- はじめに
- 第1章 教師力を高める3つのポイント
- 教師力とは幸せにすることのできる力
- 教師力を高める3つの仕事ルール
- 自分を見直す
- 第2章 教師力を高める「仕事ルール」60
- 「教師の願い」ルール
- 01 「教師の願い」をもつ
- 02 子どもと教師で学級をつくる
- 03 「学級経営」その意味を捉える
- 04 学校教育目標に『願い』を重ねる
- 05 目標申告で『願い』を具体化する
- 06 子どもと教師の願いで学級目標をつくる
- 07 『願い』を教育活動に落とす
- 08 学級集団をつくる
- 「授業づくり」ルール
- 09 授業で子どもを4月と3月では違う姿にする
- 10 よい授業で学習規律を定着させる
- 11 学習指導要領はポイントをおさえて読む
- 12 毎日の授業を少しずつおいしくしていく
- 13 日々の授業で子どもの育ちを積み重ねる
- 14 授業研究会は日々の授業改善のために行う
- 15 学び方を教える
- 「生徒指導」ルール
- 16 子どもの信頼を勝ち取る
- 17 保護者の気持ちを想像してみる
- 18 「積極的生徒指導」と「消極的生徒指導」を理解する
- 19 「積極的生徒指導」を行う
- 20 「消極的生徒指導」も成長の機会と捉える
- 21 トラブルは起きてしまうもの,と対策する
- 22 保護者には力を借りたいことを具体的に伝える
- 「学校行事」ルール
- 23 学校行事で子どもを育てる
- 24 始業式で子どもと願いを共有する
- 25 入学式で人を祝うという学びをする
- 26 運動会で勝ち負けを超えた成長をする
- 27 学習発表会は成長発表会と位置付ける
- 28 校外学習は働く人の『願い』を知る場とする
- 29 修学旅行では日常の成果を発揮させる
- 30 終業式は「はじまり」につなげる
- 31 修了式・卒業式で未来に旅立たせる
- 「校務分掌」ルール
- 32 校務分掌は周囲の力を借りて進める
- 33 職員会議の提案では目的を大切にする
- 34 職員会議の提案前には根回しをする
- 35 校務分掌は「反省」を残すまでが仕事と心得る
- 「職員室」ルール
- 36 仕事は支え合うから成功すると心得る
- 37 あいさつは上向きの声でする
- 38 話す時は笑顔をつくる
- 39 相手の時間を大切にする
- 40 感謝の気持ちを声に出して伝える
- 41 当たり前を大切にして応援団を増やしていく
- 「教師の学び」ルール
- 42 ライフステージを見据える
- 43 小さな労力で大きな成果を生む
- 44 本を読む
- 45 幅広く人に会う
- 46 ながら勉強をする
- 47 実践をまとめる
- 「自身のマインド」ルール
- 48 うまくいかない時もあると達観してみる
- 49 自分を守る
- 50 決して「報連相」を怠らない
- 51 「年休」を計画的に取得する
- 52 「いつ辞めてもいい」と思えば気持ちも軽くなる
- 「仕事の楽しみ方」ルール
- 53 働くことを楽しむと決める
- 54 学校の先生を楽しむ
- 55 学級担任はやっぱり楽しい
- 56 「ねばならない」に縛られない
- 57 仕事以外も楽しむ
- 58 自分に合った「時短術」を見つける
- 59 「時短」で子どもを成長させる
- 60 子どもと一緒に「幸せ」を目指す
- おわりに
はじめに
「先生の仕事の仕方がわからない…」
この本を読んでいるあなたも,もしかしたらその1人かもしれません。
授業・学校行事・日常生活・トラブル指導…学校にはやらなければならないことがたくさんあります。私はスマートに仕事をこなせるタイプではありません。ですので,初任の頃は,どうやって仕事をしていいかわからず,毎日困っていました。そして,うまくいかないことがほとんどだったように感じます。
うまくいかないのだったら学べばいいと思うのですが,初任からの6年間,私はほとんど教育書を読んだことがありませんでした。もちろん,学習会に参加したことだってありません。悉皆研修にいやいや参加して学ぶ程度でした。
その頃の私は,「どうやったらうまくこなせるか」そんなことばかり考えて仕事をしていたように感じます。仕事をうまくこなすことばかり考えていたので,教育活動の意義なんて考えたことはなく,毎日毎日がその日暮らしでした。それでも少しは成長するものです。授業の見栄えは少しよくできるようになりました。子どもを少しうまく動かせるようになってきました。周りからほめられることもありました。うまくいかないことは子どもたちのせいにして見ないふりをして,(自分はすごい教師なんだ!)と勘違いし始めました。
そして6年目。自分の力に大いに勘違いをしていたあの年。担任した6年生の学級が崩れます。その子たちは4年生の頃に一度担任した子たちです。落ち着いた特性のある学年ということもあり,4年生の頃に素敵な関係を築けました。そんな子たちを卒業させたい思いで希望した6年生が崩れたのです。残念ながら立て直すことはできずに,その年は終わりました。
いよいよ自分の力のなさに目を向けなければならなくなりました。そこで教育書を読み漁りました。そこには色々な実践が紹介されていました。「やってみたい!」と思う実践を片っ端からやってみました。うまくいくこともあれば,そうでないこともありましたが,教育書に書かれた実践を繰り返すことで少しずつうまく仕事をこなせるようになってきました。
そんなある年,大変だと言われ続けた学年を担任することになりました。その学年は6年生で3学級です。同学年の先生は,ベテランの女性の先生と,私より3つ年上の男性の先生です。どちらの先生も教育書を読んだり学習会に参加したりするタイプではありませんが,本当に力のある先生です。学校を支えるその2人の先生と一緒にその学年を任されることになりました。
私は,教育書や学習会で学んだことをもとに学級経営をしました。しかし,その子たちにはなかなか通用せず,うまくいかない日々が続きました。一方,同学年の2人の先生方は難しいと言われていた学級をどんどん成長させていったのです。そんなお2人の指導を間近で見られたことが私の教員人生の大きな財産となっています。
そのお2人が常に心がけていたのは,
学校教育全体を通して子どもを育てる
ということでした。
例えば入学式の準備。
私は,入学式の準備で的確な指示を出してうまく子どもを動かせるように心がけていました。一方お2人の先生方は,1年生をお祝いする大切さを呼びかけ,最高学年としての自覚を育てようとしていました。
例えば日々の授業。
私は,教育書に書かれた実践を真似し,楽しい授業を心がけていました。一方お2人の先生方は,子どもの実態と向き合い,子どもに必要な力をつけるために授業をしたり,学力定着の取り組みをしたりしていました。
例えばトラブル指導。
私は,子どもたちの話を聞いて素早く解決できるように指導をしていました。一方お2人の先生方は,トラブルを成長のチャンスだと捉え,いけないことはビシッと叱り,次はどうしたらいいか子どもたちと考え,行動改善を目指していました。
例えば運動会。
私は,見栄えのいい応援を教えたり,ピシッとした姿で立ち振る舞うように声をかけたりしていました。一方お2人の先生方は,子どもを勝ち負けと向き合わせて努力したり協力したりする大切さを教えたり,最高学年として運動会に取り組むための姿勢を熱く語ったりしていました。
例えば修学旅行。
私は,無事に修学旅行が終わるように慎重に事を進めていました。一方お2人の先生方は,学校の日常生活と修学旅行での立ち振る舞い方を結びつけたり,修学旅行で起きた友達同士のトラブルを通してよりよい人間関係につなげたり,修学旅行を通して成長させることを意識していました。
お2人の先生方とはたくさん話をする機会がありました。その先生方は子どもたちの育てたい姿を楽しそうに語り,子どもたちの成長を心の底から喜んでいました。本当に楽しい時間でした。そしてその年は,そんなお2人のお力を借り,なんとか無事に6年生を卒業させることができました。
ただうまく仕事をこなすために学んだことを実践していた私と,学校教育全体を通して子どもを育てようとしたお2人。私とお2人で学校教育への向き合い方に大きな差がありました。この差が,学級の成長に大きな差を生んでいたのです。
若手の頃から学校の先生の仕事の仕方がわからなかった私でしたが,このお2人と同学年を組んだ経験と,これまでの学びを結びつけることで,学校教育全体を通して子どもを育てる大切さに気づきました。その気づきのおかげで,学校の先生の仕事の仕方をつかむことができました。仕事の仕方をつかむと,ただうまく仕事をこなそうとしていた時と比べ,はるかに子どもを成長させられるようになってきたと感じます。そして,ただうまくこなそうとしていた頃よりも仕事が楽しくなりました。
本書では,私のこれまでの学びを学校教育に結びつけ,仕事の向き合い方としてご紹介させていただいています。読者のみなさんのお役に立てるよう,私が大切にしていることを全てお話ししようと思い,書き上げました。
しばし,お付き合いください。
著者 /橋 朋彦
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