- はじめに
- Prologue 語彙知識の様々な側面
- 1 語彙を身に付けるとは? ―大学生の英作文から―
- 2 Nationの単語知識の様々な側面とは?
- 3 中学生の語彙使用の適切さを確認すると…
- 4 確かな語彙知識をもつためには?
- 5 受容語彙と発信語彙,どう扱ったらよい?
- 6 英語母語話者は,どのくらいの語彙をもっている?
- 7 第二言語習得に必要な語彙数は,どのくらい?
- Column 1 付随的学習と意図的学習
- Chapter1 書けるようにする!英単語指導の5つの極意
- 1 〔極意1〕読めるようにする
- 2 〔極意2〕書けることを目標にする
- 3 〔極意3〕指で練習させる
- 4 〔極意4〕英単語を繰り返し練習させる
- 5 〔極意5〕音のまとまりごとに練習させる
- Column 2 L2の語彙習得モデル
- Chapter2 読めるようにする!英単語指導法
- 1 ピクチャーカードでオーラルイントロダクション
- 2 フラッシュカードで発音練習 ―音と綴りの理解―
- 3 “音”と“意味”を行き来する ―音と意味の理解―
- 4 個別チェックを行う ―全体から個人へ,個人から全体へ―
- 5 音読の中で単語練習を兼ねる
- 6 新出単語を読ませる ―綴りと音の一致―
- 7 フラッシュカードの活用法
- 8 英単語リストの活用
- Column 3 完璧な読みを求めない ―点でなく,線で指導する―
- Chapter3 書けるようにする!英単語指導システム
- 1 Step1 「英単語ビンゴ」で,単語に慣れさせる
- 2 Step2 音のまとまりを意識させる
- 3 Step3 1日5単語ずつ練習させる
- 4 Step4 小テストを行う
- 5 Step5 25問テストを行う
- 6 Step6 100題テストを行う
- 7 Plus1 「英単語スキル」で,単語の覚え方を指導する
- 8 Plus2 1レッスン25個の英単語を抽出する
- 9 Plus3 25問テストに4つのコースを設ける
- 10 Plus4 「英単語ビンゴ」に学習性をもたせる
- Column 4 「英単語スキル」は,苦手な生徒のためにある
- Chapter4 慣れ親しませる!スキマ時間の英単語指導アイデア
- 1 英単語・黒板しりとり
- 2 英単語・時計しりとり
- 3 バラバラ文字からいくつ単語が作れるかな?
- 4 ヒントクイズで,複数の英単語から,ある物を当てよう!
- 5 Odd One Outクイズで理由も言わせよう!
- 6 ゴミ箱回避!英単語クイズ
- 7 ワードパズルで,英単語に繰り返し出会わせよう!
- 8 1つの単語からいくつの単語が作れるかな?
- 9 犬がネコに変わる?
- 10 ○○で始まる英単語を集めよう!
- 11 ○○で終わる英単語を集めよう!
- 12 ○○が入っている英単語を集めよう!
- 13 隠れている文字はな〜に?
- 14 下線を引いて,発音チェック!
- 15 神経衰弱で,発音に敏感になろう!
- 16 音節すごろく
- 17 対戦型英単語ビンゴ
- 18 形容詞の反意語で英単語を整理しよう!
- 19 反意語でGo Fishゲーム!
- 20 音節パーツをつなげて,英単語を完成させよう!
- 21 英単語をつなげると,どんな語になる?
- 22 イギリス英語とアメリカ英語@ 意味編
- 23 イギリス英語とアメリカ英語A 綴り編
- 24 和製英語に敏感になろう!
- 25 複数の意味をもつ多義語
- 26 このカタカナ語,何の省略なの?
- Column 5 様々な省略形
- Chapter5 「知識・技能」を評価する!英単語テストアイデア
- 1 語彙の意味を理解しているかを問う!受容語彙テスト
- 2 短い会話文で,適語挿入問題
- 2 正確に綴れるかを問う!発信語彙テスト
- 4 英単語の最初の文字を示す単語テスト
- 5 英単語の文字数を示す単語テスト
- 6 メモを基に,英単語を埋める単語テスト
- 7 定義文を用いた語彙テスト
- Column 6 語彙知識力判定テストにチャレンジ
- おわりに
- 参考文献
はじめに
私には,前々からずっと書きたいと思っていた本がありました。それが,この「英単語指導法」の本です。英単語は,英語を学習するために絶対に欠かせないものです。しかし,その大切な学習であるべき英単語は,授業中において,意味を確認し,発音を教え,リピートさせるところまでで,肝心な〈書ける〉ようになる学習は,家庭学習にしてしまっていることが実状なのではないでしょうか。そのような学習で,勉強を苦手とする生徒は,英単語が書けるようになるでしょうか。私には,どうしてもそう思えないのです。
中学校教員だった私は,英単語指導は「英単語が書けるようになるところまで」としていました。英単語の意味が分かる,英単語が読める,ではなく,書けるところまでを教師の仕事として捉えていました。よって,英単語を書いて綴りを覚えるという学習を授業中に行い,どのように指導したら,生徒は英単語が書けるようになるのかを日々研究していました。その研究の過程は,『中学英語50点以下の生徒に挑む』(明治図書)で紹介しました。当時,東京都の中学校教員の岡ア伸一氏(熊本大学大学院准教授)とともに温泉に浸かりながら,どうしたら英単語が書けるようになるかを話し合ったことを今でも覚えています。
私が行ってきた英単語指導は,音のまとまりごとに書いて練習するという方法です。1日5つずつ英単語を,音のまとまりごとに練習させます。音のまとまりごとに英単語を区切ることで,英語の苦手な生徒が,英単語が書けるようになってきました。しかし,感覚的には,そう思うものの,実際に効果があるかどうかは,分かりませんでした。そこで,私が50歳になったことを機に,通信制の大学院に入学し,研究テーマを「英単語が書けるようになる指導法」とし,実践してきたことの効果を確かめようとしました。
研究の結果,見事,その効果は実証されました。生徒を2グループに分け,1つのグループには,音のまとまりごとに練習させ,もう1つのグループには,「1行書いて練習しなさい」とだけ言って,プリントに練習させました。
これを,1単元分,4回に分け,合計27の英単語を扱った後,抜き打ちでテストしました。すると,まとまりごとに練習したグループが,ただ1行練習しなさいと言ったグループよりも,平均して約2点,高い結果が出たのです。もちろん,指導前に事前テストを行い,その事前テストと事後テストを統計的な分析(分散分析)した結果,有意な差が確認できました。
このことにより,「ただ1行書いて練習しなさい」よりも,「まとまりごとに練習させる」の方が,英単語が書けるようになるという効果が確かめられたのです。「まとまりごとに練習する!」というたったそれだけのことですが,効果があることが分かったのです。
英単語は英語学習に必要なものであると同時に,英単語が書けるようになるという自信が,その後の英語学習への意欲へとつながります。「たかが英単語,されど英単語」です。本書では,どのようにしたら,生徒が英単語を書けるようになるのか,活用する語彙力とは何かをお伝えできたらと思います。
まず,Nation(2013)による「語彙知識の様々な側面」を確認した後,以下の構成で,英単語指導について提案します。
Prologue 語彙知識の様々な側面
Chapter1 書けるようにする!英単語指導の5つの極意
Chapter2 読めるようにする!英単語指導法
Chapter3 書けるようにする!英単語指導システム
Chapter4 慣れ親しませる!スキマ時間の英単語指導アイデア
Chapter5 「知識・技能」を評価する!英単語テストアイデア
どうぞ,生徒のため,英単語を書けるようにさせ,英語学習に自信をもつ生徒を育てていきましょう。
2021年7月 岐阜大学教育学部 /瀧沢 広人
いろんなアプローチの方法が記載されています。
生徒の実態に合わせて実践してみようと思いました。