- はじめに
- 1章 論理的に思考する「考える国語」の授業づくり─12のポイント
- 1 論理的に思考する「考える国語」の授業づくり
- ─「考える国語」の授業づくりのポイント─
- 2 「三段階の読み」からの問題解決学習
- 3 「思考のズレ」を生む単元を見通した「課題」づくり
- 4 「思考のズレ」からの単元を見通した「問い」
- 5 子どもの「困った感」からの「思考のズレ」の重要性
- 6 教材分析からの教材研究と授業づくり
- 7 「読みの力をつける」ための授業づくり
- 8 「読みの力」を習得・活用する授業づくり1
- ─文学作品・詩における読みの「10の観点」─
- 9 「読みの力」を習得・活用する授業づくり2
- ─説明的文章における読みの「10の観点」─
- 10 「考える国語」で習得・活用する思考活動の技1
- ─「用語」の習得・活用─
- 11 「考える国語」で習得・活用する思考活動の技2
- ─「方法」の習得・活用─
- 12 「考える国語」で習得・活用する思考活動の技3
- ─「原理・原則」の習得・活用─
- 2章 説明文教材の「考える国語」の授業づくり
- 1年
- さとうと しお(東京書籍)
- くちばし(光村図書)
- うみの かくれんぼ(光村図書)
- じどう車くらべ(光村図書)
- 子どもを まもる どうぶつたち(東京書籍)
- どうぶつの 赤ちゃん(光村図書)
- 2年
- たんぽぽの ちえ(光村図書)
- サツマイモのそだて方(東京書籍)
- ビーバーの 大工事(東京書籍)
- 馬のおもちゃの作り方(光村図書)
- あなの やくわり(東京書籍)
- 3年
- 自然のかくし絵(東京書籍)
- 「ほけんだより」を読みくらべよう(東京書籍)
- パラリンピックが目指すもの(東京書籍)
- すがたをかえる大豆(光村図書)
- ありの行列(光村図書)
- 人をつつむ形――世界の家めぐり(東京書籍)
- 4年
- ヤドカリとイソギンチャク(東京書籍)
- 思いやりのデザイン(光村図書)
- 世界にほこる和紙(光村図書)
- くらしの中の和と洋(東京書籍)
- 数え方を生みだそう(東京書籍)
- 5年
- 動物たちが教えてくれる海の中のくらし(東京書籍)
- 言葉の意味が分かること(光村図書)
- 固有種が教えてくれること(光村図書)
- 和の文化を受けつぐ――和菓子をさぐる(東京書籍)
- 「弱いロボット」だからできること(東京書籍)
- 想像力のスイッチを入れよう(光村図書)
- 6年
- イースター島にはなぜ森林がないのか(東京書籍)
- 時計の時間と心の時間(光村図書)
- 町の幸福論――コミュニティデザインを考える(東京書籍)
- 『鳥獣戯画』を読む(光村図書)
- 大切な人と深くつながるために(光村図書)
- プロフェッショナルたち(東京書籍)
- 今,あなたに考えてほしいこと(光村図書)
- 君たちに伝えたいこと(東京書籍)
- メディアと人間社会(光村図書)
- インターネットの投稿を読み比べよう(東京書籍)
- 3章 文学教材の「考える国語」の授業づくり
- 1年
- おおきな かぶ(光村図書)
- やくそく(光村図書)
- くじらぐも(光村図書)
- おとうとねずみ チロ(東京書籍)
- たぬきの 糸車(光村図書)
- ずうっと,ずっと,大すきだよ(光村図書)
- 2年
- スイミー(光村図書)
- ミリーのすてきなぼうし(光村図書)
- ニャーゴ(東京書籍)
- お手紙(光村図書)
- かさこじぞう(東京書籍)
- スーホの白い馬(光村図書)
- ジオジオのかんむり(光村図書)
- 3年
- きつつきの商売(光村図書)
- まいごのかぎ(光村図書)
- サーカスのライオン(東京書籍)
- ちいちゃんのかげおくり(光村図書)
- ゆうすげ村の小さな旅館―ウサギのダイコン(東京書籍)
- モチモチの木(光村図書)
- クマの風船(東京書籍)
- 4年
- こわれた千の楽器(東京書籍)
- 走れ(東京書籍)
- ごんぎつね(光村図書)
- プラタナスの木(光村図書)
- 世界一美しいぼくの村(東京書籍)
- 初雪のふる日(光村図書)
- 世界でいちばんやかましい音(学校図書)
- 5年
- なまえつけてよ(光村図書)
- 世界でいちばんやかましい音(東京書籍)
- たずねびと(光村図書)
- 注文の多い料理店(東京書籍)
- 雪わたり(教育出版)
- 大造じいさんとガン(光村図書)
- 6年
- 帰り道(光村図書)
- 海のいのち(東京書籍)
- やまなし(光村図書)
- ヒロシマのうた(東京書籍)
- いわたくんちのおばあちゃん(東京書籍)
- 執筆者一覧
はじめに
「子どもたちに国語の力をつけたい。読解力をつけたい」と多くの教師は願っています。しかし,「国語の力とは?」「読解力とは?」という具体的な内容について考えることは少ないようです。さらには,どうすれば「国語の力」や「読解力」がつくのかという具体的な指導についての議論も曖昧な議論が多いように感じます。これでは,指導要領が目指す〔知識及び技能〕の習得と〔思考力,判断力,表現力等〕の育成は望めないのではないでしょうか。
私たちは,〔知識及び技能〕を習得し〔思考力,判断力,表現力等〕を養う論理的な思考活動をすることによって「国語の力」や「読解力」を育てていきたいと願って,論理的に思考する国語の授業づくりを考えてきました。それが「考える国語」です。
本書は,『教育科学 国語教育』の2020年4月号から2021年3月号の一年間,論理的に「考える国語」の授業づくりについて連載してきた内容をまとめたものです。
「考える国語」は,作品や文章を丸ごととらえた読みを基盤として,作品や文章を論理的に読めるようにしていくことを目指します。そして,論理的に読むために次のような力を〔知識及び技能〕ととらえ,これらの力の習得・活用を授業づくりの基盤としています。
◆様々な「用語」を習得し活用する力
◆読むこと・書くことにおける様々な「方法」を習得し活用する力
◆読むこと・書くことにおける様々な「原理・原則」を習得し活用する力
子どもたちが文章や作品を論理的に読んでいくためには,論理的に思考し判断し表現するための「用語」「方法」「原理・原則」という〔知識及び技能〕をもつことが必要です。なぜなら,この〔知識及び技能〕が働かなければ,その考えや表現は「なんとなくそう感じる,考える」といったイメージや感覚だけの内容になってしまい,「なるほど!」「どうして?」といった学びや疑問は生まれないし論理的な思考にはつながらないからです。
さらに,「考える国語」においては,子ども自身が「問い」を明確にもつことからスタートする「問題解決学習」を最も重視しています。そして,子ども自身がもつ「問い」を明確に解決していく過程で起こる対話をイメージや感覚だけの内容で終わらせず,「用語」「方法」「原理・原則(きまり)」を資質・能力とした論理的な思考で対話できるようにすることを大切にしています。これが「対話的な学び」であり,「主体的な学び」であると考えます。
「考える国語」の「用語」「方法」「原理・原則」は,子どもたちが主体的で対話的な学びをしていくための重要な〔知識及び技能〕です。この〔知識及び技能〕を教材を通して学習活動の中でいかに習得,活用させていくかが大切なのです。まさに「教材『で』教える」,論理的に思考する「考える国語」が,私たちが目指す授業像なのです。
このように考えると,「考える国語」の授業づくりにおいて重要になってくるのが,教材をどのように読めば,その教材の特徴や仕組みをとらえることができるかという「教材分析」です。本書では,読者の皆さんに「教材分析」のポイントが伝わるように,次の点を意識して構成しました。
@作品や文章を丸ごととらえ,全体から細部への読みを実現する
文学作品の読みにおいては,「なぜ,そのようなことが起こったのか」「どうして,そのように変わったのか」というような因果関係をとらえた読みが必要です。作品を丸ごととらえる読みの重要性はここにあります。
A作品や文章を大きく三つの部分に分けて読むことで,因果関係や文章の構成をつかみやすくする
文学作品においては,作品内容の因果関係を読むことは重要な課題です。この因果関係を読むために,作品全体を次のように大きく三つの場面に分けて,そのつながりを読み,変容の過程をとらえることができるようにします。
1「はじめ」の場面 2「なか」の場面 3「おわり」の場面
説明文においても同じように三つのまとまりに分けて,そのつながり,筆者の意図を読むことができるようにします。
B作品を簡潔に構造化する
作品や文章を読む学習の基本は,子ども全員が作品や文章の全体像の大体をとらえてその内容を簡単に把握できるようにすることです。そのために,構造図はできるだけ簡潔に表現し,因果関係や文章の構成がわかりやすく伝わるように心掛けました。
本書の「1 この教材の特性と構造図」では,上記の@ABを重点に教材を分析しました。「2 指導の流れ」は,この分析を基にして,教材の特徴や仕組みを取り出し,どのような「問い」を設定し,その「問い」をどのような「用語」「方法」「原理・原則」を活用して解決していくかというおおまかな「問題解決学習」の流れを示してきました。
論理的に「考える国語」の授業を通して,子どもたちから「そうだったのか!」「なるほど!」「わかった!」「ということは……」というような声が多く聞かれることを私たちは期待しています。
2021年7月 「考える国語」代表 明星大学教授 /白石 範孝
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