- まえがき
- 1章 「校内研究会」のマインドセット
- 「研修」の位置付けを考える
- 研究主題を「自分ごと」にしていく
- 研究活動を「手段」として考える
- 授業研を極力減らす
- 指導主事の先生を歓迎する
- チューニングの機能をもたらす
- 1年勝負のつもりで振り切る
- Column
- 2章 「授業研究会」のマインドセット
- 目的を明確にして依頼文を書く
- 役割分担に徹する
- 学習指導案の役割を履き違えない
- 子ども目線で考える学習指導案
- 先生方の当事者意識を高める
- 授業研のための練習を位置付ける
- 謝辞こそ、熱く語る
- Column
- 3章 「授業交流会」のマインドセット
- 授業交流会のメリット・デメリット
- 授業交流会の設定と計画
- 授業者の主体性を引き出す
- 参観者のフレームを外す
- 授業参観シートで整える
- 放課後に15分間の座談会を設ける
- 速報と研究通信で全職員を巻き込む
- Column
- 4章 「自主研修会」のマインドセット
- 自主研修会という選択肢
- 感情をコントロールする学び
- 研究部の輪を広げる
- 15分+15分の時間設定
- 先生方のリアルに寄り添う
- 学びの規模を広げる
- 研究主任が消える
- Column
- 5章 「研究主題」のマインドセット
- 研究主題のない学校を想像する
- 二足のわらじを成立させる
- 研究推進委員会はあってないようなもの
- 研究主題を育てていく
- 研究で明らかにすることは何か
- 根拠は私
- 教師が主語の研究主題へ
- Column
- 6章 「研究通信」のマインドセット
- 研究通信に対する思い
- Column
- あとがき
まえがき
校内研究会(校内研)には未来がある。希望もある。負担ではなくむしろ、働き方改革の中核を担う。そう感じています。初めて研究主任を任せていただいてから「たった4年」ですが、そう思えます。
できるなら、もう少し研究主任を続けてみたい。そう思うほどです。しかし、これまで経験してきた校内研は私にとってあまり楽しくなく、非常に苦しいものでした。
今考えると有り得ないのですが、初任校では船を漕ぎながら校内研に参加していました。指導案はネットから拾い、コピペで済ませていました。それでも、当日の授業で大きく踏み外すことはありませんでしたが。
アラサー時代は、ちょっとうまく授業ができるという理由で天狗になっていましたし、指導の先生に食ってかかるような態度があったかもしれません。
校内研の時間がわくわくするものではなかったのです。もちろん、私自身の「学びをキャッチする力」が足りなかったことは大前提と言えるでしょう。
しかし、アラフォーになるといろいろ考えるようになりました。アラサー時代に痛い目もたくさん見てきたからです。
学級がうまくいかない。授業が不発に終わる。同僚とギクシャクする。不満ばかりが募るなど、どこか空回りしている自分に出会ったのです。
そんな状況を打開するきっかけになったのが、あれほど苦しかった校内研でした。
私が初めて研究主任となったのは令和2年度です。今年で4年目になります。前任者が退職し、私が研究を引き継いだ形になりました。私は「学級経営」の方向に研究の舵を切ろうと管理職や前任者に打診し、踏み切ることに成功しました。それまでは「国語科」「算数科」のような教科に特化した研究を進めていた学校でした。
アラサーの私が「うまくいかなかった」背景に、学級経営の土台が共通理解できてない、授業観がずれている、研究活動が日常に溶け込んでいないなどの鬱憤があったと思います。職員同士でそうした感覚を噛み合わせていないために、職員室で悪口大会が開かれたり、授業が知識を詰め込むばかりのものになっていったりしました。「学級が落ち着かないための授業研当日キャンセル」に至った学級も見てきました。
研究のための研究、校内研のための校内研になっている。でも方向転換ができず、放課後の時間をただ消費するような働き方に誰も手を打てない。そんな状況に見えました。
言い方は悪いのですが、もっとコスパ良く明日の授業が変わり、子どもも教師も楽しい校内研はできないものかと考えていました。「やっと終わった……」ではなく、「明日も続けたい!」「もういっちょ!」と意欲が湧くような授業研ができないかと思います。「苦しい指導案」から「授業者の芯をつくる指導案」にならないものかと願います。「座って失礼します」とパワポをたたくような研修ではなく、「アイコンタクトのある」心の通った対話が職員同士でできたら最高じゃないかと夢見ています。
この裏側には、先生方をホストにしたいという研究主任としての願いがあります。
私がこれまで経験してきた学校では、研究主任がホスト、先生方がゲストでした。情報は研究主任がもっていて、先生方が受け取るという構図です。指導案に対して指導を入れるという状況もまた先生方がホストではありません。
研究主任がホストを降りるという感覚をもち、同時に、先生方にゲスト感覚を捨ててもらう営みの先に、校内研の未来や希望を見出しているのです。
実際に研究主任を務める中で、校内研に大きな可能性が秘められていると感じました。研究主任の仕事次第で職員集団の意識改革が可能だと思えたからです。打ち手の数だけで言えば、管理職よりも学校改革のチャンスが多いかもしれません。
本書では、そもそも何のために校内研を進めていくのかという原点に立ち返って考え、「研究活動の心構え」を私なりにまとめてみました。日常的な校内研や定期的な授業研について、実践してきた内容もお伝えします。また、自主研修会の実施や研究通信などの具体例も紹介します。
本書の執筆にあたり、初任校での校内研や、これまで行ってきた自分の授業研を思い返しました。十年以上前の指導案も引っ張り出し、先輩方の指導案から学び直しました。
すると、その当時親身になってアドバイスをくれた学年主任や、事細かく指導してくださった研究主任の先生、指導主事の先生の顔が浮かんできました。今更ですが「眠くて仕方がない」とだけ思っていた校内研に、たくさんの学びが詰まっていたことを知りました。
今年度(令和5年度)も校内の先生方に支えられ、学ばせていただいております。そして、管理職の大きなサポートも受け、修正・改善を繰り返しています。本当に恵まれた環境でお仕事をさせていただけていると感じます。感謝しかありません。
本書が、校内研をより充実させたいと願うすべての先生方にとって有意義な一冊になることを願い、まえがきとさせていただきます。
/古舘 良純
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