授業のつくり方」を知っていないといけません。
「最高の授業のつくり方を知らないまま、教師を続けますか?」
本書は、すべての教師にこう問いかけるものとなっています。
知らなかったらと思うとゾッとします。
それほど大切な知見を集大成してくれています。
授業に携わるすべての人が一度は目に通さないといけないと思いました。