- 第1章 「自立活動」の指導のつくり方
- 1 「自立活動」のねらいと内容
- 2 発達障害のある幼児児童生徒に関わる「自立活動」の内容
- 3 「自立活動」における個別の指導計画の作成
- 第2章 「自立活動」の指導実践110
- 健康の保持
- [生活のリズムや生活習慣の形成]
- 1 触る・聞く・見る
- 2 身だしなみチェック
- 3 学習の準備・片付け,整理しよう
- 4 どこに何を置けばよいのかな?
- 5 見た目は何割?第一印象
- [障害の特性の理解と生活環境の調整]
- 6 自分とりせつ・お願いカード
- 7 自分研究所
- 8 作戦を立てよう
- [健康状態の維持・改善]
- 9 太鼓に合わせて動こう
- 10 バランスボールで体幹づくり
- 11 ドーンじゃんけん
- 12 ゴム紐バンブーダンス
- 心理的な安定
- [情緒の安定]
- 13 ふわふわ言葉・ちくちく言葉
- 14 ぼうずめくり
- 15 空き缶タワーゲーム
- 16 気持ち日記
- 17 教室オセロ
- [状況の理解と変化への対応]
- 18 言いたいことを言おう
- 19 こんなときどうする?要求と相談
- 20 関門突破ゲーム
- [障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲]
- 21 目指せ!スムーズな音読
- 22 おもしろ早口言葉
- 23 キーワードで文章題をイメージ
- 人間関係の形成
- [他者とのかかわりの基礎]
- 24 友達ビンゴ
- 25 上手に断ろう
- 26 かぶらナイス
- 27 ありがとう,ごめんね
- 28 すごろくトーク
- 29 お願いトランプ
- 30 好きなものな〜に?かくれんぼ
- 31 相談してスリーヒントをつくろう
- 32 UFOキャッチャーゲーム
- [他者の意図や感情の理解]
- 33 最後まで聞くぞトレーニング
- 34 「どうして?」「どんな?」雑談をしよう
- 35 どんな気持ち?
- 36 電池人間
- 37 約束を守って絵本を楽しもう
- [自己の理解と行動の調整]
- 38 ブロック伝達ゲーム
- 39 気持ちの温度計
- 40 どうしてイライラするの?
- 41 こんなときどうする?「イライラ」
- 42 アンガーマネジメント
- [集団への参加の基礎]
- 43 お楽しみ会をしよう!役割決めと準備
- 44 フルーツバスケット
- 45 遅れないように行こう
- 46 ふわふわ言葉で風船バレー
- 47 復活ドッジ
- 48 宝探しで言葉づくり
- 49 虹をつくろう
- 50 協力して準備・片付けをしよう
- 環境の把握
- [感覚や認知の特性についての理解と対応]
- 51 よくよく見よう
- 52 ふくわらい
- 53 フライングゲーム
- [感覚の補助及び代行手段の活用]
- 54 苦手な音や光から逃げよう
- 55 お助けグッズを使おう
- [感覚を総合的に活用した周囲の状況についての把握と状況に応じた行動]
- 56 人文字ゲーム
- 57 船長さんの命令ゲーム
- 58 矢印体操
- [認知や行動の手掛かりとなる概念の形成]
- 59 折り紙
- 60 人間コピー
- 61 なぞなぞ推理
- 62 スリーヒントクイズ
- 63 ピクチャーゲーム
- 64 地図で遊ぼう
- 65 新聞紙遊び
- 66 優先順位!集団生活バージョン
- 身体の動き
- [姿勢と運動・動作の基本的技能]
- 67 正しい姿勢で座ろう
- 68 バランスクッション
- 69 ヨガ
- 70 ぐにゃぐにゃ平均台
- 71 人間ボウリング
- [日常生活に必要な基本動作]
- 72 ボタン早押し
- 73 数字タッチ
- 74 メモ帳作り
- 75 お箸でつまんでお引越し
- [作業に必要な動作と円滑な遂行]
- 76 サーキット
- 77 お手玉キャッチボール
- 78 棒体操・棒キャッチ
- 79 紙飛行機飛ばし大会
- 80 くもの巣くぐり
- 81 だるまさんがひろったゲーム
- 82 バランスボール体操
- 83 はてなボックス
- 84 忍者修行
- コミュニケーション
- [コミュニケーションの基礎的能力]
- 85 「ちょっと失礼」たかおに
- 86 紙コップタワー
- 87 協力ジェスチャーゲーム
- [言語の受容と表出]
- 88 交代会話練習
- 89 絵カード合わせ
- 90 本当に言いたいことは……
- 91 15のトビラ
- 92 サイコロスピーチ
- 93 話し合おう!ケーキデコレーション
- 94 会話を続けよう
- 95 相談!ムシムシマンション
- [言語の形成と活用]
- 96 いつどこでだれが何をしたゲーム
- 97 お店屋さんごっこ
- 98 言葉集め
- 99 説明しりとり
- 100 感想を伝えよう
- [コミュニケーション手段の選択と活用]
- 101 ジェスチャーゲーム
- 102 説明上手になろう
- 103 どんなお話?
- 104 マインドマップで作文を書こう
- [状況に応じたコミュニケーション]
- 105 わたしはだれでしょう
- 106 今日は何をしよう?
- 107 アイデアブレーンストーミング
- 108 いい質問をしよう
- 109 4コマ漫画で状況読み取り
- 110 ナンバーゲーム
- 発達障害のある子への自立活動一覧表
まえがき
「自立活動の指導は,具体的に何をどのように指導すればよいですか」
「自立活動の指導計画をどのように立てたらよいか教えてください」
近年,特別支援学級や通級による指導に携わっている先生方からよく耳にする言葉である。
平成29年3月に告示された小学校学習指導要領,中学校学習指導要領,さらに同年4月に告示された特別支援学校小学部・中学部学習指導要領では,自立活動に係る様々な改訂が行われた。
小学校学習指導要領,中学校学習指導要領の総則には,特別支援学級の教育課程を編成する際に自立活動を取り入れることが,通級による指導の教育課程においては自立活動を参考にすることがそれぞれ示された。また,障害のある児童生徒一人一人に対するきめ細かな指導や支援を組織的・継続的かつ計画的に行うために個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成・活用が重要な役割を担うことも記された。さらには,各教科等の解説には,自立活動の内容との関連が見られる障害による困難さに対する指導上の工夫として様々な手立てが例示された。
特別支援学校小学部・中学部学習指導要領では,自立活動の内容が発達障害や重複障害の種類や状態等に応じた指導による一層の充実を図るために,「健康の保持」の項目として「障害の特性の理解と生活環境の調整に関すること」が追加され,6区分27項目になっている。また,自立活動の指導に当たっては「指導すべき課題」が明確になる個別の指導計画の作成プロセスも詳しく記されている。
このように,特別支援学校も含め,特別支援学級,通級指導教室,さらには発達障害のある児童生徒の在籍が増加している通常の学級において,障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導をする上で,自立活動の指導がこれまで以上に重視されてきている。
しかし,冒頭の言葉のように,自立活動の内容にある6区分27項目をどのように解釈して個別の目標にし,さらには具体的にどのような内容で指導をしていけばよいのか理解できていない教員が多いのも事実である。その背景には,特別支援教育に携わる若手教員の採用数の増加とともに,特別支援学級や通級指導教室において特別支援学校教諭免許状の取得率が50%に達していない現状がある。全国的に,自立活動の指導に自信をもって実践できている教員は決して多くないと推察される。
特別支援教育の歴史において,障害に伴う様々な困難さを改善・克服する指導の中核である自立活動の指導の優れた実践が,これまで多くの教育者によって積み上げられてきた。
とりわけ通級による指導に関しては,指導そのものが自立活動の指導中心であることから,試行錯誤が繰り返され,実践の積み上げがなされている。特に,ADHDや自閉症スペクトラム症の児童生徒に対してはソーシャルスキルトレーニングが,LDの児童生徒にはビジョントレーニングなどが,それぞれ有効と思われる指導として確立し,全国的に広まっている。ただし,一方で,それらの優れた実践以外については,各校あるいは個人の実践として留まっていることが多く,継承できていないことが問題となっている。自立活動に初めて触れる教員にとって,分かりやすく指導に生かせる資料の作成が急務の課題となっている。
また,これからの特別支援教育において,通常の学級のみならず通級による指導や特別支援学級に発達障害の診断を受けた児童生徒が増えていることからも,発達障害の児童生徒一人一人の学習上および生活上の困難さの改善・克服を図る自立活動の指導の専門性を有する教員を育成することも喫緊の課題である。
以上の課題を解決するためには,まずは改定された特別支援学校学習指導要領解説自立活動編を熟読することである。解説には,自立活動に関する実態把握の仕方から指導すべき課題の設定の仕方,個別の指導計画の作成や活用,配慮すべきことがこと細かく記され,初めて自立活動に触れる教員も容易に理解できる構成になっている。発達障害の特性による困難さを改善する事例も多くはないが記載されている。十分に読み込むことで自立活動の専門性が身に付く内容になっている。
ただし発達障害に係る自立活動の指導に関しては,体系的に整理されていない現状がある。その要因には,これまでの自立活動の解説には,個々の児童生徒の発達障害の特性や状態に応じてどのような指導をするのがよいのか具体例な記載が少なく,実践者に任されていることが挙げられる。また,個々の児童生徒の指導目標に応じて,必要な各区分に示された項目を選定し,相互に関連付けて具体的な指導内容を設定するとされていることから,指導すべき目標と内容が複数になってしまい,指導と評価の一体化が図りにくかった。
本書においては,このような課題を少しでも解消することを目指し,改定された自立活動の解説に新たに記されている発達障害に係る特性や手立てが記されている6区分22項目に絞り,一覧表に整理した。さらに,項目ごとに優れた指導事例を当てはめ紹介することにした。
今回紹介した指導事例に関しては,小学校の通級指導教室での実践であるため,対象となる障害種は発達障害である。指導事例の対象は小学校低学年から高学年の児童,指導形態は個別指導あるいは小集団指導,指導時間は10分から45分までとなっている。6区分22項目に当てはめた事例になっているが,実際の指導場面では,他の6区分27項目と関連性をもたせている。実践事例の中には,すでに似たような指導をしてきていると感じる事例も多いと思う。ぜひ,それらの実践が自立活動のどの区分のどの項目に合致した指導なのかを確認するとともに,項目ごとの指導実践を増やす契機にしていただければ幸いである。
編者 /喜多 好一
自立活動を行う際に利用しています。内容項目ごとに活動がわかれているので,子どもの実態に合わせて授業を行うことができる。
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