- はじめに
- 第1章 仕事をデザインするための考え方
- 01 先生の仕事をデザインする全体像
- 02 ビジョンを明らかにする
- 03 たくさんの道筋を描いてみる
- 04 継続に落とし込んで、実行する
- 05 時間と多様性は先生の味方
- Column01 最大化させることが先生の成長を生むのか?
- 第2章 学級の1日をデザインする
- 01 ビジョンを明らかにした朝の会と帰りの会
- 02 仕組みを生かして先生とのつながりを積み上げる
- 03 仕組みとつながりで仲を深めるペアづくり
- 04 読み聞かせでゆったりした空気も大切にする
- 05 流動的なメンバーで行う清掃指導・給食指導
- 06 ゴールを自分で設定して試行錯誤するプロジェクト活動
- 07 問いと継続で深まる子どもたちのリフレクション
- Column02 1%の改善可能なことに注力する
- 第3章 学級の1年をデザインする
- 01 「つくる」・「つながる」で学級開きをデザインする
- 02 ビジョンとビーイングで学級目標をデザインする
- 03 授業参観はストーリーでデザインする
- 04 親も満足する、「語り合える」懇談会をデザインする
- 05 対話が生まれる個人面談をデザインする
- 06 日常との架け橋を意識して学校行事をデザインする
- 07 校外学習・体験学習を子どもたちとデザインする
- 08 評価を日常に織り込み、成績作成をデザインする
- 09 学年末・卒業をデザインする
- Column03 これからの時代の先生の役割って
- 第4章 実際に「仕事」をデザインしてみよう
- 01 学級経営における「ハレ」と「ケ」を考える
- 02 ビジョンと、そこから逆算するプログラムデザイン
- 03 ビジョンから力をもらう
- 04 道筋を描くための問いを活用する
- 05 実行案を選ぶために3つの基準をもつ
- 06 実行へのプロセスに多くの人を巻き込む
- 07 日常(ケ)への取り組みをデザインする
- Column04 車を走らせながら考える
- 第5章 時間を生み出すタスクデザイン
- 01 タスクデザインとは何か?
- 02 インボックスの置き場をデザインする
- 03 優先順位の2軸でタスクデザインする
- 04 タスクデザインのサイズダウン
- 05 タスクのハードルを下げるコツ
- 06 クローズタスクリストという武器のデザイン
- 07 ログを使ってタスクデザインを改善する
- 08 タスクをルーティン化する
- Column05 タスクデザインを日常へ
- 巻末企画 1年目から超役立つあお先生のミニハック
- 01 思考するための時間を毎日キープする
- 02 教員手帳という強い味方
- 03 人生を大きく変えた18分集中法
- 04 カウンターを使って努力を数値化する
- 05 タスク管理のためのデジタルツール
- 06 マインドフルネスという武器
- 07 音声入力を活用する
- 08 教室に置きたい必須アイテム一覧
- おわりに
- 参考文献一覧
はじめに
若手の悩みの本質はどこにある?
「見通しがもてなくて目の前のことに精一杯です」
「いつも仕事に追われていて、とりあえず職場にいないと不安な日々です」
ボクのブログ「あお先生の教育らぼ」にもそんな相談や悩みが届くことがあります。
昨今の先生の忙しさは本当に度を超えています。心の病で休職する先生の割合は、ボクが教員になった頃と比べて圧倒的に増えました。いろんな要素が重なっての深刻な教員不足。子どもたちを育てるというやりがいに頼っているだけでは、どうにもならない状況になってきています。
ただ、冒頭の若い先生の悩みを聞いて、違和感をもったのも事実。だって、これは、ボクも味わってきた悩みや苦労だからです。
思い返せば教員の初任時代、土日は毎週学校にいました。やることが終わらないというよりは、いないと不安だったからが正しいです。朝の9時から15時ぐらいまで、ほとんど何もせずぼーっとしていた休日すらありました。何をやらなくちゃいけないかも、わからず過ごしたあの時間、仕事のガイドをしてくれる人はいませんでした。1日ぼーっとして、何かが進んだわけではなく、月曜日に疲れたまま、再び学校に向かう日々。なんとかしないといけないけど、何からやったらいいかわからない。そんな状態が何週間も続いていたんです。2日と2週間と2ヶ月で、先生の仕事を辞めたくなりました。
初任の頃は、精神状態がクラスの状態にも左右されていました。クラスがうまくいっている時には上機嫌。でも停滞してくると、心中に不安が渦巻き、気持ちが落ち込む日々。もう右往左往しながら踏ん張っていたわけです。
苦労話を聞かせたいわけではありません。15年以上経った今でも、この現状は大差ないのではないかとお伝えしたいのです。
自己紹介が遅れました。青山雄太と言います。15年間公立小学校の教員を務めた後、今は神奈川県葉山にあるオルタナティブスクール「ヒミツキチ森学園」でグループリーダー(担任)をしています。月間10万人が訪れる「あお先生の教育らぼ」を運営するブロガーであり、先生向け講座のファシリテーターや講師であり、いろんな活動をしています。
先生を始めて15年以上が経った今でも、この本を開いてくれているあなたの想像よりもずっと楽しく、毎日の仕事にワクワクしています。オルタナティブスクールの先生をしているからワクワクしているのではありません。教員として最後に働いた数年だって、心からワクワクしながら毎日を過ごしていたんです。
しかし、世の中には苦しんでいる先生がたくさんいることを知っています。モヤモヤを抱えてボクを訪ねてくる同期だって、一人や二人じゃありません。元同僚の相談に乗ることも多いです。ワクワクしながら仕事をしている先生は、もしかしたら少しずつ減っているのかもしれません。
では、毎日楽しそうに仕事をしている先生と、辛そうに仕事をしている先生を分けているのは一体何でしょうか。その先生の授業の巧さでしょうか、子どもに人気があるからでしょうか。それとも、経験がなせる技? どれもそうだとも言えそうですが、強い決め手にはなりません。たくさんの同僚を見てきたけれど、それ以外にも要素があることが見えてきました。
それは、「仕事の仕方が確立されているかどうか」です。自分の仕事の仕方を確立している先生は、ワクワクしている…。たくさんの先生を見てきてそう思うんです。もちろんボクが楽しくできているのも同じ理由です。
今一度若い先生の悩みに寄り添おうと思います。
「見通しをもてなくて目の前のことで精一杯」というのは、ビジョンをもてていないということです。ビジョンって言葉が難しいかもしれませんから、ここでは簡単に「あなたが本当に成し遂げたいこと」と表現します。その仕事のビジョンはなんだろう。これがないと、手当たり次第に問題解決に走ることになります。
そして「いつも仕事に追われて職場にいる」というのは、仕事の道筋を描けていないということ。道筋がわかっていないのに手当たり次第行動しちゃうから、結局「やったこと」で不安をかき消そうとしているんです。だからとりあえず職場にいる、職場にいたら、今日も頑張っている自分で誤魔化せるからです。ボクも初任の頃そうだったからわかります。
行動する前にしなくちゃいけないことがある
どうやら先生には、行動する前にしなくちゃいけないことがありそうです。全力疾走でもゴールの方向が違っていたら、タイムロスしてしまいますよね。動き出す前に少し考える時間を取ることで、そんなロスは防げそうです。ボクだってここに気づくまでに10年ぐらいかかったから、慌てなくても大丈夫です。
ボクが悩んで葛藤の中でやり続けたこと…。それを若い先生に知ってもらえば、この状況が少しでも変わるかもしれないと思いました。教わることがなかった仕事の仕方を、学校の中と外、両方で学んだ知識をもとに日々実践した経験から練り上げて、一つの形にしました。それを詳しくお伝えするのが本書です。
1 ビジョンを明確にする
2 たくさんの道筋を描く
3 継続的に実行する
まずビジョン=あなたが成し遂げたいことを明確にして、そのビジョンに向けてたくさんの道筋を描きます。最後は、道筋の中から選んだことを、継続できることに落とし込んで実行します。シンプルな3つのプロセスです。
ボクはこれを「先生の仕事をデザインする」と表現してみました。
どうやら、あなたのモヤモヤを解決するためには、仕事のデザインの仕方を学んでいく必要がありそうです。
この本の構成
ただ、いきなりビジョンは明らかにならないし、道筋を描くのだって経験がいること。だからこの本では、前半の第1章では、デザインするための考え方に触れようと思います。第2章、第3章では、学級経営を中心にしたデザインの結果をお見せします。先生の1日のこと、学級の1年のことを例に取り、ボクがデザインしてきたことを解説します。まずまねるって大事、学びはまねびからきているってよく言いますもんね。
そして後半の第4章から第5章では、学級経営を自分でデザインしていく方法を、そして仕事に追われなくなるためのタスクデザインについて書いていきます。デザインをタスク管理にも取り入れることで、自分の仕事の舵を取ることができるのです。もちろんこのデザインも発展途上、現段階で自分が考えていることです。デザインの本質を、若手のあなたにもわかりやすく、精一杯書き記したつもりです。
ちなみにボクが日々書いているブログ「あお先生の教育らぼ」にはそんなデザインの結果やプロセスが載っています。時事ネタじゃなくて、10年後、20年後も読まれるように設計してあるので、そちらもぜひ参考にしてほしいのです。
これからの先生たちが、どうかボクと同じ悩みをしないでほしい。そんなことは解決済みで、この本を読んでさらに前に進める状態になってほしい。
あなたには、ボクができなかった悩みをしてほしい。それが今の自分にできる、現役の先生に役立てることだと思っています。
この本が自分の仕事に悩む先生の道標になることを願って…。本書で一緒に学んでいきましょう。
/青山 雄太
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- 明治図書
- 著者が教職で積み上げてきた経験や学びをもとに、見通しや方針をしっかりさせた上での実践が大切であることを具体的な例とともに書いています。若い先生はもちろん、少し経験を積んでいる方が読むとさらに良いかもしれません。2024/1/2850代・小学校教員
- 筆者の実践に基づいた学級づくりの工夫が大変わかりやすく書かれており、大変参考になりました。2023/3/2740代・小学校教員
- 元教員です。教員1年目のときに出会いたかった本だなと思いました。授業や学級運営のハウツーではなく、自分のビジョンに立ち返って「自分の答え」を探っていける内容だと思います。若手の先生におすすめしたい本です。2023/1/24moni
- 仕事に取り組む上での考え方や工夫について学べた。2023/1/1030代・中学校教員